リリアン・J・ブラウン『猫は爆弾を落とす』

ピカックス市150年祭の行方は?
去年、ピカックス市は盛大な150年祭を計画し・・・ようとした。
が!
計算違いをしていたことが発覚。去年ではなく、今年こそが150年祭だったのだ。早く気づいてよかった。
ということで、今年こそ正真正銘、150年祭を盛大に!
なのに、その前に大問題が。記念祭の名称は何にしよう?
「150年祭」を正式を英語ないうと「セスキセンテニアル(sesquicentennial)」
「(前略)三回早口でいってみて。一度試してみてよ。ものすごく発音しにくいうえに、百五十年っていう意味の単語を知っている人なんてほとんどいないの(後略)。」
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かといって、・・・去年、近所のブルルの町は「ブルル200」というロゴで200年祭を祝ったばかりなのだ。そうでなくともピカックス市は50年も負けている、だからまさか「ピカックス150」なんて真似はぜったいにデキナイし。
地元新聞宣伝部長のヒクシーが、困りきって、クィラランの住居に相談にきた。ピカックス・・・何にしよう?するとシャム猫ココが、耳をつんざかんばかりの声で「ナナナウ!」と鳴く。ヒクシーは叫ぶ。それだわ!
「わたしたちの記念祭の名前!ピカックスの今――ピカックス・ナウ!(後略)」
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こうして、晴れてイベント名が決まり、ヒクシーは張り切って記念祭運営に乗り出す。クィラランももちろん、駆り出される。一人芝居「大火」の再演、各家庭に眠っていた秘蔵品や保護子猫たちの慈善オークション、地元の偉人たちのコラム連載、その他。
クィラランが取材した「名家」のひとつに、レッドフィールド家があった。広大な屋敷には博物館と見紛うばかりの剥製コレクション、莫大な財産、老夫婦の楽器演奏の腕はプロ並みで、そして、・・・子供はいなかった。甥(評判の良くない)が遠くにいるだけだった。その甥はたまたま、彼女連れで老夫婦を訪問してきていた。
その状況で人が死ねば、当然、遺産がらみの殺人がウワサされることになる・・・
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今回もココの勘がさえわたります。それだけでなく、ピカックス市の一大イベント、150年記念祭の名前まで決めてしまいますね。クィラランが頼み込んで、「ヒクシーが夢の中で思いついた」、ということにしてもらいますが、「ピカックス・ナウ」という名称が褒められるたびに、ニヤニヤしてしまうクィラランです。
でもね、なんとなく、・・・ちょっとマンネリ化といいますか・・・いくらムース郡がかつて鉱山や林業で儲けた歴史があるとはいえ、今はカナダと国境を接するただの田舎。金持ちが多すぎませんか?それとも、アメリカってそうなんでしょうか?人口3000人のピカックス市を郡都といただくような辺鄙な土地にも、何億ドルも保有していてその相続財産だけで贅沢三昧に暮らせるような家族が何家族も存在しているのでしょうか?
本も薄くなってきていますしねえ?
まあ、それはともかくとしても。『猫は爆弾を落とす』というタイトルですが、ココが爆発に巻き込まれたり、爆弾を運んだりはしませんから、その点はご安心ください。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫は爆弾を落とす』
『猫は・・・』シャム猫ココシリーズ
- 著:リリアン・J・ブラウン Lilian Jackson Braun
- 訳:羽田詩津子(はた しづこ)
- 出版社:早川書房 ハヤカワ文庫
- 発行:2006年
- NDC:933(英文学)アメリカ長編小説
- ISBN:9784150772307
- 239ページ
- 原書:”The Cat who dropped a Bombshell” c2006
- 登場ニャン物:ココ(カウ・コウ=クン)、ヤムヤム
- 登場動物: