野坂昭如『吾輩は猫が好き』
強面野坂氏は、実は猫おじさん(笑)。
野坂氏はハスキー犬を飼ってらっしゃる。『ビートたけしのTVタックル』などで拝見した印象では、野性味満点なハスキー犬がいかにも似合いそうな御仁だった。
が、実は大の猫好き、猫キチ親爺、典型的猫おじさんなのである♪
小説家・作詞家・政治家・ミュージシャンと、多才な野坂氏。この本でもその多才ぶりを発揮している。口絵8ページに描かれた猫の絵、実に巧みだと思うが、これらの絵も、単なる写生では決して描けないものだろう。猫の柔らかさ、猫の暖かさ、猫のしぐさ、猫の表情。猫を愛し猫を知り尽くした筆だ。
本の中でも野坂氏はこう書いている。
また、猫ほど絵になる生きものも他に求めがたい。
(p.125)
そして、
ぼくは、まったくの猫派になってしまった。ジジ(ハスキー犬)を散歩させる川沿いの未知で、よくいろんな種類の犬に出会うが、どうもピンとこない、(中略)、どうもフフンとせせら笑いたい気分になる。
そこへいくと猫は、(中略)・・・
ペットなどと気楽にいう。さらに別の呼び方が猫いはふさわしい。人間と平等なのだ。 (中略)
実に、不思議なシロモノだと思いつつ、ぼくは、寒くなりゃ彼等用の、布団みたいなのを求めて来て、その上で寝てくださると、実にうれしい。マタタビを与え、チャーリーが喉をゴロゴロいわせりゃ、こっちも気が落ち着く。
(p125~128)ナニナニに「はまる」という。ぼくは確実に猫にはまってしまった。(中略)夜中、チラッと猫を見受けると、しばらく、その彼だか彼女だかについて考える。その幸を祈る。猫をよけて川に墜落しかけたトラックのドライバーを尊敬する。
(p.109)
これほど猫に魅惑されていながら、野坂氏らしい(?)無精さにも笑いを誘われる。
あるとき妻が、くしゃみをするネージュを獣医につれていった。病院の妻から電話があった。ユメも連れてくるようにという。
野坂氏は、しかし、ユメとクラ太の区別がつかない。この二匹はそっくり親子。多分こっちと決めて、伴ったら間違えた。母猫ユメではなく、息子のクラ太を連れて行ってしまったのだった。妻には『何年一緒にいるのよ、まだ判らないの』とあきれられ、クラ太は要らぬ注射をされてしまった。
ネット情報によると、野坂氏は現在、闘病中だそうです。
またお元気な姿をテレビで拝見できることを願います。
(2010.4.4.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『吾輩は猫が好き』
- 著:野坂昭如(のさか あきゆき)
- 出版社:中央公論新社 中公文庫
- 発行:2001年
- NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
- ISBN:4122037875 9784122037878
- 181ページ
- カラー口絵
- 登場ニャン物:ダダ、ネージュ、チャーリー、ロージー、クラ太、アンジュ、ミドリ、ココ、ユメ
- 登場動物:-
目次(抜粋)
口絵
初めての猫「ダダ」
猫の棲み家
棄てられた仔猫
元気なチャーリー
寝ている猫を見ていると・・・
動物と人間の「死」
五十年前の猫
ハスキー犬と猫達
猫に教わること
猫達の面倒
アンジュのお産
行方不明のチャーリー
帰還したチャーリー
酒好きな猫
猫の形容
庭仕事と猫
拾ってきた黒猫
飼い猫の病気
ジジの寂しさ
無精な主と犬と猫
ネージュの死
飼い猫の死
猫の食事と怪我と
チャーリーの「フリ」
「レッサーパンダ」の一家
猫缶と夏の凉
赤ん坊と猫
家の改築で猫達は・・・
得体の知らぬ生きもの
ジジの後遺症
轢死した猫
鳥と猫のふるまい
猫を描く
猫本来の姿
動物との相性
愛猫家のエッセイ
犬や猫とのつき合い
セキュリティ・キャット
商店街の招き猫と神戸の猫
ジジとチャーリーとヒマラヤン