小林朋道『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』

小林朋道『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』

 

鳥取環境大学の森の人間動物行動学。

『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』の続編。

なんて、楽しそうな大学なんでしょうか。
なんて、理想的な環境なんでしょうか。
なんて、すてきな先生なんでしょうか。

私自身は、東京のど真ん中の大学で、およそ自然や動物たちとはかけ離れた環境で学生時代を過ごしましたので、もうホント、こんな学生生活、憧れちゃいます。なんで私、あんな大学にいったんだろうと、今更ながら悔しくなっちゃうくらいです。

小林朋道『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』

小林朋道『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』

小林先生は、こんなお方です。

綿日は鳥取県の鳥取環境大学で、専門である動物行動学と人間比較行動学(私は両方あわせて人間動物行動学と呼んでいるが)、そしてそれらを基盤にした野生動物の保護の研究と教育と実践に日夜(?)励んでいる。
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先生のもとに集まる学生たちは、イノシシ捕獲を企てて箱ワナを作成したり、ナガレホトケドジョウを求めて谷川を漁って歩いたり、求愛活動中のテンのカップルに驚かされたり。

そして、センセイご自身は。

研究室の机の周りに要塞のように大小の水槽を積み上げ、

だから、私が机の前で席を立てない仕事をしているとき、たとえば、学生が書類に必要な印鑑をもらいに研究室に来たら、どこかの駐車場での、小窓を通しての駐車券とお金のやりとりのような状況が発生する
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小林朋道『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』

小林朋道『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』

うらやましい生活ですねえ。好きな生き物たちに囲まれて、彼らを研究・観察することがお仕事で、ときには学生に手伝ってもらうことだってできる!私も大学に残ればよかった?(ああでも、私が専攻したのは本(だけ)に埋もれるような学問だったので、今の田舎暮らしのほうが幸せですね、ってか、今、すごく幸せな生活です。すみません)

動物好きな人なら誰でも楽しめる内容の、動物観察エッセイです。明るく、楽しく、一見軽くみえるけど確かな観察眼に裏付けされた動物学は流石で、この本で鳥取環境大学への進学希望者も増えたんじゃないかな?

小林朋道『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』

小林朋道『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』

ところで、本のタイトルにもなっているシマリス。本の中では、シマリスの寿命について、通常野生のシマリスは2~3年、飼育下では3~4年と書かれているけれど、シマリスって、個体によってはもっと長生きする動物だ。

シマリスは、たしかに2~3歳でひとつのピークがある。が、、それを越えれば 10歳もしくはそれ以上も長生きできる。 なぜ3歳で死んでしまう子と10歳まで生きられる子と、 これほどの差があるかといえば、どうも 「冬眠」 が関係しているらしい。

科学誌「 ニュートン 」2004年5月号の記事によれば、 シマリスは、外界温度や日照時間とは関係なく、 周期的に「冬眠可能な状態」になるのだとか。 詳しい説明は、HP(=冬眠特異タンパク質)がどうのこうのと 難しい話となり、私にもよくわからないのだが、簡単に言えば、 シマリスは冬になると体が「冬眠可能な状態」になる。 (実際に冬眠するかどうかはその時の外部環境その他による。) この「冬眠可能な状態」になったシマリスの体は、 実際に冬眠するしないに係わらず、免疫系が強化するなど様々な変化がおこり、 結果的に、たとえ冬眠しなくても寿命が延びるのだとか。 ただし、個体差があり、「冬眠可能な状態」にならないシマリスもいて、 ならないシマリスの寿命は2~3年と短くなってしまうのだそうだ。

私が今までに飼ったシマリスのうち、 1匹は1歳ちょっと、1匹は3歳前に死に、 1匹は毎年冬眠して9歳以上(詳細な年齢は不明)、 1匹は若い頃は冬眠せず7~8歳から冬眠するようになって12歳以上まで生きた。この最高齢の子は、うちに来たときすでに立派な尻尾をしていたから、もう大人だった。おそらく死んだときは13歳後半だったのではないか。1月の寒い時期に、冬眠しているのかと巣箱をそっと覗いたらすでに息を引き取っていたのだった。もし14歳になっていたのなら、ギネス級だったのだが。

