ドクター・スース『キャット イン ザ ハット』

変な帽子をかぶった変な猫の変な話。
世界中で超ミリオンセラーとなった絵本。
子ども時代を英語圏で暮らした70歳以下の人なら、知らない人はいないと言ってよいでしょう。どの児童館にも、どの歯医者さんの待合室にも、そしてきわめて多くの家庭に、この絵本がありました。最初に発行されたのは1957年。もう60年以上も昔です。60年以上も変わらず愛されてきた絵本です。
絵本、ではありますし、絵も面白いのですが(可愛くはないけど)、この本の最大の魅力は「音」だと私は思います。全61ページ、絵本としては多めの文字数で、その全文が韻を踏んでいるんです。そのリズミカルな響きが、ロックのビートのようにずんずんと響いて、読むほどに引き込まれてしまう。文字を覚え始めた子供たちでさえも、夢中になって音読してしまいそうな、そんな魔力を持った韻文です。内容は支離滅裂で、いかにも子供向けなんですけれどね。大人でも、内容をよく知っていても、ついまた読んで最後まで止まらない、妙に心地よい音なんです。
あらすじは。
僕と妹のサリーは、二人だけでお留守番をしています。寒い寒い、雨の日。なんにもすることがなくて退屈。そんなとき、突然現れたのは、赤白の変な帽子をかぶった変な猫!猫は楽しく一緒にトリックして遊ぼうと、サーカスじみたことをしたり、へんな生き物を連れてきたりしますが、そのせいで家中がめちゃくちゃに!ひどくとっ散らかった部屋を見て子供たちは呆然自失、もうすぐお母さんも帰ってくるし、ああどうしよう!すると、また帽子をかぶった猫が、最後のトリックを。
なんかすっごく西洋的だな、と思いました。映画『ホーム・アローン』的雰囲気とでも言いましょうか。親がいない間に、侵入者が来て家中をひっくり返す、的な?
私が持っているのは英語版です。これほど有名な絵本ですから、もちろん和訳も出たのですが、残念ながら私は見ていません。この英語のリズムを日本語に訳すのはさぞかし大変だっただろうと思います。そんなことが可能なのかとさえ思います。原作の英語版の方は今でも英語圏ではバリバリの現役でいつでも買えますが、和訳の方は残念ながら、今では中古でしか手に入らないようです。
でも、日本の子供たちの英語力はどんどん上がっているように思います。幼い子たちが、原文の英語で、この絵本を”楽しんで”読むケースも、今後増えてくるんじゃないかと思います。時代は変わってもこの本はまだまだ無くなることはないと、私はそう信じています。
*実写映画にもなりました。
⇒『ハットしてキャット』(c)2010

ドクター・スース『キャット イン ザ ハット』

ドクター・スース『キャット イン ザ ハット』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『キャット イン ザ ハット』
ぼうしをかぶったへんなねこ
- 著:ドクター・スース Dr.Seuss
- 訳:伊藤 比呂美 (いとう ひろみ)
- 出版社:Random House Inc.(和訳:河出書房新社)
- 発行:1957年 1985年改(和訳:2001年)
- 初出:1957
- NDC:726(マンガ、絵本)
- ISBN:9780394800011(trade):9780394900018(lib.bdg.)
(和訳:4309904157;9784309904153) - 61ページ
- カラー
- 原書:”The Cat In The Hat” c1957
- 登場ニャン物:無名(帽子をかぶった猫)
- 登場動物:金魚