保坂和志『明け方の猫』
猫になってしまった男。
ふと目覚めると、猫になっていた。
いや、正確には、夢の中で猫になっていた。これが夢の中の出来事だということも、はっきり自覚している。それにしてはあまりにリアルな感覚ではあるが。
彼はネコとして、街の中を歩きだす。
ニンゲンとは違うネコの五感。まず、すばらしい臭覚に驚く。それにもまして、鋭い聴覚。ネコの聴覚にくらべたら、ニンゲン時代の聴覚なんか、「音」を聞いていたと言えるのかどうかすらわからない。そして、なんと身が軽いことか。体を舐めるだけで得られる恍惚感。ひとつひとつが新鮮な驚き。
ネコの目でみた世界は、まったく別の世界の世界だった。彼は、冷静に、淡々と、ネコとして歩いていく。
単行本90ページほどの小説だ。特に事件は起こりらない。ニンゲンの頭を残した男が、ネコとして見たり感じたりする世界が描かれている。
(2002.7.18)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『明け方の猫』
- 著:保坂和志 (ほさか かずし)
- 出版社:講談社
- 発行:2001年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:4122044855
- 171ページ
- 登場ニャン物:(無名)、ミィ
- 登場動物:-
目次(抜粋)
- 明け方の猫
- 揺籃
- あとがき