東野圭吾『夢はトリノをかけめぐる』

東野圭吾『夢はトリノをかけめぐる』

 

茶トラ猫、オリンピック出場を要請される!?。

トリノオリンピックを覚えているだろうか。 2006年2月にイタリアで開かれた、第20回冬期オリンピックである。
トリノ、という名前をすでに忘れてしまった人でも、フィギュアスケート・荒川静香選手が「イナバウアー」で金メダルといえば、知らぬ人はいないだろう。

そのトリノオリンピックを、直木賞作家・東野圭吾氏が取材した気楽なエッセイがこの本の内容である。

冬期オリンピックは、夏季オリンピックにくらべどうも人気がない、というのが、東野氏の不満の種だ。
そして無謀にも「僕」に「オリンピックに出ろ」と言う。

この「僕」というのは実は東野氏の茶トラの飼い猫で、ある朝起きたらなぜか人間になっていた。で、「おっさん」こと東野氏は、「金メダルを獲って、俺に恩返ししろ」と命令するのだ。「僕はネコだぞ」と反論すると「ネコだからうまくいくこともあるかもしれんじゃないか」と東野氏。

しかたなく、「僕」は「おっさん」と一緒に、バイアスロンの練習を見に行ったり、スキージャンプの選手を夢見る少年に会ったりする。しかしそうこう手間取っている間にトリノオリンピックがはじまってしまう。こうなったら当地で飛び込み参加だと、「おっさん」と「僕」はトリノまで出かける。

トリノオリンピックでは、日本選手はパッとしなかった。

メダルが期待されていた種目で次々と失敗し、あるいは最初からメダルなんて高望みな実力であることが露呈し、日本全体が沈鬱なムードに落ち込んでいく。

最後の最後に荒川静香選手が劇的な大逆転で金メダルに輝くのだが、その肝心な試合は二人とも見ていない。なんと近所の山でスノーボードを楽しんでいたのである・・・。

で、このトリノオリンピック。

113人という大選手団を送り込みながら取れたメダルは金メダルひとつだけという、大失敗大会だったかのように新聞でもテレビでも言われている。

が、私はテレビで観ただけだが、全然そのようには思わなかった。むしろ「日本選手、すごいじゃん!日本、けっこうやるじゃん!」というのが正直な感想だった。

だって、どの競技にもたいてい日本選手が出場している!

こんなにまんべんなく選手を派遣できるほど、色々な種目を日本人はやっていて、しかも、どの競技でも、それなりに活躍している。

トリノでは、日本選手は14種目で入賞者を出した。個人競技12人、団体競技6チーム計24人、総計36人も入賞しているのである。

そのうち、4位は4名である。銅メダルと4位の差はどれほどあるというのか。ほとんど無いだろう。

オリンピックについては、こんな話を読んだことがある。

オリンピックといえば世界平和と平等主義の象徴とされているけれども、オリンピックをはじめたのは白色人種であり、白色人種は人種差別感が根強い。スポーツでも当然白人が圧倒的優位を占めると彼らは信じていた。

が、いざやってみると、黒人や黄色人も同等に活躍してしまう。

それを面白くなく感じた白人は、ウィンタースポーツ専門の冬期オリンピックというものを考え出した。これは期待通り、ほぼ白人優位のオリンピックとなった。すくなくとも最初の頃は。

ところがである。最近はどうも黄色人種が予想外に活躍してしまう。面白くない。で、スキー板の基準を頻繁に変更したり、フィギュアでは審判を買収して八百長したり・・・。さすがにフィギュアの八百長は問題となり、器械体操と同じような厳格な採点制に変更されたけれど。そしたらやっぱり日本人が金メダルを獲っちゃった。中国選手も大活躍してるし。白人としては、あらら、だろう。しかし黄色人種の私としては小気味よい。もっと行け、どんどん行け、である。

に、しても。
ウィンタースポーツの多くが、あまりにお金がかかりすぎると思う。

東野氏は、冬期オリンピックは今一人気が無いと嘆いておられるけれど、世界でもごく一部の人間しかできないスポーツばかりを集めた競技会なのだから、夏季オリンピックに匹敵する注目度を求める方が、そもそもおかしいのではないか?
ボブスレーやリュージュで金メダルを獲るのと、陸上100m走で金メダルを獲るのとでは、とても同列には並べられないと思うのだが。

ところで、「僕」は人間に変身してオリンピック会場まででかけるけれど、ネコとしては全然活躍しません。
だから「僕」は主人公的存在だけど、猫度はゼロです。

ついでに・・・この本は単にひとりの観客として「見たことだけ」を書いた本です。スポーツルポルタージュとしてではなく、気楽な旅行記にオリンピックも出てくる程度の気持ちで読んでください。

(2007.8.13.)

東野圭吾『夢はトリノをかけめぐる』

東野圭吾『夢はトリノをかけめぐる』

東野圭吾『夢はトリノをかけめぐる』

東野圭吾『夢はトリノをかけめぐる』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『夢はトリノをかけめぐる』

  • 著:東野圭吾(ひがしの けいご)
  • 出版社:光文社
  • 発行:2006年
  • NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
  • ISBN:4334974996 9784334974992
  • 231ページ
  • 登場ニャン物:夢吉
  • 登場動物:-

 

著者について

東野圭吾(ひがしの けいご)

大阪府生まれ。1985年、『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞。1999年、『秘密』で第52回日本推理作家協会賞を受賞。2006年、『容疑者Xの献身』で第134回直木賞を受賞。『宿命』『白夜行』『レイクサイド』『ゲームの名は誘拐』など、多数の著作がある。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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東野圭吾『夢はトリノをかけめぐる』

5.3

猫度

4.5/10

面白さ

7.0/10

猫好きさんへお勧め度

4.5/10

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