赤川次郎『三毛猫ホームズの幽霊クラブ』

ドイツでの「死体遭遇」旅行(?)は続く!
三毛猫ホームズ、警視庁捜査一課刑事の片山義太郎、妹の晴美、自称恋人で目黒署刑事の石津は、ドイツの古城をリフォームしたホテルに宿泊していた。
経営者が日本人妻であることもあり、日本人宿泊者が多い。
ところが、ここでまた、不可解な事件が連発する。
女性強姦事件、女児襲撃事件、そしもちろん、連続殺人事件も。
その背後には、なんと「幽霊クラブ」?
地位も金も手にした男たちが考え付いた究極の遊びとは?
この本、読んだのは、1988年と随分昔なのだが、サイトリニューアルにあたり、ついまた読み返してしまった。

赤川次郎『三毛猫ホームズの幽霊クラブ』
↓↓↓ 以下、ネタバレ注意 ↓↓↓
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未読の方はここから引き返してください。
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名も顔も知られた人間が、別人になりたいという要望は、よくわかる。
それどころか、名も顔も知られない凡人だって、他の人格になりすましたい気持ちはおおいにあるのだ。
だからこそ、ネットが普及するや、ブログだSNSだと大流行したのだろう。
ネット上であれば、現実生活とまったく別な人間になれる。
この心地よさ、この安心感。
多分、現実の自分が好きか嫌いかは、あまり関係ない。
現実生活が充実しているかしていないないかも、多少は関係があるかもしれないが、しかし実際には人々が思っているほどは、多分、関係ない。
誰だって、カラを脱ぎ捨てたくなる一瞬があるものだ。
その意味で、この本、今の時代に読むとまた別な面白さがあると思った。
今や、誰でも別人になれる時代。
そのためか、女性グループの正体は早い段階で気づいてしまった。
私がこの本を読んだのは、表紙裏のメモによれば、1988年11月8日。
さすがに内容はほとんど覚えていない、ましてトリックの詳細なんて忘却の彼方に飛んでしまっている。
だから、犯人を記憶していた訳ではないと思う。
なのに、裕福な男たちと、若い女性たちの関係は、男たちが名乗ってすぐ気づいてしまったんですよね。
赤川次郎氏の作品はどれも、ストーリー展開や、軽妙な文章が楽しく、犯人が分かっても面白く読めちゃうから、別に問題は無いのだけど。
誰でも簡単に別人になれる時代。
今や、そんな、ある意味で夢のような時代となってしまっている。
そうか、私が今やっていることは、ちょっと前までは、よほど恵まれた人でなければ決して体験できないことだったんだな、と、ちょっと感慨深い?
しかし、別人になるということは、本当は、このくらいリスクの高いことなのかもしれない。
人を殺したり殺されたりするくらいに。
気を付けなければ!
(1988年11月8日)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『三毛猫ホームズの幽霊クラブ』
- 著:赤川次郎(あかがわ じろう)
- 出版社:角川文庫
- 発行:昭和63年(1988年)
- NDC:913.6(日本文学)推理小説
- ISBN:4041497906
- 305ページ
- 登場ニャン物:ホームズ
- 登場動物: -

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