アン・クレア『雪山書店と嘘つきな死体』

「クリスティ書店の事件簿」シリーズ。
平和なリゾート地の静かな書店が、殺人事件に巻き込まれる?
ストーリー
私ことエレノア・クリスティ(愛称エル、エリー)は、高校卒業後に家を出てから、あちこちで働いた。書店経営、ツアー案内、図書館司書。
そんなある日、両親が早めにリタイアし、家業の書店「ブック・シャレー」の経営を、メグとエルの姉妹に引き継ぎたいと連絡してきた。エルは大喜びで飛んで帰る。大好きな本に囲まれた毎日!書店には看板猫のアガサもいる。新しい生活がはじまってまだやっと三週間たったところ。
ブック・シャレーではミステリー好きによる定期読書会が開かれていた。その読書会に現れた、見知らぬ男。読書会の降霊術で表示された不気味な予言。そして、目の前で死んだ男。殺された?でも、いったいいつ、誰に、どうやって?ずっと見ていたのに!
感想
多くの猫ミステリーと違い、この小説の猫アガサは猫探偵ではありません。ふつうの猫です。ふつうの猫らしくふるまっているだけです。
しかし、猫+ミステリーで、猫が事件解決のヒントを出さないワケはないでしょう?アガサは控えめながら、ちゃんとヒントを出してくれますし、登場人物達もそのヒントに気づきます。そのさりげなさ、その的確性はさすが「アガサ」と名付けられた猫なだけあります。どうぞ安心して(?)お読み下さい。
世の何よりも本が好きな姉妹が経営する雰囲気あふれた書店、そこに集まる人々も全員本好き、とくにミステリーの女王アガサ・クリスティーを崇拝していて、作品のあらゆるところに本があふれています。しかし、この中で「一番の本好きは他ならぬ著者自身だろ😏」って作品でした。同じく本好きな私としては、実に心地よい、楽しい一冊。続編も購入しなきゃ、です。
そんな中、思わずニヤリとした部分がありました。主人公のエルは人の名前を覚えるのが苦手、という設定なのですが、
「本に関する記憶力はものすごいじゃない、エル。登場人物のことだって――――『予告殺人』に出てくる牧師の猫の名前も覚えていたわよね?(以下略)」
(page 68)
にゃはは!その猫の名前なら私も知ってますよ!ティグラト・ピレセル。これが古代アッシリア王たちの名前、とくにティグラト・ピレセル3世がすごい大王だったなんて世界史を知ったのは、猫の名前として覚えた後でした(苦笑)。しかし私が本の主人公エルと違うのは、私は人の名前は、本の登場人物であっても覚えるのが苦手だということ。ついでに顔を見分けるのも苦手です。だから映画やドラマを見ていても、誰が誰だかわからないことがしょっちゅう。猫の顔は一度みたらまず忘れないのに。それどころか、ちょっと見ただけで「この子の親はあの子よね?」なんて当てられるくらいなのに。
物語の進め方は、主人公のモノローグが多く、ナレーション(物語の外側、第三者視点からの説明)は少ないです。それだけに読者もずっと主人公と同化して思考過程を追っているような気分になれます。
そして、犯人は、・・・私はほぼ解決寸前まで気づけませんでした。あなたは、主人公達より早く、犯人を当てられますか?楽しみに読んで下さい。

※著作権法に配慮し、本の中見の画像にあえてボカシをいれる場合があります。ご了承ください。

『雪山書店と嘘つきな死体』
クリスティ書店の事件簿
- 著:アン・クレア Ann Claire
- 訳:谷泰子(たに やすこ)
- 出版社:東京創元社 創元推理文庫
- 発行:2024年
- NDC:933(英文学)長編推理小説
- ISBN:9784488234041
- 518ページ
- 原書:”Dead and Gondola” c2022
- 登場ニャン物:アガサ
- 登場動物:ポニー馬


