米田一彦『クマ追い犬タロ』

米田一彦『クマ追い犬タロ』

 

クマと本気で対峙できる犬を育てるには?。

著者の米田さんはクマ研究家として有名な方だ。私も氏のクマ本を何冊も持っている。奥山を実際に歩き回り数多くのクマ達と接してきた方なので、どの本もすごく実践的で面白い。

が、この本の主人公はクマではなく、犬のタロと、その仲間の犬たち。

タロは、クマ追い犬となるべく、きびしい訓練を受ける。今の愛玩犬業界の人が読んだら目をむきそうな訓練描写もあるが、そこが室内愛玩犬とクマ追い犬と違うところ。大自然の中で、クマと対峙しようという犬は、凡犬であってはならぬ。ひとつ間違えればそれがそのまま命取りになる。タロだけでない。米田さんにとっても命取りとなる。真剣度がまるっきり違う。

タロはそれによく答える。すばらしいクマ追い犬となって、米田さんと生活を共にする。それは、単なる共生ではない。ましてやペットではない。タロは、米田さんのかけがいのないパートナーであり、一番の仕事仲間であり、人生の伴侶である。

クマの描写も米田さんならではのもの。クマをすごく身近に感じてしまう。去年2004年は多くのクマが里に下りて、その多くが駆除=殺害された。人の前に姿を見せただけで殺されてしまうクマたち。その数、米田さんのHPによれば、

「2004年、西中国では生息数480頭±200頭の内、232頭が駆除され、 更に、ここ4年間に438頭も駆除されて絶滅に直面しています。」

だそうだ。

もう一度良く数字を見て欲しい。

生息数は推定480頭±200頭、すなわち、たった280頭~680頭である。そのうちの232頭がわずか1年で駆除されてしまった。もし、最低推測数の280頭しかいなかったとすると、もう西中国地方には50頭前後しかクマが残っていないことになる。最大推定数の680頭だったとしても、今は450頭。

これがどれほど危機的状況であるか、どうぞよく考えてください。日本は今「少子化問題」とやらで日本人が減ると大騒ぎしているが、もし、日本人が地上に480人しか残っていなくて、そのうち232人がたった1年で殺されてしまったらどうなるか。

(なお、私自身は少子化を全然問題とは思っていない。だってそうでしょう。世界人口がこの調子で増え続けたら、年金どころじゃない、まず食べ物が無くなってしまう。少子化はむしろ、日本が世界に先駆けて人口の自然減少という大業績を達成してみせた、世界に誇るべき偉業だと思っているのだが。)。

なお、この本は2002年度青少年読書感想文全国コンクール「課題図書」(中学校の部)に選ばれた。とても良いことだと思う。犬も犬だが、中学生の柔らかい頭に、クマという野生動物の実態と悲劇が、深く刻み込まれたことを望む。すわクマが出た、即殺せ、ではなく、クマ(やその他の動物達)と共存するという意味を、若い心で、しっかりと受け止めてくれた子がきっと何人もいただろうと期待している。

(2005.8.5)

*米田一彦さんのHP → NPO日本ツキノワグマ研究所

米田一彦『クマ追い犬タロ』

米田一彦『クマ追い犬タロ』

米田一彦『クマ追い犬タロ』

米田一彦『クマ追い犬タロ』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『クマ追い犬タロ』

  • 著:米田一彦(まいた かずひこ)
  • 出版社:小峰書店
  • 発行:2001年
  • NDC:645.6(家畜各論・犬、猫)
  • ISBN:4338155051 9784338155052
  • 185ページ
  • 登場ニャン物:-
  • 登場動物:犬、クマ

 


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米田一彦『クマ追い犬タロ』

6.2

動物度

8.0/10

面白さ

7.5/10

猫好きさんへお勧め度

3.0/10

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