仁川純一『ネコと遺伝学』
三毛の雄はどうして希少か。
この本の前半部分は、正直、あまり面白いとは言えないだろう。遺伝学の知識のある人にとっては単なる復習だろうし、知識のない人にとっては、かなり難しいのではないだろうか。
著者は「できるだけ専門用語を使わないようにこころがけています。」と前書きで書いているけれど、どうしても避けて通れない専門用語、かなり出てくる。説明も、多分、遺伝学初心者にはわかりにくい部分が多いのではないかと思う。知識のある人にとっては説明の必要もないような単語でも、知らない人には未知の世界だ。もう少し丁寧に書いて欲しいところ。
が、この本の薄さで、遺伝学を一通り説明しようとしたら、これ以上長々しくは書けないだろうから、仕方ないとは思う。
愛猫家にとって、興味の対象は、後半部分だろう。
私にとっても正直、前半はあまり面白くなかった。 が、78ページ以降は俄然面白くなった。
猫の遺伝学について、これほど簡潔かつ明瞭に書いた本は他に知らない。すばらしい。
遺伝学の知識のある猫好きさんは、前半部分は斜め読みでもかまいませんが、60ページ以降くらいからしっかり読んで下さい。
初心者の猫好きさんは、我慢して前半からじっくり読んで下さい。基礎知識がないと後半部分は理解できないと思いますので。後半部分は、前半部分の努力を補ってあまりある内容だと思います。
この本を読めば、なぜ雄の三毛猫が珍しいかという疑問などは氷解するでしょう。
著者様、どうかネコの遺伝学についての専門書を、この数倍の厚みでもう1冊書いて下さらないだろうか・・・と思わずにはいられなかった。
(2004.3.25)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『ネコと遺伝学』
新コロナシリーズ49
- 著:仁川純一 (にがわ じゅんいち)
- 出版社:コロナ社
- 発行:2003年
- NDC:489.53(哺乳類・ネコ科)
- ISBN:4339076996 9784339076998
- 126ページ
目次(抜粋)
- 1 遺伝学ってなに?
- 遺伝について
- 右利きのネコと左利きのネコ
- その他
- 2 子ネコの親は?
- ネコの親戚
- 親子鑑定
- その他
- 3 ネコが殺人犯を告発した!?
- 殺人犯とネコ
- ネコのDNA鑑定
- その他
- 4 毛の長いネコ!
- アンゴラウサギとペルシャネコ
- 毛の成長
- その他
- 5 毛のないネコ!
- ヘアーレス動物
- 毛のないネズミ
- その他
- 6 毛色を決める遺伝子は?
- 毛色と遺伝子
- アグチネズミとキジネコ
- その他
- 7 三毛ネコの毛色はどうしてできるの?
- 雄と雌の違い
- 茶色遺伝子
- その他
- あとがき(再び、子ネコの親は?)
- 参考文献