リリアン・J・ブラウン『猫は手がかりを読む』

ブラウン『猫は手がかりを読む』

 

クィララン、シャム猫ココに会う。

ジム・クィラランは、かつては新聞社連盟優秀賞をとったほど優秀な新聞記者だった。
警察担当記者、従軍記者などを担当。都市犯罪の著書もしたためた。

が、そのあとに、長い無職――あるいは履歴書に書くに値しない仕事――の時期が続く。

りっぱな口ひげ。
6フィート2インチ(188cm)の長身。
頭にはまだ、白髪1本につき黒毛3本をたくわえている。
独身(今は)。

記者として堂々たる経歴を持つ彼が、地方の小新聞社〈フラックス〉の美術担当記者なんて地位に再就職したのは、まあ要するに、過去に”暴れすぎて”、いくつもの大都市から「締め出し」を喰らったからだった。

クィラランは美術に関しては全くの素人(グルメとしては超絶的な舌を持っているが)。

新天地に移住して、まず必要となるのは住居。
クィララランは、同じフラックス紙の美術評論家、ジョージ・ボニフィールド・マウントクレメンズ三世の家に住むことにした。
1階はアパート2室、2階が大家マウントクレメンズの住居となっている建物である。

このマウントクレメンズが癖のある男だった。
そして、マウントクレメンズの飼い猫、カウ・コウ=クン(愛称ココ)は、飼い主以上に癖のあるシャム猫だった。

新しい町・新しい職場で、、クィラランはたちまち、美術界内のイザコザをいやというほと聞かされただけでなく、殺人事件にも遭遇してしまう。
それも、1件だけでなく、立て続けに。
そして、被害者の一人は、ほかならぬマウントクレメンズで、第一発見者?目撃者?は、飼い猫のココだった。

ブラウン『猫は手がかりを読む』

ブラウン『猫は手がかりを読む』

もうずいぶん昔に読んだ本です。
今回、書評のために読み返し、そして、あらためて感心しました。

ストーリーも面白いですが、なんといっても、猫の扱いが最高!

猫が探偵役をする本は昔からけっこうあります。
さらに、近年の猫ブームのせいか、猫が登場する小説も増えています。

けれど、残念なことに、猫好きを満足させられる本って意外と少ないんですよね。
猫探偵が活躍する本の多くが、猫を思い切り擬人化しています。猫同士・動物同士は人間のように会話し、組織をつくり、綿密な計画を練って集団行動したりします。字を読むなんて朝飯前、車を運転したり、コンピューターを操作する猫もめずらしくありません。

かと思うと、猫をただの小道具のように扱っている作家もいます。猫を犬に、ニャーをワンに、引っ掻くを噛みつくに一括変換しても、ほとんど違和感なく読めちゃうような推理小説もあります。猫を利用しているだけだろ、と、頭にくるような扱いがされていることもあります。

またその一方で、猫好きな作家さんなのでしょう、あちこちに猫が顔を出す小説というのもあります。たとえば、恋人と歩いていると道を猫が横切るとか、喫茶店ではとなりのテーブルのおばさん達が声高に飼い猫自慢とか、彼女の弁当箱を包むハンカチは猫柄という具合。他の何でもかまわないのに、つい猫と書いちゃっている感じで、私はそういうの大好きですが、ストーリー上、猫である必然性はありません。

その点、この本は♪

シャムネコ・ココの魅力がこれでもかと描かれています。
よく読めば、ココの登場シーンは意外と少ないんですけれど、そのあまりある存在感で、本中をココが闊歩しているかのような、猫猫な気持ちになれます。

「猫は、人間にない才能をたくさん持っている。にもかかわらず、わたしたちは彼らを人間の基準で測ろうとしがちだ。猫を理解するためには、猫には独自の才能、独自の観点、独自の道徳すらあるということを認識しなくてはならない。しゃべれないからといって、猫を低級な動物にみなすことはできないのだ。猫は話すことを軽蔑しているんだよ。言葉なしでも意思を伝えあえるなら、しゃべる必要はないだろう?猫は仲間同士、非常に巧みに意思伝達をしあっているし、人間にも辛抱強く、考えていることをわからせようとしている。ただし、猫の考えを読み取るには、まずリラックスし、受容的にならなくてはいけない」
page86

クィラランは、さすが新聞記者なだけあって、相手から情報を引き出すのがうまいのです。
その能力は、ココにも発揮します。
猫から必要な情報をうまく引き出し、あるいは推測し、あるいは察知し、あるいは猫の行動からインスピレーションを得て、事件を解決していきます。

実に正統派な猫ミステリー。
もう半世紀も前に書かれた作品ですが、今なお、ぜんぜん色あせないばかりか、むしろホッとするような猫の扱い方をしています。
猫をどこまでも猫として描きながら、猫らしからぬ理解力と、猫らしい神秘さで、猫が事件解決のヒントを出し続けるのです。
すばらしい。

さすが、世界で愛されたミステリーシリーズなだけありますニャ。

『猫は・・・』シャム猫ココシリーズ まとめはこちら

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『猫は』
『猫は・・・』シャム猫ココシリーズ

  • 著:リリアン・J・ブラウン Lilian Jackson Braun
  • 訳:羽田詩津子(はた しづこ)
  • 出版社:早川書房 ハヤカワ文庫
  • 発行:1988年
  • NDC:933(英文学)アメリカ長編小説
  • ISBN:4150772029 9784150772024
  • 284ページ
  • 原書:”The cat who could read backwards” c1966
  • 登場ニャン物:ココ(カウ・コウ=クン)
  • 登場動物:

 

 

著者について

リリアン・J・ブラウン Lilian Jackson Braun Bettinger

1913年6月20日 – 2011年6月4日。アメリカの推理作家。
10代の頃から約30年、新聞社に勤務。
1962年、飼い猫のシャム猫がマンションの10階から突き落とされて殺された怒りと悲しみを忘れるために、記者業の傍ら執筆した短編「マダム・フロイの罪」(原題:The Sin of Madame Phloi)が『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』6月号に掲載され作家としてデビュー。エラリー・クイーンに「もっと猫の話を書くよう」勧められたことから、ココ・シリーズが生まれたという。
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ブラウン『猫は手がかりを読む』

8.8

猫度

7.5/10

面白さ

9.0/10

猫活躍度

9.5/10

猫好きさんへお勧め度

9.0/10

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