加藤由子『ゾウの鼻はなぜ長い』

副題:『動物の不思議31』。
本を開いて驚いた。
鳥のひざは、なぜ人間とは逆に曲がるのか?
ええっ?人間と逆に曲がる膝を持つ鳥なんていたっけ?そんなバカな!と、すごく驚いたのである。
なんてことはない、フラミンゴなどの、
・・・ひざのように見える関節が、実はひざではない(中略)動物の足の関節の曲がり方は共通なのだから、同じ曲がり方をする関節を、私たちの足で探してみればよい。答えは、かかとだ。鳥というのは、かかとから下がベラボウに間延びした足をしているのである。
(p.40~)
という話だった。
知らない人にはかかとが膝に見えたりするものかと、まるで斬新な発明を見たときのように感心してしまったのである。
笑い話はまだある。
動物園でガイドツアーをやっていた頃、メスライオンの前で、冗談のつもりで『さあ、この動物はなんでしょう?』といったら、それまで元気だった客達が首をかしげて考えはじめ、思わずズッコケてしまったことがある。しばしの沈黙のあと、一人が恐る恐る『シマ模様のないトラ・・・ですか?』と言ったときには、その予想だにしない展開に、今度は心底のけぞった。ライオンとくれば“たてがみ”という認識なのだとはじめて知った。
(p.166)
そりゃ加藤由子氏でなくても、拙サイトの常連さんなら誰でものけぞるだろう。
メスライオンをクーガーと間違えるなら分かるが、トラ模様のないトラとは。
しかし、そんなものなのかもしれない。
動物に興味のない人たちにとっては。
それどころか、よく考えれば、私とて、とても他人のことを言えた柄ではないことを思い出した。
この田舎に引っ越して自分で畑を作るまで、収穫せずに放っておけば、緑のピーマンは真っ赤になり、細いキュウリは枕のようにでかくなるなんて知らなかった。
子どものときから動物は好きだったけど、植物には興味が無かった。
そういう意味では、ライオン=たてがみ、と信じている人たちと全然かわりはなかった。
この本は、これくらい、動物学初心者向けの本である。
なので、動物に詳しい人が読むには飽き足らないかもしれない。
しかし、この程度の知識は、人の親であれば、ぜひ持っていてほしいと思う。
動物園にわが子を連れて行ったとき、恥をかかないためにも。
(2009.4.20.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『ゾウの鼻はなぜ長い』
動物の不思議31
- 著:加藤由子(かとう よしこ)
- 出版社:講談社 ブルーバックス
- 発行:1996年
- NDC:480(動物学)
- ISBN:4062571404 9784062571401
- 205ページ
- モノクロ
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:各種多数
目次(抜粋)
まえがき
[1] 体つきがいろいろなのは暮らし方がいろいろの証拠
1.ゾウの鼻はなぜ長いのか?
2.シカの角は、一生のび続けるのか?
3.ウシの角も生えかわるのか?
他
[2] 進化の選択は究極の物理学
12.動物の歯も抜けかわるのか?
13.イヌやネコは、なぜあんなに早食いなのか?
14.アシカとアザラシ、どこが違う?
他
[3] 先祖から受け継いだ習性が子孫たちに引き継ぐ命
21.サルの顔はなぜ赤い?
22.動物は汗をかかないのか?
23.動物は、どのくらい眠るのか?
他
あとがき