お茶の水文学研究会『文学の中の「猫」の話』
文学好きが選んだ猫本の数々。
まだ私が読んでいない猫本があったなあ!
読んだし持っているにもかかわらずサイトにアップしていない猫本もあったなあ!
この本は、“お茶の水文学研究会”が選んだ、猫が登場する本の紹介。
さすが“文学研究会”というだけあって、文学作品が多い。
定番『吾輩は猫である』からはじまるというのも、私にはとても好印象だ。この名作をはずして日本の猫文学は語れませんからね。
それから、E.T.A.ホフマン『牡猫ムル』やコレット『牝猫』、谷崎潤一郎『猫と庄造と二人のおんな』、ポーの『黒猫』等々。猫本の定番がしっかり網羅されて、しかもしっかり読み込まれて書かれているのが良い。最近は猫流行りだということで、よく「猫本の紹介」とかいいながら、「帯や解説しか読んでないでしょ」といいたくなるような、いい加減な羅列があったりするけれど、この“文学研究会”の読み方はさすがですね。
・・・ひとつだけ残念に思ったのが、芥川龍之介『お富の貞操』がなかったこと。けれども、他の名著がこれだけ解説されているのだから、ま、良いでしょう。
これだけ良書が並んでいると、未読の本は是非とも入手して読まなきゃって気になる。
『エバは猫の中に』ガルシア・マルケス、これは読んでいない。そもそもマルケスは『百年の孤独』しか知らないので、非常に興味がある。
それから、『吾輩は猫の友達である』尾辻克彦。この本も知らなかった。手に入れるぞ!
あと、巻末の『作家別 猫が出てくる作品』リストも良いですね。つぎはどの本を読もうか、見ているだけで楽しくなってきます。
書評としてはもちろん、読みものとしても十分に面白いので、これから猫の本を読みたいという方だけでなく、すでにかなりの猫本を読んでいる方も、面白く読める1冊じゃないだろうか。
(2010.8.14.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『文学の中の「猫」の話』
- 著:お茶の水文学研究会
- 出版社:集英社文庫
- 発行:1995年
- NDC: 904(文学:論文集)
- ISBN:4087483339 9784087483338
- 270ページ
- 登場ニャン物:
- 登場動物:
目次(抜粋)
- 第1章 おしゃべりな猫
『吾輩は猫である』夏目漱石/『ふしぎの国のアリス』ルイス・キャロル/『牡猫ムルの人生観』E.T.A.ホフマン/ほか - 第2章 恋人以上に愛される猫
『牝猫』S.ガブリエル・コレット/『海流のなかの島々』アーネスト・ヘミングウェイ/『猫と庄造と二人のおんな』谷崎潤一郎/ほか - 第3章 都会の猫
『ティファニーで朝食を』トルーマン・カポーティ/『裏町の野良ネコ』シートン/『日常生活の冒険』大江健三郎/ほか - 第4章 変身する猫
『黒猫』エドガー・アラン・ポー/『ジェニィ』ポール・ギャリコ/『エバは猫の中に』ガルシア・マルケス/ほか - 第5章 いつもいっしょの猫
『ノラや』内田百閒/『白猫』大佛次郎/『100万回生きたねこ』佐野洋子/ほか - 第6章 謎をにぎる猫
『猫は知っていた』仁木悦子/『三毛猫ホームズの推理』赤川次郎/『猫の首』小松左京/ほか - 第7章 不思議な猫
『マザー・グースのうた』/『ねこ先生または長靴をはいた猫』シャルル・ペロー/『空飛び猫』アーシュラ・K・ル=グウィン/ほか - 巻末リスト
- 作家別 猫が出てくる作品