前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』
著者のバッタ愛に感動するやら、笑っちゃうやら。
著者は小学生のころ、『ファーブル昆虫記』を読んで感動。さらに、ある科学雑誌の記事に仰天、なんとバッタの大群に巻き込まれた女性が緑色の服をバッタに食べられてしまったという。なんて恐い・・・ではなく、なんて羨ましい!自分もバッタの大軍に服を喰われてみたぁい!
と、こんな経緯で、小学生の時に将来の職業も夢も決めてしまった。職業はもちろん昆虫学者、夢はバッタに食べられること!
そしてその通り、バッタの研究で博士号を取得しポスドクになった、まではよかったけれど、ここでサテ困った!日本の社会ではバッタ博士がバッタ研究だけで暮らせる環境なんて、夢の又夢?思えばあのファーブルでさえ、教師の傍ら昆虫観察を続けたのだ。うまくどこかに雇われたとしても、それでは実験室で業績をつみあげていくことになるが・・・著者の目標はファーブル、フィールドワークしてこその本物の昆虫学者!
と、ついに一大決心。はるばる渡ってしまいました、未知数の国、アフリカはモーリタニアに。
そこはサバクトビバッタの大発生にたびたび苦しめられてきた国。世界銀行の支援を受けて、バッタ研究所が建っていた。著者は20倍という高倍率を勝ち抜いて、「日本学術振興会海外特別研究員」に合格していた。年間380万円(生活費と研究費込み)を2年間支給してもらえる。その2年の間になんとしてでも大研究をなしとげて大論文を書き上げ、安定した職も得てやる!
と、意気込みはすごいが、その前に大問題。モーリタニアの公用語はフランス語、著者は英語しか話せない。ツテも後ろ盾も何もない。モーリタニアには日本人は十数人しかいないから日本人社会の援助も期待できない。無いないづくしで、本当に大丈夫なのか?
しかし、いざアフリカに渡って、一番無くて困ったのが・・・なんと「バッタの大群」だった・・・!!!
歴史的干ばつで、バッタも壊滅的に減ってしまったのである。バッタがいなければ研究もクソもない。約束の2年間は空しく過ぎていき、さあどうしよう?貯金なんて1年で底をつく。むなしく敗戦帰国するしかないのか?
バッタ博士のサバイバル術はバッタ以上
それにしても、なんて楽しい男なんでしょうか!バイタリティーにあふれ、ユーモアにあふれ、文才にあふれ、何よりバッタ愛に溢れすぎています。私は恥ずかしながらこの本で初めて「バッタ」と「イナゴ」の違いを知りました。今まで意識したことも無かった(汗)せいぜい「クジラ」と「イルカ」の違いみたいなものかな、と(体長4~5メートル以上がクジラ、それ以下がイルカ)。読んでびっくり、そんな違いがあったの!?あ、ここではネタ晴らしはしません(意地悪)。答えは本を読んでくださいね!
こんな魅力的な男がバッタ害を減らすために地球の裏側からやってきたら、モーリタニア中が日本人贔屓になっちゃったんじゃないでしょうか?読んでいるだけで、こちらまでワクワクしてきます。力がわいてきます。自分も頑張らなきゃって気持ちになります。そして、バッタが好きになっちゃいます。(もともと私はバッタはかなり好きな方ですけどネ)。
虫が好きな人はもちろん、虫がきらいな人でもきっと楽しく読めます!さすが10万部突破のベストセラーになるだけの本ではあります。めっちゃオモシロかった~♪ おすすめ!
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
目次(抜粋)
- まえがき
- 第1章 サハラに青春を賭ける
- 第2章 アフリカに染まる
- 第3章 旅立ちを前に
- 第4章 裏切りの大干ばつ
- 第5章 聖地でのあがき
- 第6章 地雷の海を越えて
- 第7章 彷徨える博士
- 第8章 「神の罰」に挑む
- 第9章 我、サハラに死せず
- あとがき
著者について
前野ウルド浩太郎(まえの うるど こうたろう)
昆虫学者(通称:バッタ博士)。モーリタニアでの研究活動が認められ、現地のミドルネーム「ウルド(○○の子孫の意)」を授かる。著書に、第4回いける本大賞を受賞した『孤独なバッタが群れるとき――サバクトビバッタの相変異と大発生』などがある。(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)
『バッタを倒しにアフリカへ』
- 前野ウルド浩太郎(まえの うるど こうたろう)
- 出版社:株式会社光文社 光文社新書
- 発行:2017年
- NDC:486.4(動物学)
- ISBN:9784334039899
- 378ページ
- カラー+モノクロ写真
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:サバクトビバッタ