ブラッドベリ『恐竜物語』
バタフライ効果とは?
「バタフライ効果」という言葉を初めて聞いたとき、私はとっさに、その語源というか由来はブラッドベリのあの短編だと思った。そしてその後何年もそう思いこんで疑わずにいた・・・つい数日前まで。
バタフライ効果とは、ごく些細な出来事が巡り回って地球の反対側の天候を左右することさえあり得る、というような現象を言う。たとえば、北京で1匹の蝶が羽ばたくと、わずかな空気の揺れが生じ、それがついにはニューヨークに嵐をもたらす、というようなたとえである。スピルバーグ映画『ジェラシック・パーク』で、カオス理論学者のマルコム博士(J.ゴールドブラム演)が説明してた理論、と言った方がわかりやすいかもしれない。
恐竜本を続けてアップしたので、この古典的名作もと引っ張り出して、ついでに「バタフライ効果とは」で検索してみたのである。そして驚いた。日本語版ウィキ、その他のサイト、ブラッドベリの名前が無いじゃん!
バタフライ効果の由来って、ブラッドベリじゃなかったの?
日本語サイトではなぜか良い説明にヒットしなかったけど、英語サイトで検索してみたら、たちまち出てきました。それも英語版Wikipediaに。なぁんだ。ブラッドベリファンの私としては、日本語ウィキにもちゃんと書いて欲しかったなあ、ブツブツ。
(英語Wikiによれば、バタフライ効果の概念を最初に唱えたのはJacques Hadamardで1890年、Pierre Duhemが本で紹介(1906年)。ブラッドベリがその考え方を取り入れた短編、”A Sound Of Thunder”を1952年に発表。その後、エドワード・ローレンツが1972年にアメリカ科学振興協会でおこなった講演で、一気に有名になった、ということらしい。)
前書きが長すぎてごめんなさい。
だけどこの本『恐竜物語』に収録されている話は、どれも短い話で、下手にコメントするとネタバレになりそうで・・・(汗)
なので、ごく簡単な感想を。
短編ですが、どれも傑作だと思います。面白いことは保証します。
恐竜のほかに、大きくなったら何になりたい?
Besides a Dinosaur, Watta Ya Wanna Be When You Grow Up? (1983)
大きくなったら恐竜になりたいと、真剣に願った男の子と、優しく見まもるおじいさんのファンタジーストーリー。
いかずちの音
A Sound Of Thunder (1952)
タイムトラベルSF。お金さえ払えば、過去に飛んで恐竜をハンティングすることさえ可能な世界となっていた。しかしそれには厳密なルールを守る必要があった。そのルールとは?
*この作品をベースに映画「 サウンド・オブ・サンダー 」が撮影されました。内容は大幅に追加・創作されたようですが。(2005年、アメリカ)
見よ、気のいい、気まぐれ恐竜たちを
Lo, the Dear, Draft Dinosaurs! (1983)
詩です。
恐竜たちがトウシューズをはいてバレエを踊っている挿絵がおもしろいというか、かわいいというか。
霧笛
The Fog Horn (1951)
幻想的で、美しく、もの悲しい、多分絶対にあり得ないだろうけれど、どこかに実話としてあったとしても不思議ではない、そんな短編。珠玉です。
もしもわたしが、恐竜は死んではいない、と言ったとしたら
What If I Said: The Dinosaur’s Not Dead? (1983)
詩です。
内容は、題名の通り(汗)。
ティラノサウルス・レックス
Tyrannosaurus Rex (1962)
恐竜アニメ撮影者と、映画製作会社社長とのあつれき。雇われる者と、雇う者。創る者と、それを利用して金儲けする者。いつの時代にもある話。
(2009.12.20.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『恐竜物語』
- 著:レイ・ブラッドベリ Ray Bradbury
- 訳:伊藤典夫(いとう のりお)
- 出版社:新潮社 新潮文庫
- 発行:1984年
- NDC:933(英文学)小説
- ISBN:4102211012 9784102211014
- 223ページ
- モノクロ挿絵、イラスト
- 原書:”Dinosaur Tales” c1953
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:恐竜、ほか