リリアン・J・ブラウン『猫はコインを貯める』

ブラウン『猫はコインを貯める』

 

不幸な生い立ちの青年は、力自慢の大会ではヒーローだった・・・。

ピカックス市に5年に一回やってくる宝石商。彼は女性たちの間で絶大な人気を誇っていた。もうおじいちゃんだったが、なにしろ彼はすべてがとてもフォーマルで「女性たちの手にキスをする」紳士だったからである。もちろん、宝石を買ったり、(こちらのほうがもっと重要だったが)良い価格で古い宝石類を買ってくれることも歓迎だった。

クィラランは、人気コラムニストで、地域一番の大資産家でもある。おかげでたいていの集まりには顔を利かせられた。が、この宝石商が開催するティーパーティーだけは、さすがの彼も無理だった。招待客は女性に限定されていたからだ。

とはいえ、好奇心は抑えきれない。彼はとんでもない策を弄して、パーティーを盗み見する。

でもまさか、それから間もなく、宝石商が殺されるなんて!

しかも、殺人現場は、新装オープンしたばかりの「マッキントッシュ・イン」。旧「ニューピカックス・ホテル」が爆発事件で大破したのち、改装され、名前もシェフも新しくなったのだ。あのレニー・インチポッドも雇用されて、いまやボーイ長だった。彼の幼馴染で力持ちのボズ・キャンベルも雇われていた。

ボズは、ハイランド大会の丸太投げ競技で、金メダルを獲得。地元新聞〈ムース郡なんとか〉(←正式名称)でも写真入りで大きく取り上げられた。

なのに。その直後に行方不明となる・・・

ところで、最近のココの関心は、ギリシア悲劇「オイディプス王」だった。ココは何度も同じ本を本棚から落とした。なぜか1ペンスコインに興味を示した。

そして、クィラランは、彼自身の過去を少しだけ知ることとなる・・・

ブラウン『猫はコインを貯める』

ブラウン『猫はコインを貯める』

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10歳の男の子が、クィラランに手作りの「9月のカレンダー」をプレゼントします。日めくりで、動物が出てくることわざが1日に一つずつ書いてあるもの。クィラランはたいそう気に入って、壁に飾ります。そして、物語はカレンダーの日付とともに進んでいきます。

その中で、あれと思ったことわざがありました。

「ライオンの尻尾であるよりも、猫の頭である方がいい。」(鶏口となるも牛後となるなかれ)

ちょっと違和感・・・なんだか違う言い回しだったような・・・私の英語力も記憶力もたかが知れていますが、猫に関してだけは普通の人より敏感なんです。もしこういうことわざがあったなら、きっと覚えているハズ?

ネット社会で何よりも便利なのは、なんでも検索できるということでしょうか。適当にあたりをつけて、”better head than tail lion”といれて検索してみたら、すぐにオリジナルのことわざが見つかりました。

“Better be the head of a dog than the tail of a lion.”(ライオンの尻尾であるよりも、犬の頭である方がいい)

ああ、こちらです、私がなんとなく覚えていたのは。猫ではなく、犬の頭。
ブラウン女史が猫と書いたのは、猫バージョンで言われていた地域または時代があったのでしょうか?それともこれはブラウン女史のちょっとしたジョークなのでしょうか?

気になったので、この本に出てきた、他の猫/ネコ科の諺もオリジナルを調べてみました。

・猫が留守をすると、ネズミは遊ぶ(When the cat’s away, the mice will play )

・手袋をしている猫はネズミをつかまえられない。(A cat in gloves catches no mice.)

・一度ヘビに噛まれた猫は、ロープですら怖がるようになる。(Having been bitten by a snake, he is afraid of a rope./He that has been bitten by a snake is afraid of a rope.)これも私が見つけたオリジナルは「猫」のかわりに「彼(人)」となっていましたが・・・?

・長く生きるためには、猫のように食べ、犬のように水を飲むことだ。(Willst du lange leben und bleiben gesund,so iß wie die Katze und trink wie der Hund.ドイツの諺で発見)

・ヒョウは斑点を変えられない。(A leopard can’t change its spots)

調べついでに、作品中で引用されていたマーク・トウェインの言葉のオリジナルも検索。

「彼はあらゆることについて一家言持っているわ!」ポリーはちょっとだけ考え込んだ。「違いについて言っていたわね・・・・・・猫と嘘のあいだの・・・・・・ちがいは、猫の方には九つの命があることだけだって」
page173

見つけました。オリジナルは、以下のどちらかのようです(あるいは両方とも?)

“One of the striking differences between a cat and a lie is that a cat has only nine lives.
または:The main difference between a cat and a lie is that a cat only has nine lives.”

うーん。やっぱり、羽田詩津子さんの翻訳は上品です。私ならきっと「嘘と猫の違いは、猫にはたった9つしか命がないってことさ(でも嘘の数には限りがない)」とでも訳しそうです。

こんなことばかりしているから、私は本好きなわりに1冊読み終えるのが遅いんですよね、きっと。今はGoogleちゃんで簡単に探せるから楽です。昔は、「諺辞典」だの「名言・名句辞典」だのを、いちいち引いていました、しかも、まずめったに答えは見つからない(汗)。あんな面倒なこと、若いからやれたんでしょうねえ。今の私には無理、そこまでの気力はありません。

『猫は・・・』シャム猫ココシリーズ まとめはこちら

ブラウン『猫はコインを貯める』

ブラウン『猫はコインを貯める』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『猫はコインを貯める』
『猫は・・・』シャム猫ココシリーズ

  • 著:リリアン・J・ブラウン Lilian Jackson Braun
  • 訳:羽田詩津子(はた しづこ)
  • 出版社:早川書房 ハヤカワ文庫
  • 発行:2002年
  • NDC:933(英文学)アメリカ長編小説
  • ISBN:4150772231 9784150772239
  • 340ページ
  • 原書:”The Cat who robbed a Bank” c1999
  • 登場ニャン物:ココ(カウ・コウ=クン)、ヤムヤム
  • 登場動物:

 

 

著者について

リリアン・J・ブラウン Lilian Jackson Braun Bettinger

1913年6月20日 – 2011年6月4日。アメリカの推理作家。
10代の頃から約30年、新聞社に勤務。
1962年、飼い猫のシャム猫がマンションの10階から突き落とされて殺された怒りと悲しみを忘れるために、記者業の傍ら執筆した短編「マダム・フロイの罪」(原題:The Sin of Madame Phloi)が『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』6月号に掲載され作家としてデビュー。エラリー・クイーンに「もっと猫の話を書くよう」勧められたことから、ココ・シリーズが生まれたという。
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ブラウン『猫はコインを貯める』

7.1

猫度

6.5/10

面白さ

7.0/10

猫活躍度

8.0/10

猫好きさんへお勧め度

7.0/10

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