アリグザンダー『猫ねこネコの物語』
童話集。
ネコの町長
登場ニャン物=ペスキャットー
王国の果てにある小さな町に、地方局の長官がやってくる!町民は大騒ぎ。そんな奴がやってきたら、もう二度とこれまでのようなのんびりした暮らしはできないぞ!
猫のペスキャットーが知恵を出した。他に何も良い案は出なかったので、町民は猫の言う通りにすることにした。
ネコ王の娘
登場ニャン物=マーゴット
王女様には、ぜひとも結婚したい相手がいた。が、父の王様はそれを許さなかった。王様は猫嫌いでもあった。王女様は、こっそり忍び込んできた猫と協力し合って、作戦を練る。
《だめ》といったネコ
登場ニャン物=バラカ
その大王は、生まれてから一度も「だめ」という言葉を耳にしたことがなかった。大王は、くる日もくる日もたいくつであきあきしていたので、ゲームで紛らわせようとした。チェスの名人が呼ばれたが、全員大王に勝ちを譲ってしまう。最後に呼ばれたのは、チェスの名人ならぬ名猫だった。
ネコと黄金の卵
登場ニャン物=クイックセット
まずしい老婦人を助けようと、猫のクイックセットが巧妙な計略をめぐらす。
くつ屋とネコ
登場ニャン物=ヴァスカ
ある日突然、遺産を手にして、少しばかり金持ちになった靴屋(大金持ちとまではいかないけど)。さっそく、金持ちとしての生活を楽しもうとしたが、意に反して人々に馬鹿にされる。もっと賢くなろうと、師に選んだのが、ほかならぬ猫のヴァスカ。
絵かきの飼いネコ
登場ニャン物=ヒレスム
傲慢でうぬぼれた議員たちが、貧しい絵かきに肖像画を頼んだ結果・・・
ネコとヴァイオリンひき
登場ニャン物=猫たち
貧しいヴァイオリン弾きの若者。暖炉に薪は無く、食べるるものといったら、あとパンの耳とミルクが一杯だけ。そんな彼が頼まれた仕事とは、猫達の舞踏会でヴァイオリンを弾くこと。
見習いネコ
登場ニャン物=ウィットリング
貧しい老夫婦は、飼い猫のウィットリングが立派に成功して幸せになってほしかった。そのために、さまざまな職業の見習いにやられるが、なんせ猫だもの、どの職場でもたちまちクビ!そんなウィットリングがついに見つけた最高な職業とは?
訳者あとがき
田村隆一氏による短いあとがき(2ページ半)。
*****
童話ですが、猫が好きな方なら、大人でも十分に楽しめる内容です。
どの猫も、自由に人語をあやつって人と会話します。どの猫も、飼い主や恩人には忠実で、彼らを困難から救おうと必死です。どの猫も、人間より知恵者で、すばらしい働きをします。でありながら、どの子も「猫」なんです。その発想とか、行動とか、それから、どんな時でもユーモアを忘れない(けど本人、いえ、本猫はいたって生真面目)なところとか、いたるところに「猫」の部分が覗きます。
むしろ大人の方が楽しめるかもしれませんね。今の、平成時代も終わろうという日本人の子供たちが、この童話に書かれている内容を正確に理解できるかどうか、私にはわかりません。たとえば、ヨーロッパの昔の風習をしらなければ、なぜ「かつら」が出てくるのかわからないでしょう。
それから、翻訳も、童話にしてはけっこう難しいのです。「具眼の士よ」とか「法の獅子王よ」などの言い回しがポンポン出てきます。あの時代の雰囲気を伝えるには適格な言葉だとは思いますが。私にはこういう言葉遣いの方が、最近の女子高校生の言葉よりわかりやすいし耳にも心地よいんですけね。だから、大人の方が楽しめるかも、なんて発言にもつながるわけで。
挿絵もすてきです。エッチングのような白黒で、猫の毛の一本一本にいたるまで、丁寧に描かれています。猫のふわりとした毛皮がそのまま伝わってくるような絵です。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫ねこネコの物語』
- 著:ロイド・アリグザンダー Lloyd Alexander
- 訳:田村隆一
- 挿画:ラツロ・クビニー Laszlo Kubinyi
- 出版社:評論社
- 発行:1988年
- NDC:933(英文学)児童文学 アメリカ
- ISBN:4566011135 9784566011137
- 222ページ
- カラー、モノクロ、口絵、挿絵、イラスト(カット)
- 原書:”The Towncats and Other Tales” c1977
- 登場ニャン物:ペスキャットー,マーゴット,バラカ,クィックセット,ヴァスカ,ヒレスム,スターンブラウエ,ウィットリンク
- 登場動物:-
【推薦:きな様】
原題は「THE TOWNCATS AND OTHER TALES」なので、この愉快な邦題を考えたのは翻訳の田村さんですね。
さすがに猫好き。
猫嫌いの王様に結婚を反対されている王女様が、猫のマーゴットに教わった、ある作戦とは?・・・「ネコ王の娘」
生まれてから一度も「ダメ」という言葉を聞いたことが無い大王。その大王に「ダメ」と言ったねこ、バラカの運命や如何に?!・・・「だめといったネコ」
人のいいブッシェルビー夫婦は、大切なネコ ウィットリンクに仕事を覚えさせることにした。
可愛いい彼が 世の中へ出てちゃんと生きていけるように。
弟子入り先は「乳搾り」(ビロードの手袋のように柔らかい手をしているし、クリームもミルクも好きだから)、次が「機織り」(目はいいし、毛糸をつかまえる あの早さ)、それから「パン職人」(なぜだか分かりますよね?・笑)、どれも失敗した彼が 最後に見つけた「彼にいちばんふさわしい仕事」とは?・・・「見習いネコ」
クビニーの挿絵も素晴らしいです。
猫好き3人(絶対そうに違いない)による猫の本。機会があったら是非!
(2002.9.29)
*サイトリニューアル前にいただいておりましたコメントを、管理人が再投稿させていただきました。