関口すみ子『大江戸の姫さま』
副題:『ペットからお輿入れまで』。
江戸時代といえば男尊女卑、女三界に家無しのイメージがあるが、中には夫より身分が高く、夫より威張って暮らした妻達もいた。政略結婚=政治の道具、ではあるのだけれど、それだけに一層優遇され、贅の限りを尽くし、屋敷の奥でしたたかに生きていたらしい。
この本は、今は忘れられてしまったそんな姫君達の生活を浮き彫りにした歴史書である。「生類憐れみの令」の第五代将軍綱吉や、ドラマ「暴れん坊将軍」が人気の第八代将軍吉宗らが、いかに姫君たちを利用したかなどが書かれていて面白い。
が、ここは猫サイトなので、猫やペットのことだけを取り上げよう。
第一章「姫さまのお楽しみ」には、ペットのことと歌舞伎のことが書いてある。
姫君たちが、大奥でいかにペットをかわいがっていたか。
といっても、ほとんどが狆(ちん=小型座敷犬)の話で、猫のことはわずか2ページも書いてないのだが。
そこに出てくるのは、十三代将軍家定の継室、天璋印(敬子=すみこ)の飼い猫たち、ミチ姫とサト姫。
なかでもサト姫は知る人ぞ知るという有名な猫だ。猫の世話係は3人もいた。出産も大騒ぎだった。サト姫の子猫たちは貰われていったが、「先方によっては大変な支度をしました」。
ところで、夏目漱石の『吾輩は猫である』の猫君には三毛子という初恋の相手がいた。二絃琴のお師匠さんの飼い猫である。この三毛子が飼い主の身分を自慢して言う。
「何でも天璋院様の御祐筆の妹のお嫁に行った先の御っかさんの甥の娘なんだって。」
ということは、ひょっとしたらこの三毛子も、天璋院様の愛猫サト姫と何らかの関係があったのかもしれにゃい?(笑)
(2007.3.4.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『大江戸の姫さま』
ペットからお輿入れまで
- 著:関口すみ子 (せきぐち すみこ)
- 出版社:角川書店 角川選書
- 発行:2005年
- NDC:210.5(近世史)江戸時代、幕藩体制
- ISBN:4047033812 9784047033818
- 188ページ
- モノクロ挿絵
- 登場ニャン物:ミチ姫、サト姫
- 登場動物:犬
目次(抜粋)
- はじめに
- 第1章 姫さまのお楽しみ
- 1 姫さまとペット
- 2 姫さまと歌舞伎
- その他
- 第2章 姫さまのお輿入れ
- 1 「大名の妻」
- 2 御守殿・御住居
- その他
- 第3章 姫さまの記憶
- 溶姫とサロメ
- 和宮の逸話
- その他
- あとがき
- 主要引用参考文献
- 掲載図版出典一覧
- 年表