鴨居羊子『のら猫トラトラ』

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』

 

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』収容。

野良猫のトラトラ。少しピンボケの虎猫。かなりドジ。女の子に一生懸命モーションをかけるが、うまくいかない。

タマ。毅然としたおばあちゃんの飼い猫。1代目の黒白タマが亡くなると、2代目白三毛ももタマと名づけられた。タマには妹分もいた。仲良くならんでひなたぼっこ。

グレイの猫、千代丸。電車にはねられて腰が立たない。しかしお菓子屋のおばさんがよく面倒を見ているので、その毛皮はビロードのように美しい。

靴屋のミー。いかにも貧しい家のドラ息子で、顔はいつも靴墨で汚れている。けれど一家にとっては大事な存在。著者もこのミーを誰より愛している。

アランは、オフィスの猫。著者は新聞社を辞めて、ものを創る仕事をしたいと、下着会社を始めた。日本で最初にカラフルな下着を創った会社だ。その仕事机の上で、アランは著者の仕事ぶりを観察する。著者もアランを観察する。そして

アランの縞柄をみながら、そのころはよくダンダラ縞のアンダーウェアーを作った。そして縞シャツを着た私は、おそろいのアランを抱いては遊んだ。
page382

著者が初めて買ったカメラは中古の「ライカM3」だった。七万円という金額は、当時の給料二ヶ月分という高級品。存在感たっぷりで、しかし、昔のカメラは使いこなすにはそれなりの技術が必要で、著者には使い切れなかった・・・猫達を写すようになるまでは。

古き良き昭和時代、大阪の街角には沢山の猫達が歩いていた。飼い猫も野良猫も、捨て猫もボス猫も。動物好きな著者は、そんな猫達を愛した。見れば話しかけ、撫でて遊んだ。そして珠玉のエッセイ集にまとめた。それがこの『のら猫トラトラ』となった。今の時代に見れば、昭和白黒写真がかえって斬新だ。

明るくて、爽やかで、どこか懐かしい、一押しの1冊。

(2010.4.25.)

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『のら猫トラトラ』
『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』収容

  • 著:鴨居羊子(かもい ようこ)
  • 出版社:国書刊行会
  • 発行:2004年
  • NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
  • ISBN : 4336046093 9784336046093
  • 413ページ(うち、『のら猫トラトラ』293-403ページ)
  • 口絵、挿絵
  • 登場ニャン物:トラトラ、タマ、千代丸、ミー、ボス、アラン(アラン・ラッド)、他
  • 登場動物:犬

 

目次(抜粋)

  • のら犬のボケ
  • シッポのはえた天使たち
  • のら猫トラトラ
  • 鴨井洋子の愛の形 熊井明子
  • 解説 早川茉莉

 

著者について

鴨居羊子(かもい ようこ)

大阪府豊中市生まれ。新聞記者を経て「ものをつくる仕事をしたい」と独立、下着デザイナーとなる。戦後、白い質素な下着しかなかった時代に、今では当たり前のものになったカラフルなスリップ、セクシーなガーターベルトなどチャーミングな下着を売り出し、一躍時代の寵児となる。デザイナー、画家として活躍する傍ら、文筆活動にも才能を発揮し、軽妙にして幻想的、快活にして味わい深い、美しく魅力的なエッセイを数多く残している。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』

9

猫度

9.5/10

面白さ

8.5/10

猫好きさんへお勧め度

9.0/10

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