神林長平『敵は海賊・A級の敵』

『敵は海賊』シリーズ6作目。
新しいキャラクターが登場する。
セレスタン・エアカーン。アプロやラテルと同じく、海賊課一級刑事。大男で大食い。脳天気。うぬぼれ屋でおしゃべり。しかし射撃の腕は超一流。
それから、セレスタンの“服”。おそろしく頑丈な装甲服で、バズーカ砲で撃たれても傷つかない。ごく単純なコンピュータも埋め込まれているから、セレスタンが着て歩かなくても、後ろから付いて歩く事が出来る・・・平坦地なら。ま、要するに歩く鎧だ。名前は「エクサス」。色は、セレスタンのたっての希望で、ベビーピンク(うへっ)。
セレスタンとラジェンドラ(宇宙フリゲート艦)はひどく相性が悪い。
というか、セレスタンが一方的に、ラジェンドラのような超A級人工知性体を毛嫌いしているのだ。だから愛するエクサスにも、最低限の機能しか装備させなかったのだ。
さて。
宇宙のかなたで、とある宇宙キャラバンが全滅させられた。
それだけならそう珍しい話ではなかった。しかしその宇宙キャラバンが実は海賊で、太陽圏の海賊たちのボスであるヨウメイが、事件の相手を知らなかった。そのキャラバンを率いていたマーゴという女海賊は、ヨウメイでさえ一目置いていた優秀な(?)海賊。あのマーゴが未知の敵にやられた、となれば、大海賊・ヨウメイは黙っていられない。
いっぽうで海賊課も調査にのりだす。
なんと、セレスタンがあの目立つ“服”を来たまま海賊船に乗り込み侵入捜査するというのだ。目立ちすぎてバレバレだと思うのだが、そこがセレスタン。“服”の色さえ塗り替えればバレないと信じている。どこまでおめでたい男なのか。
おもしろがったアプロまで、一緒に海賊船に乗るという。
こうして、大海賊ヨウメイと愛艦カーリー・ドゥルガー、海賊課刑事ラテルと愛艦ラジェンドラ、囮海賊船ナイル・アル・ダコダと水夫に化けた(つもりの)セレスタン+アプロが、宇宙の一点に集まることになる。
そこで彼らが遭遇したのは・・・!
なんと、宇宙に浮かぶ巨大な○○○○!!!
ここでその正体をあかす訳にはいきません。
読んでからのお楽しみ、ということで。
腹を抱えるほどおかしいから、是非、お読みください。
アプロと違い「本物の猫」であるクラーラも登場します。ごく短い登場ですが、一番大事な一瞬に活躍します。お楽しみに。
(2007.8.7.)

神林長平『敵は海賊・A級の敵』
****「敵は海賊」シリーズ ****
アプロ=黒猫型異星人で広域宇宙警察・太陽圏・火星ダイモス基地所属・対宇宙海賊課・1級刑事。食いしん坊で、脳天気で、身勝手で、非常識で、性格も見た目もまさに猫。が、実は案外優秀な刑事でもある。
ラウル・ラテル・サトル=同じく1級刑事でアプロの相棒。
ラジェンドラ=対コンピュータ戦闘用高機動宇宙フリゲート鑑。AAA級人工知能を有す。アプロとラテルの愛艦。
ヨウメイ(匋冥)・シャローム・ツザッキィ(ヨーム・ツザキ)=太陽圏の裏側を支配している幻の大海賊。表の顔は裕福な経済人。この「ヨウメイ」って、『荘子外編』に出てくる言葉「至道之精 窈窈冥冥(至道の精髄は窈窈冥冥ようようめいめい、つまり、奥深くて極めがたい)」からきているのかな?
カーリー・ドゥルガー=超A級宇宙空母でヨウメイの愛艦。その戦闘能力は太陽圏随一で、ラジェンドラもまともに戦ったらかなわない。
クラーラ=白い猫型の有機ロボット(本物の猫?)。ヨウメイの「純粋な良心」の具現化という説も。めったに出てこない。
「敵は海賊シリーズ」普遍のテーマ=「自由」および「支配」。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『敵は海賊・A級の敵』
敵は海賊シリーズ
- 著:神林長平(かんばやし ちょうへい)
- 出版社:早川書房ハヤカワ文庫
- 発行:1997年
- NDC:913.6(日本文学)SF小説
- ISBN:4150305838
- 365ページ
- 登場ニャン物:アプロ(黒猫型異星人)、クラーラ
- 登場動物:ニワトリ