リリアン・J・ブラウン『猫は七面鳥とおしゃべりする』

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ブラウン『猫は七面鳥とおしゃべりする』

 

ブルルの町に戻ってきた女性とは?

クィラランが住むピカックス市の創立百五十年祭を迎えようとしていた。そして近くのブルルの町は創立二百年だった。

ブルルの町は、200年を「誕生パーティー」と称して様々なイベントを企画していた。200隻のキャビン・クルーザーのパレード、高さ10フィートの木製誕生ケーキと電気キャンドル。「ようするに、ピカックスではいかれていてできないような派手なこと(page29)」の数々だ。

クィラランも依頼された。以前「大火」でやったのと同じような、独り舞台をやってくれないかというのだ。今回の題材は「大嵐」。1913年に湖岸の町を壊滅させた大嵐があった。何隻もの船が沈み、船と積み荷で何百万ドルもの損失が出、湖岸の建物は破壊しつくされ、200人近い犠牲者が出た。大変な災害だった。

それをラジオ劇風に再現しようというのだ。出演者はクィララン一人だが、効果音を操作する助手がいる。

その助手に推薦されたのが、アリシア・キャロル、通名リッシュと呼ばれる若い女性だ。ブルルに屋敷を持つ老エディス・キャロルの孫で、しばらくこちらに滞在するという。

クィラランはリッシュがミルウォーキー在住と聞いて、俄然興味を持つ。なぜならば・・・愛猫で霊猫(?)のココの生まれ故郷が、ミルウォーキーらしいからだ。

この女性から、何か聞き出せないか?ココの異常なほどに優れた知能や予知能力について、調査を頼めるかも?

なんてことを考えたクィラランは、さっそくリッシュに接近する。しかしなぜかココは、彼女の名を聞いただけでも拒絶反応を起こし、・・・

・・・かたや、クィラランの所有地内では、身元不明の死体が発見された。身なりのいい男性で、後頭部を撃たれ、身分証明書のたぐいは一切ない。ただムース郡の住民でないことだけは確かだった。だから人々もほとんどウワサにもしなかった。

が、彼が撃たれたと同じ時刻に、ココは例の「死の咆哮」でクィラランを警告していた。

ブラウン『猫は七面鳥とおしゃべりする』

ブラウン『猫は七面鳥とおしゃべりする』

*****

この本の中で、人は全員が「誕生日の詩」を持つべきだ、という考えが推進されます(page102)。クィラランはキップリング、ウェザービー・グッドはカール・サンドバーグ、等と、それぞれ好きな詩を選びます。

私ならどの詩を自分の誕生日に朗読してほしいかと考えたとき、まっさきに浮かんだのは、萩原朔太郎(1886-1942)のあの詩。『月に吠える』収録。

まつくろけの猫が二疋、
なやましいよるの家根のうへで、
ぴんとたてた尻尾のさきから、
糸のやうなみかづきがかすんでゐる。
『おわあ、こんばんは』
『おわあ、こんばんは』
『おぎやあ、おぎやあ、おぎやあ』
『おわああ、ここの家の主人は病気です』

私はこれ!絶対にこれ(笑)。
この、なんとも無意味な(?)内容が良いです。妙に意味深だったり、変にロマンチックだったり、やたら言葉を飾っていたりしていないところも良いです。残念ながら、うちの子に「まつくろけの猫」はいませんが。いるのはまつしろけな猫が一疋、その名もシロロ。

で。

タイトルの「七面鳥」ですが。

ストーリー本体となんの関係があるのかわかりませんでした。野生の七面鳥を画像検索して遊んだくらいです。ブラウン女史は何を言いたかったのかなあ?単にココの超能力者ぶりを強調するため?

そして、話としては、このシリーズの作品としては珍しく、わりと最初のほうで犯人や動機の推測がついてしまいました(汗)。
でも今回はいつもより猫の登場が多かったので、話としては私には面白かったデス。

『猫は・・・』シャム猫ココシリーズ まとめはこちら

ブラウン『猫は七面鳥とおしゃべりする』

ブラウン『猫は七面鳥とおしゃべりする』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『猫は七面鳥とおしゃべりする』
『猫は・・・』シャム猫ココシリーズ

  • 著:リリアン・J・ブラウン Lilian Jackson Braun
  • 訳:羽田詩津子(はた しづこ)
  • 出版社:早川書房 ハヤカワ文庫
  • 発行:2006年
  • NDC:933(英文学)アメリカ長編小説
  • ISBN:9784150772284
  • 223ページ
  • 原書:”The Cat who talked Turkey” c2004
  • 登場ニャン物:ココ(カウ・コウ=クン)、ヤムヤム、ダンディ
  • 登場動物:

 

 

著者について

リリアン・J・ブラウン Lilian Jackson Braun Bettinger

1913年6月20日 – 2011年6月4日。アメリカの推理作家。
10代の頃から約30年、新聞社に勤務。
1962年、飼い猫のシャム猫がマンションの10階から突き落とされて殺された怒りと悲しみを忘れるために、記者業の傍ら執筆した短編「マダム・フロイの罪」(原題:The Sin of Madame Phloi)が『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』6月号に掲載され作家としてデビュー。エラリー・クイーンに「もっと猫の話を書くよう」勧められたことから、ココ・シリーズが生まれたという。
『猫は・・・』シャム猫ココシリーズ まとめはこちら


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