光吉夏弥訳編『ネコ猫ねこ 世界中のネコの昔ばなし』

光吉夏弥訳編『ネコ猫ねこ』

 

世界中から、猫の民話・伝説を集めた本。

まず最初に、掲示板にいただいた詳細な紹介を。

【推薦:きな様】
題名のごとく、猫が出てくる昔話を集めた一冊。なんと五十話収録されています。日本からは二話。ひとつは小泉八雲の「猫の絵を描いた男の子」。

もうひとつはアンドリュー・ラング再話による「ネコの駆け落ち」。これ、不思議な・・というか、どう考えても日本的な昔話じゃないんです。
あるところに「ゴン」というキレイな雄猫と、「コマ」というかわいい雌猫がおりました。ふたりはそれぞれの家で大変可愛がられていたのですが、「ある春の宵、ゴンとコマは夜歩きに出て、桜の木の下で出会い、たちまちお互いに好きになってしまいました」。なんとかいっしょに暮したい2匹はお互いの飼主を説得しますが、大切な猫を手放すはずもなく・・・
思いつめた2匹は駆け落ちします。

疲れきってある御殿の広い庭にたどりついたところで、2匹は大きな犬に襲われます。悲鳴を上げて松の木に駆け上るコマ。コマを守るため、犬に立ち向かうゴン。しかし勝ち目はなく、あわやというところで庭番に助けられます。が、あまりにきれいな猫だったので、そのまま御殿のお姫様のもとに。
完全室内飼いになったゴンは、いつかコマに再び巡り会える日を待つしかなくなります。

このお姫様にはひとつ悩みが。庭に住んでいる大ヘビがお姫様に懸想していたのです。ある日ついにお部屋に這いこんできたヘビをゴンは退治します。ますます大切に可愛がられるゴン。
何ヶ月か過ぎて、ゴンが御殿の門の屋根の上からおもてを眺めていると、大きな猫にいじめられている小さな猫を見つけます。もちろんゴンはすぐさま駆けつけ、その大猫に体当たりして追い払い、小さな猫を慰めようと振り向きますと・・・おお!「なんとそれは片時も忘れたことのない恋しい恋しいコマではありませんか」。

2匹の話を聞いたお姫様は、もらい泣きをしながら約束します。
「もう決してふたりを離れ離れにしないから」と。
やがてお姫様は結婚し、迎えたお婿様にまっさきに話したのは、このゴンとコマのことでした。するとお婿様も感心して「たとえどんなことがあろうと、このネコたちは手放さない」と。

結びの文はこうです。
「その後、ゴンとコマにはたくさんの子どもが出来、お姫様にも次々にお子様が出来て、子どもたち同士、広い芝生の庭で、いつも元気に遊びまわりました。」

猫の昔話はずい分読んできましたが、ここまでラリホーでハッピーなのは本当に珍しいです。猫好きの匂いがぷんぷんします(笑)。どうみても吉原の太夫にしか見えない「お姫様」の挿絵(H・J・フォード)もあわせて、機会がありましたら是非ご覧になってみてください。
(2003.3.5)

光吉夏弥訳編『ネコ猫ねこ』

光吉夏弥訳編『ネコ猫ねこ』

全部で50話。ほとんどが数ページの短い話です。最終章の「名高い猫たち」の5話は、少し長いのが多いのですが、どれも30ページ以内です。

上できなさんは「日本の話は2話」と書いていますけれど、厳密には3話です。「10.ネコはなぜ十二支にはいれなかったか?」という、2ページの短いものもあります。猫好きな日本人ならだれでも知っているだろう伝説ですね。

私が面白いと思ったのが、「20.ラマ寺の黄色いネコ(チベット)」という話。猫の首に鈴をつける、という課題は、イソップ寓話で有名ですが、イソップではどのネズミも付けられないのに対し、このチベットの話では、まんまとつけてしまいます。チベットらしく、猫が僧侶のふりをしているのも興味深いです。

「48.ディック・ウィティントンと猫(イギリス)」も超有名な猫話ですよね。この話の好まれるところは、ディックの出世もさることながら(貧しい孤児の少年がロンドン市長に出世)、登場する人物に正直者が多いことも理由の一つだと、私は思うのです。だってそうでしょう。多くの話では、大人の商人や船長が、貧しい子供にたいして、あんなに公正に行動することはありません。たいてい、だましてお金を巻き取ってしまいます。なのに、この話では大人たちは、大金の由来はディックの猫であることを正直に話し、全額をディックに渡してしまいます。とてもすがすがしい話だと思います。

大き目の字で、漢字にはフリガナ、小学生の高学年から読めると思います。でも内容的には大人も十分堪能できる本です。挿絵もどれも古典的な西洋風で、大人の鑑賞に堪えるものばかりです。子供だましのマンガチックな挿絵ではありません。猫好きな12歳~102歳まで、楽しめる本だと思います。

光吉夏弥訳編『ネコ猫ねこ』

光吉夏弥訳編『ネコ猫ねこ』

光吉夏弥訳編『ネコ猫ねこ』

光吉夏弥訳編『ネコ猫ねこ』

光吉夏弥訳編『ネコ猫ねこ』

光吉夏弥訳編『ネコ猫ねこ』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『ネコ猫ねこ』
世界中のネコの昔ばなし

  • 訳編:光吉夏弥(みつよし なつや)
  • 出版社:(株)平凡社
  • 発行:1989年
  • NDC:388(伝説、民話)
  • ISBN:4582542166 9784582542165
  • 357ページ
  • モノクロ
  • 登場ニャン物:たくさんの猫たち、ライオン、トラ、ヒョウ
  • 登場動物:ネズミ、イヌ、ほか他種多数

 


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光吉夏弥訳編『ネコ猫ねこ』

8.2

猫度

9.5/10

面白さ

7.0/10

猫好きさんへお勧め度

8.0/10

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