さて、この最高齢くるみには、面白い性癖があった。猫のヒゲをかみ切るのである。

相手はいつもトロだった。おおらかな性格の茶トラ雄だ。トロは毎日のようにシマリスケージに顔を押し付けて、シマリスたちを眺めていた。くるみはよく、トロのすぐ前を、あっちに飛んだりこっちに飛んだり、おそらくはこの本にも書かれている「モビング」をしていた。そして、ある日。くるみは金網の間からひょいとトロのヒゲをつかむと、スパッとかみ切って、巣箱へ運んだのである。すぐに出てきて、またヒゲをつかむとスパッ。こうして、トロの金網に押し付けていた側のヒゲを全部かみ切って巣箱へ運んでしまった。その数日後には、トロの反対側のヒゲも全部なくなった。今となれば証拠動画がないのが残念。まだ当時はデジカメは未発達、スマホなんて開発さえされていない時代だったからねえ。

本の中には、ヘビの頭をかじるシマリスの話が出てくる。くるみと違って、そのシマリスは、齧り取ったヘビの皮膚を口の中で噛みほぐした後、自分の体に塗り付けるのだが、でも、・・・

ヘビもネコも、シマリスにとって恐ろしい捕食者であることに違いはない。もしかして、くるみの行動は、本のシマリスのSSA(Snake-Scent Application:ヘビ臭塗り付け行動)と同じようなものだったのか?私は、飼いリスが飼いネコをからかっているか、もっと単純に「純毛だわ、あたたかそう」と集めていただけかと思っていたけど。

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』
鳥取環境大学の森の人間動物行動学

  • 著:小林 朋道(こばやし ともみち)
  • 出版社:築地書館
  • 発行:2008年
  • NDC:480(動物学)
  • ISBN:9784806713753
  • 202ページ
  • モノクロ
  • 登場ニャン物:レオ
  • 登場動物:イノシシ、タヌキ、アカハライモリ、シマリス、アオダイショウ、ヤギ、ナガレホトケドジョウ、アカネズミ、犬、ほか

 

目次(抜粋)

はじめに
イノシシ捕獲大作戦-人間動物行動学から見た“尊敬”の意味
駅前広場にヤギを放しませんか?-狩猟採集人の心が駅前通りをデザインする!
駅前に残された“ニオイづけ”はタヌキの溜め糞?-スプレーで描かれたサインの動物行動学的意味
餌は目で、ヘビはニオイで察知するヤギ部のヤギコ-Iくん・Nくんの野望と私の密かな実験
飼育箱を脱走して90日間生きぬいたヘビの話-何がヘビを救ったか?
シマリスは、ヘビの頭をかじる-私が出会った愛すべきシマリスたち
イモリ、1500メートルの高山を行く-そのアカハライモリは低地のアカハライモリとはかなり違っていた
ナガレホトケドジョウを求めて谷を登る懲りない狩猟採集人-そして私の研究室の机の周りは要塞になった
1万円札をプレゼントしてくれたアカネズミ-そのネズミは少し変わった小さな島の住人だった
野外実習の学生たちを“串刺し”に走りぬけていった雌雄のテン-どの動物も雄はけなげである
自分で主人を選んだイヌとネコ-動物たちの豊かな内面を認識すべきとき

著者について

小林朋道(こばやし ともみち)

岡山県生まれ。岡山大学理学部生物学科卒業。京都大学で理学博士取得。岡山県で高等学校に勤務後、2001年鳥取環境大学講師、2005年教授。専門は動物行動学、人間比較行動学。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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シマリス

猫のヒゲをかみ切って巣材としていたシマリス、くるみちゃん。

猫

トロ。ヒゲは伸びてはかみ切られて、くるみが健在だった頃はいつも短かった。

小林朋道『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』

8.2

動物度

9.5/10

面白さ

8.5/10

猫好きさんへお勧め度

6.5/10

小林朋道『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』” に対して1件のコメントがあります。

  1. nekohon より:

    【推薦:まめまま様】
    前作、「先生、巨大コウモリが・・」の続編です。
    題名のシマリス話題ですが、シマリスのSSAという防衛行動をこの本を読むまで知りませんでした。
    本能というのはスゴイものだと思います。
    研究テーマのひとつに「イノシシの捕獲」とは!(^^)/
    本当にこの学校へ行きたかったです。
    (2009.3.11.)

    *サイトリニューアル前にいただいておりましたコメントを、管理人が再投稿させていただきました。

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