神林長平『敵は海賊・海賊版』

神林長平『敵は海賊・海賊版』

 

『敵は海賊』シリーズ。

ラテル・サトルは、広域宇宙警察・太陽圏・火星ダイモス基地所属の対宇宙海賊課・1級刑事である。
ラテルの愛鑑、というよりむしろ、パートナーは、ラジェンドラという名のフリゲート艦。対コンピュータ戦闘用に作られた宇宙船だ。AAA級人工知能を有し、きわめて優秀、時には人間以上に感情的?

一方、ラテルの宿敵は幻の大海賊ヨウメイ・ツザッキィと、超A級宇宙空母カーリー・ドゥルガー。

そう、宇宙を駆けめぐる大海賊とそれを追いかける刑事という、どこかで聞いたような話ではある。
ラテルの射撃の腕前は超一流だし、ラジェンドラはとんでもなく優秀だし、ヨウメイは神出鬼没だし、カーリーの力は計り知れない。
それが大宇宙を舞台に所狭しと駆け回る、雄大で豪快な話、なのだが。

ラテルも、ラジェンドラも、ヨウメイも、カーリーもかなわない存在がひとつだけある。
それが、アプロ。

アプロは、ラテルの相棒で、一応海賊課1級刑事だ。
外見は、大きな黒猫。
アプロの正体は「黒猫型異星人」なのである。

で、性格もまるっきりのネコ。
つまり、身勝手で気ままで我が儘。他人のことなぞ知ったこっちゃない。 悪戯大好き。働くのは嫌い。規則なんてもっと嫌い。

その上、大食漢。

それも並大抵の食欲ではない。 牛1頭だって丸ごと食べてしまう。

が、自分で「おれ、かわいい」と言うだけあって、その猫の姿のせいか、アプロの本性を知らない人にはけっこう可愛がられている。 1級刑事がつとまるくらいだから、もちろん人語を話しコンピュータもなんとか扱う。

もしアプロが「ただの猫」だったとしても、ラテル等はかなわなかっただろう。
いくらラテルやヨウメイが強くても、ただの人間にすぎないし、いくらラジェンドラやカーリーが賢くても、ただのコンピュータにすぎないのだから。
人間やコンピュータが猫にかなうはずはない。

が、アプロは並の猫ではないのだ。
すごい超能力をも持っているのだ。
(もっとも、せっかくの能力も猫的発想でしか使わないので、かなり宝の持ち腐れなのだが)。

そして、アプロの一番の好物のエサは「海賊」。・・・

SFファンタジックコメディーとでも呼べばよいのか。本では「スペースオペラ」と表現されているが、「オペラ」というより、コミカルなオペレッタって感じ?

で、さて、この「敵は海賊・海賊版」について。

幻の大海賊ヨウメイ、すでに伝説の中の人物と化し実在するかもわからない謎の人物。・・・と、されているのだが、本のしょっぱなから生身の体で出てくる。バー「軍神」にひとりで酒を飲みに来ている。普通の「影の大黒幕」のように、隠れたりはしない。少なくとも読者に対しては。

このヨウメイとその仲間たち、および、ヨウメイを追いかけるアプロ・ラテル・ラジェンドラが、異次元の世界に連れ去られてしまう。
異次元世界は、元の世界のミラーワールド。つまり、まったく同じように、ヨウメイやその仲間たち、またアプロやラテルたちもいるから、ややこしいの何の。アプロひとりでも大変なのに、そのアプロがふたりもいるのだ。大変に決まっている(汗)。

さてヨウメイやラテル達は、いったいどうやって難問を解決し、どうやって元の世界に戻るのか?

この「敵は海賊シリーズ」、SF好きな人にとっては文句なしに面白いシリーズだと思います。

それから、これも言わせて♪
あまのほしたか氏のイラスト、最高!
本のカバーだけなのが残念。本の中にも挿絵が描いてほしかったです。

(2002.10.24)

神林長平『敵は海賊・海賊版』

神林長平『敵は海賊・海賊版』

****「敵は海賊」シリーズ ****

アプロ=黒猫型異星人で広域宇宙警察・太陽圏・火星ダイモス基地所属・対宇宙海賊課・1級刑事。食いしん坊で、脳天気で、身勝手で、非常識で、性格も見た目もまさに猫。が、実は案外優秀な刑事でもある。

ラウル・ラテル・サトル=同じく1級刑事でアプロの相棒。

ラジェンドラ=対コンピュータ戦闘用高機動宇宙フリゲート鑑。AAA級人工知能を有す。アプロとラテルの愛艦。

ヨウメイ・シャローム・ツザッキィ(ヨーム・ツザキ)=太陽圏の裏側を支配している幻の大海賊。表の顔は裕福な経済人。この「ヨウメイ」って、『荘子外編』に出てくる言葉「至道之精 窈窈冥冥(至道の精髄は窈窈冥冥ようようめいめい、つまり、奥深くて極めがたい)」からきているのかな?

カーリー・ドゥルガー=超A級宇宙空母でヨウメイの愛艦。その戦闘能力は太陽圏随一で、ラジェンドラもまともに戦ったらかなわない。

クラーラ=白い猫型の有機ロボット(本物の猫?)。ヨウメイの「純粋な良心」の具現化という説も。めったに出てこない。

「敵は海賊シリーズ」普遍のテーマ=「自由」および「支配」。

まとめ:「敵は海賊」シリーズ

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『敵は海賊・海賊版』
敵は海賊シリーズ

  • 著:神林長平(かんばやし ちょうへい)
  • 出版社:早川書房ハヤカワ文庫
  • 発行:1983年
  • NDC:913.6(日本文学)SF小説
  • ISBN:4150301786 9784150301781
  • 382ページ
  • 登場ニャン物:アプロ(黒猫型異星人)、クラーラ
  • 登場動物:-

 

著者について

神林長平(かんばやし ちょうへい)

新潟県生まれ。1979年、第5回ハヤカワ・SFコンテスト佳作入選作「狐と踊れ」で作家デビュー。第1長編『あなたの魂に安らぎあれ』以来、独自の世界観をもとに「言葉」「機械」などのテーマを重層的に絡みあわせた作品を多数発表、SFファンの圧倒的な支持を受けている。『敵は海賊・海賊版』、『グッドラック 戦闘妖精・雪風』などの長短編で、星雲賞を数多く受賞(以上、早川書房刊)。1995年、『言壷』で第16回日本SF大賞を受賞した。

まとめ:「敵は海賊」シリーズ

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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神林長平『敵は海賊・海賊版』

8.2

猫度

7.5/10

面白さ

8.5/10

猫好きさんへお勧め度

8.5/10

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