柴田よしき『どろぼう猫』
短編集『猫と魚、あたしと恋』に収録されている短篇。
ある日、‘あたし’は子猫を拾った。
それとほぼ同じ時期に、同級生と再会する。
その同級生は、昔はひどく冴えない女だったのだが、10年ぶりにあってみると、驚くほど綺麗になっていた。
しかし、よく事情を聞くと、離婚してまともな就職口もなく、コンビニでのアルバイト生活だという。
それなら綺麗になったからといって‘あたし’が嫉妬するまでもない・・と、微妙な女心が動く。
拾った子猫はその同級生に押しつけ、子猫に会うという口実で頻繁な交際が始まったが・・・
この短編集の表紙裏書きにはこうある。
『不倫、万引き、覗き、睡眠障害・・・。日常を生きるために、普通に“壊れて”しまう“あたし”たちをストレートに描く九編』。
そう、ここに登場する女性達はいずれも少し“壊れて”いる。
ちょっとだけ、でも、その程度に“壊れた”女性なんて、現代日本にはいくらでもいるんじゃないの?
少し“壊れた”女達が、ごく普通の、常識人のような顔をして暮らしているのが、今の日本じゃないの?
特に若い女性には共感を得やすい本だと思います。
読みやすいし、どの話も面白い。
ちょっと残念なのは、収録された短編のうち、猫が出てくるのは、『どろぼう猫』だけということ。
せめてあともう一編猫が登場する話があれば私としてはもっと嬉しかったのですが。
柴田よしきさんは「猫探偵正太郎シリーズ」がとても可愛くてお勧めです。
猫好きさんは是非そちらをどうぞ。
(2004.11.19)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『どろぼう猫』
『猫と魚、あたしと恋』収録
- 著:柴田よしき(しばた よしき)
- 出版社:光文社文庫
- 発行:2004年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:4334737447 9784334727443
- 321+vページ(うち、『どろぼう猫』111-134ページ
- 登場ニャン物:チイ
- 登場動物:深海魚
目次(抜粋)
トム・ソーヤの夏
やすらぎの瞬間(とき)
深海魚
どろぼう猫
花のゆりかご
誰かに似た人
切り取られた笑顔
化粧
CHAIN LOVING
あとがき
解説 深澤真紀