ベーカー『わがままな猫と暮らす方法』
猫とうまく暮らすコツ?。
スティーブン・ベーカー氏はハンガリーからアメリカへ移住し、広告・マーケッティングのコンサルタント会社を経営し、広告の分野ではさまざまな賞をうけた人である。
それだけに、キャッチコピー的なフレーズはとてもうまい。
この本も、ユーモラスな文章の中にネコやヒトの習性を鋭く突いていて、非常におかしい。
思わず吹き出してしまうばかりか、時には声を上げて笑いたくなる。
が、この本、下手な飼育書よりも、ある意味で余程優れているのではないだろうか?
・・・ある愛犬家との会話を思い出す。
初老の紳士で、ずっと犬と暮らしてきたそうだ。その時も、犬1頭と暮らしていると言っていた。
私が犬を保護したとき、でも私は猫派だし犬はできれば飼いたくないから里親募集するつもりだと話したら、猫なんかより犬の方が可愛いのにと、犬の魅力の演説がとまらなくなり、・・・・ま、それは良い。私だって猫の魅力について語れと言われたら止まらなくなるから。
私がカチンと来たのは、その紳士、頻繁に猫をけなしたことだ。女で猫派だと宣言している私に向かって、
「猫は何を考えているのかさっぱりわからない!女と同じ!その点犬や正直で良い!!」等々。
さすがに少々頭に来たので、試しにどのように「何を考えているのかわからない」のかと聞いてみたら。
「たとえば、腹が減っているとうるさく寄ってくるのに、腹が一杯だと呼んでも来ないじゃないですか!」
これには笑っちゃいましたね。
だって、猫の気持ち、わかっているじゃないですか。ご自分で的確に説明している!
お腹が空いているから寄ってくる、お腹がいっぱいだから寄ってこない。
これ以上の分析、必要?
紳士が猫嫌いなのは、要するに、猫が「何を考えているかわからない」からではなく、「自分の思い通りにならない」からなんですね。
世間を見回しても、支配したがる人間は、たいてい、猫が嫌いである。
歴史上の人物でいえば、アレキサンダー大王、ジュリアス・シーザー、ナポレオン、ムッソリーニ、等。いずれも大の猫嫌いとして有名。
それに対し、同じように支配的地位に登りつめた人物であっても、エイブラハム・リンカーンは、猫好きとして知られていた。
ご存知、個人尊重の民主主義を確立させ、奴隷を解放した大統領である。
自由を愛する芸術家や、誰にも出来なかった発想や発見をする科学者に、猫好きが多いのも、周知のとおり。
この本では、猫がいかに、人間の思い通りにはならず、猫独自の視線で考え、猫基準で行動しているかということが、繰り返し述べられている。
「そうそう、そんなところこそが猫のいいところ!かわいいところ!」
と、猫好きならきっと同意できるはず。
同意できないようであれば、猫を飼うべきではない!
猫の最大の存在意義は、飼い主に猫の存在を認めさせることである。それだけで十分ではないか!
page23
猫は飼い主を楽しませるためにいるのではない。飼い主こそ、猫を楽しませるべきなのだ。
page41
また、佐藤邦雄氏のイラストが、あまりに文章にピッタリで、笑ってしまう。
こういう、あまりにピッタリな絵と文章って、多くの場合、著者自身がどちらもかいていることが多いので、最初はこの本もそうかと勘違いしてしまったくらいだ。
原作者も、このイラストにはきっと、手放しで喜ばれたのではないでしょうか(あくまで私の想像ですけど)。
(2003.8.19)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『わがままな猫と暮らす方法』
- 著:スティーブン・ベーカー Stephen Baker
- イラスト:佐藤邦夫(さとう くにお)
- 訳:野中邦子(のなか くにこ)
- 出版社:飛鳥新社
- 発行:1985年
- NDC:645.6(家畜各論・犬、猫)
- ISBN:4870312190 9784870312197
- 142ページ
- カラー
- 原書:”How to live with a Neurotic Cat” c1985
- 登場ニャン物:多数
- 登場動物:-
目次(抜粋)
第1章 なぜ猫はわがままになるのか
第2章 わがままな猫を退屈させないために
第3章 わがままな猫のしつけ
第4章 わがままな猫の睡眠パターン
第5章 わがままな猫のお食事
第6章 わがままな猫の身づくろい
第7章 わがままな猫を犬と同居させるには
第8章 自宅でできる「わがままな猫の精神分析」
第9章 わがままな猫につける薬は?