ちくやまきよし画『獣医ドリトル』全20巻

『獣医ドリトル』

 

作:夏緑。腕は超一流、でも金に汚くて態度も悪い?

大男、大型犬を軽々と担ぎ上げる。
大きくて高い鼻に、高慢な態度。
しばしば目つきが悪い(けど、人知れず、とろけそうに優しい目になることも)。
本名は「鳥取健一」、周囲からは「鳥取→とりとる→ドリトル」と呼ばれている。

獣医としての腕は超一流だ。どんな動物のどんな怪我・病気でも、彼なら治せる。
しかし、その治療費は高額だ。

フン、
残念ながら
俺が好きなのは
金払いのいい
飼い主さ。
(中略)
阿呆かお前、
これは
ビジネスだ。
カルテ1 獣医はビジネス!?

『獣医ドリトル』

『獣医ドリトル』

たとえば、第一話。
『カルテ1 獣医はビジネス!?』は、骨折したサラブレッドの話だ。

多島あすかは、学校を卒業して、地方から東京に出てきたばかり。
就職活動を頑張るが、どこにも決まらない。
落ち込んでいた時に、ある競走馬と出会った。
アスカミライ。自分と同じ名前に親近感を覚える。

ところが、アスカミライが骨折してしまう。
脚を折った競走馬は安楽死させられると知って、なんとか助けたくて、獣医ドリトルの病院までたどり着いたが、・・・

「まず
金の話を
しておこう。
アスカミライの
治療費は
3千万円だ。」

「さっ・・・
3千万円!?
バカ言わないでよ!!」

あすかに、そんな大金が払えるわけがない。まだ無職なんだし。
それでも、どうしてもアスカミライを助けたいと思ったあすかは、治療をお願いする。
治療費がわりに、鳥取動物病院で動物看護士(AHT)として働きはじめる。

けれども、この3千万円という数字、私はちっとも高額とは思わなかった。
だって、骨折したサラブレッドの治療と看護と入院と、さらに完治後のお世話まで、全部込みの金額でしょう?
そのくらいかかって当然だ。
ぼったくりどころか、実費のみじゃん、と思いましたヨ。

マンガの中でも、ちゃんと説明される。
馬は体が大きいから、薬だって人間の10倍は必要だし、治療に必要な器具など、すべて特注となるし、馬を固定するための特殊なハンモックを新設しなきゃならないし、敷き藁は消毒して毎日取り換えなければならない。

「普通、馬一頭
完治させるのは
何十人って獣医師団の
億仕事だ。」

「えっ・・・」

治療にかかる道具や人手だけでない。
サラブレッドという品種特有の問題があるのである。

「サラブレッド=Thoroughbred」、とは、「thorough=徹底的な」+「bred=血統」、つまり、競争させるために、人間が徹底的に管理して特別に作り出した馬のことだ。
自然な品種ではないから、体も弱い。
あの大きな体を、あの細い四肢で支えていることに、土台、無理があるし、あの筋肉を、あの皮膚(毛皮)で包むにも無理がある。
体だけじゃない、精神も弱い。
カラス一羽飛んできても怯えて暴れるし、馬が本気で暴れたら、人にはおさえられない。

サラブレッドの骨折治療とは、体の治療以上に、その精神ケアが大変なのだ。
あすかは、それを思い知らせれることになる・・・

だから一般に、競走馬のサラブレッドが「骨折しただけ」で安楽死させられるのは、ある意味仕方のない事だと、読者も納得できるだろう。
安易な「動物かわいそう(涙)」で、どうにかなる問題ではないと。
下手な治療は馬を苦しめるだけ。
安楽死させてあげる方が、馬にとっては楽なのだ・・・

なんですけどね・・・

そもそも、そんな品種を作り出した人類の、罪の深さよ!
と、私は、そこを責めたいね。
そんな「完璧な品種」を作り出したのが人間なら、怪我をしたり老いた場合でも「完璧に管理」できるように、制度をととのえたらどうなんだい?
競馬場で流れるお金は、3千万円なんてもんじゃないんだからさ。

と、まあ、私の腹立ちはともかくとして。

このマンガは良いです。
とても考えさせられます。
ペットや動物業界の裏もあばいてくれます。
人間のエゴもするどく突いてくれます。

それに、獣医ドリトルの請求する治療費。
30万円だ、50万円だ、100万円だと、ちょっとみると高そうですが、実際、動物医療費ってそのくらいすぐかかっちゃうし(涙)。
それに、良く読めば、それらの価格設定。実に絶妙です。
飼い主が、少し無理をすれば払える金額になっています。
この「少し無理をすれば」ってところがミソなんですよね。
無理をすることで、命の価値とか、その子の存在意義、ひいては、家族や自分自身の存在意義までが見えてくる。

獣医ドリトルは、動物たちを治療しながら、人間の心も治療しているのです。
ドリトルと対照的な(けど仲の良い)獣医、花菱の存在も面白いです。
おすすめ。

『獣医ドリトル』

『獣医ドリトル』

『獣医ドリトル』

『獣医ドリトル』

『獣医ドリトル』

『獣医ドリトル』

表紙の絵。わかりますか?
巻数と、頭数が同じです。

『獣医ドリトル』

『獣医ドリトル』

第7巻。
宗谷獣医師(ドリトルの後輩で首席の才媛)が赤ちゃんをおんぶして表紙に登場。
ところが、人間の赤ちゃんは、数にカウントされないようです。
ヘビはちゃんとカウントされているのにね(笑)。
このあとの巻でも赤ちゃんは数に入れません。

追伸。
テレビドラマにもなりました。
2010年、TBS系列の『日曜劇場』
でも、私は見ていません。なのでどんな雰囲気、どんな内容のドラマだったのかわかりません。すみません。

『獣医ドリトル』

『獣医ドリトル』全20巻だそうだが、私が持っているのはまだ最初の9巻だけ。

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『獣医ドリトル』
全20巻

  • 作:夏緑
  • 画:ちくやまきよし
  • 出版社:小学館
  • 発行:2003年(第1巻)~
  • NDC:726(マンガ、絵本)
  • ISBN:4091866913
  • 登場ニャン物:シロ、ベンガル(トラ吉)、ラグ、ほか
  • 登場動物:馬、犬、ハムスター、ウサギ、白鳥、レミング、アジアゾウ、カメ、その他多数

 

巻名

  1. 獣医はビジネス!?
  2. 奇病の真犯人
  3. イルカの声
  4. 安楽死
  5. 医療過誤
  6. 猫ひっかき病
  7. 犬を飼う猫
  8. 動物病院から愛をこめて
  9. その男、悪徳獣医
  10. 眠らない熊
  11. サラマンダー・レポート
  12. 奇跡の万能薬
  13. ロンサム・ライナ
  14. ソロモンの指輪
  15. iPS細胞
  16. 春を待つ命
  17. 空飛ぶ獣医
  18. 大晦日の不思議な訪問客
  19. ファインディング・ミモザ
  20. 鳥取動物病院最後の日


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『獣医ドリトル』

8.5

動物度

9.0/10

面白さ

8.5/10

猫好きさんへお勧め度

8.0/10

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