ペローとグリムの『長靴をはいた猫』

『長靴をはいた猫』

 

『長靴をはいた猫』として世界中に広く知られている話は、ヨーロッパに古くから伝えられた伝承童話を元としています。
似たような話がヨーロッパのあちこちに流布していたと考えられます。
それを、ドイツではグリム兄弟が、フランスではペローがまとめました。

内容については、言うまでもありませんね。
はい、どなたもご存じの、あの話です。
あまりに有名な、猫大活躍の話なので、これを無視するわけにはいかないなあ、と、リストに加えます。

グリム兄弟『靴はき猫』

金田鬼一訳
岩波文庫「完訳 グリム童話集〈一〉」収録
NDC:943  ドイツ  伝承文学
ISBN:9784003241318
登場ニャン物=無名

グリム兄弟『長靴をはいた猫』

『グリム童話集』は全5巻。『長靴をはいた猫』は1巻目に収録されている

 

岩波文庫では第1巻の36番目、328-338ページに出て来ます。
猫は当たり前のように2本足で立って歩き、人間と会話します。
そして、魔法大王をまんまとだまして土地や城を乗っ取り、飼い主の貧しい粉ひき男を伯爵に仕立て、お姫様と結婚させます。

この話の末尾の【註】に、なかなか興味深いことが書いてありますので、少し長くなりますが、引用させていただきます。
訳者はまず、この話は「靴をはいた牡猫」というのが原題の直訳であること、この猫は「おす」でなければならないと強調します。

・・・この主人公は、威風堂々たる猫なのですから、どうしても大きなおすの猫でなければならないのです。ですから、英語版などで、「靴をはいたにゃあにゃあ」というようなことをいっているのはおもしろくないと思います。ドイツ語では、いわば、めすの猫で猫族を代表させることになっており、おすをあらわすにはまるで別の語を用います。
page338

(管理人注:ドイツ語で雄猫は Kater、雌猫および猫一般をさす言葉は Katze、英語で猫一般は cat、雄猫は tomcat。Pussという単語は、雌雄関係なく、猫ちゃんとかニャンコというニュアンス。この話が英語では一般的に “Puss in boots” と訳されているのは、私の勝手な想像では、その方が “Tomccat in boots” より韻を踏んで語呂が良いからじゃないかと(あくまで私見です)。)

オス・メスの違い以上に興味深い資料が、以下の文章。

「靴はき猫」は、十七世紀のフランス作家ペローの童話集に収められているものが有名で、この理由から『グリム童話集』原本第二版ではこの話がけずられてしまい、それから後これはペローの童話ということになっているようです。けれども、この童話は、十五世紀の末葉から十六世紀の半ば頃まで生存していたらしいイタリアの作家ストラパローラの『浮かれ十三夜』(一五五〇-一五五四年)に載っているのが不完全ながら一番古く、つぎには、おそらくこれとは関係なしに、バシーレ(一五七五年頃―一六三?年)の『五月物語』(一六三四―一六三六年)に採録され、それから、フランスではペローの手にかかり、ドイツではティークの戯曲となり、また世界各国にひろがっているもので、主人公が猫以外の動物(狐・犬・鶏・猿その他)になってはいても、源流はイタリア古伝と考えられているらしいのです。
page338

とてもすっきり来る説明だと思います。

岩波文庫の『グリム童話集』は全五巻、総計248話(断片・遺稿含む)もあります。
けれども、ほとんどの話は【註】無し、こんな丁寧な【註】が付されている話はそう多くはありません。
それだけ、長靴をはいた猫の話が全世界的に愛されているということなのでしょう。

グリム兄弟『長靴をはいた猫』

私が持っているのは、古い岩波文庫。茶変したパラフィン紙がいかにいかにも古そうで笑えますね。

ペロー『ねこ先生 または 長靴をはいた猫』。

新倉朗子訳
岩波文庫「完訳 ペロー童話集」収録
NDC=953  フランス  伝承文学
ISBN:9784003251317
登場ニャン物=無名

ペロー童話集

『ペロー童話集』岩波文庫の古い版です。

 

岩波文庫、本文194-220ページ、プラス、「教訓」「もう一つの教訓」どちらも詩のような形で201-202ページ。

内容は、グリム兄弟のとほぼ同じ。違っているのは、粉ひき男に「カラバ侯爵」という名前がついていることと、だます相手が魔法使いではなく「人食い鬼」と表記されていることくらいです。

グリム兄弟の方が、詳しいけれどゴツゴツした感じで、それはつまり資料集めに重点をおいた編集だから、という印象をうけるのに対し、ペローの方は「ものがたり」としてスッキリまとめられている感じがします(これも、あくまで管理人の私見ですけれども)。

*****

で。
どちらの話にもいえることで、どうでもよい事を。

「王様」は「侯爵」を名乗る人物を知らなかったし、その「侯爵」のものだと主張された土地がもとは魔法使い/鬼のものだったことも知りませんでした。
しかも、猫の足で行き来できるほど近くに、この王様と魔法使い/鬼は住んでいたのです。
・・・おいおい、そんなウカツな王様で大丈夫なのかよ?自分の王国を全然、把握・管理できてないってことじゃん!
と、つい、突っ込みたくなりませんか?(笑)。

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 


岩波文庫『完訳 グリム童話集〈一〉』
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岩波文庫『完訳 ペロー童話集』
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『長靴をはいた猫』

8.4

猫度

8.5/10

面白さ

7.5/10

猫活躍度

9.5/10

猫好きさんへお勧め度

8.0/10

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