一条理希『ねこだらけ物語』

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一条理希『ねこだらけ物語』

コミカルな中にも悲しさ。

15年前、「災厄」が起きた。
その「災厄」で地上の生き物の多くが死に、さらに、60億いた人間のほとんどが死んだ。生き残ったのはわずか2,3億。

幸い、海の中は無事だった。
地上の作物が採れなくなった今、生き残った人や動物たちは、海に食物を頼るしかない。人はもちろん、猫たちも。
ところが肝心の魚さえ少なくなってきて・・・

という悲惨な状況の小説であるが。

ま、ストーリーも文章も挿絵もまるで少女マンガ風なので、暗さはない。
よく考えればかなり悲惨な状況のはずなのだが、全体的に見ればいかにも現代風で、明るくて幼く、ふわっとあたたかい。

ねこの「しま」君が最高だ。
強くて賢くて、果敢で、限りなく優しくて、しかも甘えん坊。
しぐさも鳴き声もとっても可愛いのに、人間をはるかにしのぐ勇気の持ち主で、ねこたちや人々を救う。
ところがしま自身には人を救っているなんて意識はさらさらない。
「たまたま」「そこにいたから」「にゃんだろう?」で、人を救ってしまう。
その自然さ無邪気さがまたねこらしくて良い。

気楽に読める小説。
著者はもちろん、猫と暮らしているそうだ。

(2006.10.1.)

一条理希『ねこだらけ物語』

一条理希『ねこだらけ物語』

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

『ねこだらけ物語』

  • 著:一条理希(いちじょう りき)
  • 絵:椋本夏夜(くらもと かや)
  • 出版社: スクウェア・エニックス
  • 発行: 2004年
  • NDC : 913.6(日本文学)
  • ISBN : 4757511175 9784757511170
  • 317ページ
  • 登場ニャン物 : しま、タマ、ガア、キャンディ
  • 登場動物 : -

著者について

一条理希(いちじょう りき)

1994年、『パラノイア7』で第3回集英社ファンタジーロマン大賞佳作入選。同年同作でデビュー。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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