獣医療における『動物の保定』
著者:C.C.Sheldon,T.Sonsthagen,J.A.Topel。訳者:武部正美。
私が住んでいるところは里山の中で、野生動物の宝庫。ときにはこんな子を
私単独で救出する必要もあったりして(だって他の人に知られたら、即!殺せ!!猟師!!ってことになっちゃいますからね)、今まではこんな雄鹿でもなぜか無事に救出成功してきたけれど、単に運がよかっただけ、いつ私自身が大怪我するかわからないことは百も承知。
たまたまこの本には、犬猫だけでなく、牛や馬などの大型動物の保定法も載っていると知って、さっそく入手。
私が期待した保定法とはちょっと違っていた。残念。
というのも、大型家畜には縄や専門器具を使っての保定法しか掲載されていなかったのだ。
考えて見れば当然だろう。獣医師が怪我をしたら治療もできない。大型動物を相手に怪我をしないように治療しようとしたら、ガッチリ抑え込むしかないだろう。そもそも、英語の”Restraint”の意味は、辞書によれば「抑制(すること)、制止、抑制するもの、抑制力、拘束、束縛、監禁、拘束するもの」なのだから。そう、拘束。
それに対し、日本語の「保定」を辞書で調べると「動物を治療する際に、動かないようにおさえておくこと」。ずっとやさしい言葉になっていると思うのです。
野生動物相手に、縄でしばることはできるだけしたくないし、ましてや専門の拘束具なんて持っていないから、この本は私の目的には役立たなかった。とはいえ、犬猫ほか小動物の保定法も載っているし、中古で定価(12,000円+税)よりかなり安く手にれられたので、まあ良しとしよう。
さて、本の内容は、以下の通り。
Chapter 1 保定の原則
Chapter 2 結節の結び方
Chapter 3 猫の保定法
Chapter 4 犬の保定法
Chapter 5 牛の保定法
Chapter 6 馬の保定法
Chapter 7 羊の保定法
Chapter 8 山羊の保定法
Chapter 9 豚の保定法
Chapter 10 齧歯類、ウサギおよびフェレットの保定法
Chapter 11 cv堡塁の保定法
付録:各種動物の生理学データ
索引
結び方から始まるなんて、まるでアウトドア書。でも確かに、正しく結ぶことは重要だ。途中でほどけてはいけないし、処置後すぐにほどいてあげられないのはもっと悪い。
猫の保定については、保定袋も紹介されていた。私が今買おうかどうか迷っている保定袋。
愛護家には悪評高い(?)「鼻捻具」。鼻という敏感な場所をねじり上げられれば、ほとんどの動物は大人しくせざるを得ないだろうけど・・・ちょっと・・・かなり・・・なんだかなあ、な、器具ではあります・・・「最後の手段として」とは書いてありますけれどね。でも最後はこれでも使え!ってことでもあり。
少なくとも私はこんなもの、野生動物には使えません!
と、いろいろ文句も書いたが、動物の保定に関する本は少なく、まして大型家畜については、ほとんど目にした記憶がない。一般的な猫(や犬)飼い主には不要な本だと思うけれど、獣医療関係者はもちろん、たとえば動物園の飼育員を目指している人とか、畜産農に興味のある人には興味深いのではないだろうか。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
獣医療における『動物の保定』
- 著:C.C.Sheldon,T.Sonsthagen,J.A.Topel
- 訳:武部正美(たけべ まさみ)
- 出版社:文永堂出版株式会社
- 発行:2007年
- 初出:
- NDC:649(獣医学)
- ISBN:9784830032127
- 227ページ
- カラー
- 原書:”Animal Restraint for Veterinary Professionals”
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:-