リリアン・J・ブラウン『猫はソファをかじる』
シリーズ2弾目。クィララン、雌のシャムネコに出合う。
かつては事件報道記者として大活躍したジム・クィララン。
活躍しすぎて、大都市にいられなくなり、プライベートな事情も重なって、しばらく鳴りを潜め。
久しぶりに新聞記者として再就職した〈デイリー・フラクション〉紙では、なんと美術蘭担当に配属され。
美術なんてわからん!と嘆いていたら、今度は、高級インテリア誌の責任者に任命されちゃった。
インテリアなんて興味ないし知らん!そんなペーパーは婦人部に任せれば良いじゃないか!
と、クィラランは抗議したが、会社はむしろ、何も知らぬ男が担当することで新境地を開拓したいのだと押し付ける。
クィラランも、昇進と昇給がかかっているとなれば、仕方ない。さっそくインテリア・デコレーターのインタビューに向かう。
なんせ彼には、自身以上の超グルメ、シャムネコのココという家族がいるのだから。ココを養わなければならないのだから。
クィラランが最初に訪問した家は、雑誌〈優雅なる住居〉初号のカバーストーリーに取り上げるにふさわしい、それは優雅な家だった。
美しい邸宅。
選びぬかれた家具。
そして、なんといっても、見事な翡翠コレクション!
家主は変わり者の男で、その妻は長年病気を患っているせいかとんでもないヒステリー女で、家政婦はもうよい歳なのに蓮っ葉で、唯一好感が持てたのは、ハウスボーイのパウロだったが。
〈優雅なる住居〉初号が発刊されるや否や、事件が起きた。
なんと、翡翠コレクションが盗まれたという。
容疑者は、ハウスボーイ。
あの、みるからに純朴でまじめそうだった少年・パウロが、まさか?
クィラランの口ひげが予感に震える。推理が動き出す。
そして、殺人事件・・・
* * * * *
猫精神分析医というのが出て来ます。
これは、この本がかかれたのが1967年であることを考えれば、すごいと思うのです。
いくらアメリカでは「精神科医」が流行っているとはいえ、人間のではなく、猫の精神科医ですよ?
我が日本では、平成の世となっても、さらにその元号がまた新しくなりそうな世相となってさえ、猫の精神科医なんて、そうそうお目にかかれるものじゃありません。
なのに、この本の中では、まるで当り前のように、猫の精神科医という存在が言及されるのです。
そして、クイラランは、猫の精神科医を訪れるのです。
もちろん、愛猫ココのことで。
ココの症状?
別に珍しい症状ではありません。多くの猫がやることですし、中でもシャムネコにはとても多い行動なんです。
けれども、クイラランは、ココの行為を知って、慌てふためかなければならない理由がありました。
そして、その結果、殺人事件の犯人がわか・・・ったワケではありません。殺人事件とは関係ありません。
殺人事件の犯人捜しより、もっと重要で重大な出来事の発端となったのです。
その出来事とは。
猫の精神科医のアドバイスにより、ココにガールフレンドを迎えることになったのです!
そして、候補の猫はすでにいました。
翡翠盗難事件のにあった夫婦は、雌のシャムネコを飼っていたのですが、事件後、その猫はどうやら不幸な状態に置かれてしまったようでした。
クイラランは、その猫を引き取ることにしたのです。
ココは、もともとは美術評論家の愛猫。美的感覚が人一倍鋭かった元飼い主が選んだだけあって、それは美しい猫です。
新しく引き取った雌猫だって、元の飼い主は大金持ちで翡翠コレクター。美しくないわけがありません。
こうして、シャムの美形カップルが誕生しました。
ココとヤムヤムと、飼い主(下僕?)のクイララン。
シリーズの主人公たちが、ここで勢ぞろいしたわけです。
猫愛護サイト内の猫本書評コンテンツとして、これこそが最重要課題であり、最大関心事でもあります。
で、もちろん、ココの優れた頭脳が、事件解決に大いに貢献します。
ココの登場シーンが第一作目より少ないのがちと残念。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫はソファをかじる』
『猫は・・・』シャム猫ココシリーズ
- 著:リリアン・J・ブラウン Lilian Jackson Braun
- 訳:羽田詩津子(はた しづこ)
- 出版社:早川書房 ハヤカワ文庫
- 発行:1989年
- NDC:933(英文学)アメリカ長編小説
- ISBN:4150772037 9784150772031
- 282ページ
- 原書:”The Cat who ate Danish Modern” c1967
- 登場ニャン物:ココ(カウ・コウ=クン)、ヤムヤム(フレイア、ユウ)
- 登場動物:-