岡本綺堂『半七捕物帳』シリーズ

岡本綺堂『半七捕物帳』

 

全6巻68話、テレビで有名な時代小説。

半七捕物帳といえば、推理小説集として、また江戸情緒ゆたかな時代小説として、とても人気の高いシリーズだろう。全部で68編。大正6年1月からおよそ20年にわたって「文芸倶楽部」に発表された。

日本推理小説界の古典ともいうべき作品だが、なんのなんの、色あせるどころか今読んでも新鮮で面白い。最近の下手なミステリーより、ずっと楽しめるのだ。

ストーリーはいずれも短編で、構成も犯罪内容も単純と言って良く、犯人はたちまち見つかってあっさり白状してしまうのだが、にもかかわらず、この面白さは何だろう。

人間心理のあり方をずばっと単純にまっぷたつに切ったような、その歯切れの良さと考察の鋭さ、それがテンポの良い江戸囃子にのってすいすいと江戸の町を駆け抜けていく、そんな小気味の良さを感じるのである。

今の時代感覚からいえば、ろくな証拠もないまま犯人と決めつけてしょっ引いたり、片っ端から引き廻しの上磔刑に処されたり、その一方でお家の恥になるからと犯罪を見逃したり、などなど、かなりむちゃくちゃなのだが、そこは時代の流れというもの、その辺は目をつむって読書を楽しむことに専念しよう。

それにしても、一昔前の捜査は本当にいいかげんで、刑罰は本当に厳しかった。今の時代に産まれたことに感謝。

 さて、半七捕物帳で猫が登場するのは以下の5編だけである。

他に狐、蛇、川獺、鷹等、動物が出てくる作品は多いが、いずれも脇役にすぎず、それも化けるとか祟るとか、迷信話のついでに語られるだけというのがほとんどである。

それらのうち、動物ものの中では、敵討ち(?)をする鶏(「大森の鶏」半七捕物帳四収容)の話が一番面白いと思う。これは化け鶏ではなく、生きた普通の鶏が出てくる。

岡本綺堂『半七捕物帳』

岡本綺堂『半七捕物帳』

「猫騒動」

(「半七捕物帳一」収容) 光文社文庫 2001年発行  ISDN 4334732291 9784334732295

猫が重要な役を担っているとはいうものの、猫の話ではない。
猫を多頭飼いしたおばあさん(といっても今の年齢なら中年と呼ばれる歳)と、その孝行息子に降りかかった災難の話。
猫好きとしては頭に来るような展開だが、ストーリーとしては迫力があって面白い。昔の化け猫騒動にも通じる内容である。

「三河万歳」「槍突き」

(「半七捕物帳二」収容) 光文社文庫 2001年発行  ISDN 4334732305 9784334732301

「三河万歳」では、猫好きにはちょっと残酷すぎる話が出てくる。
踊る芸を覚えさせるために猫を熱した銅板の上に置くという部分で、、昔の日本人はホントひどいことをした。
はじめてこの話を聞く人はぎょっとするだろう、が、実際にやっていたことらしく、他の文献にも同様の話は出てくる。
ほんの数行の説明だから、ヤダヤダと読み飛ばしてしまえばよいようだが、それだけでなく、少し不具合に産まれた赤ん坊を鬼っ児と見せ物に売り飛ばす話などもからんできて、・・・しかし昔はこんなこと、ごく普通にあったんだろうなあ、日本だけでなく、世界中で・・・
皆様、平和な日本を守りましょう!基本的人権のみならず基本的猫権および生き物すべての権利を守りましょう!って気分になっちゃいますね。

「槍突き」は、猫はほんの端役の端役。
人間の身代わりに猫の死体が置いてあったというだけですから安心して読んでください(猫の死体という言葉すら我慢できないほどの猫好きさんをのぞいて)。

「河豚太鼓」

(「半七捕物帳五」収容)光文社文庫  2001年発行  ISDN 4334732453 9784334732455

猫が出てくる、というほどの話ではなく、ただ、屋根の上の猫が鳴いたのでふと見上げたら解決のヒントを得た、というだけの登場。

「薄雲の碁盤」

(「半七捕物帳六」収容)光文社文庫  2001年発行  ISDN 4334732461 9784334732462

猫に詳しい人なら、薄雲という名前を聞いただけで、思い当たるかも知れない。

薄雲は美しい花魁で猫を可愛がっていた。
猫も薄雲によくなつきどこへでもついて歩く。
風呂にまで一緒に入ろうとするので、いくらなんでもおかしい、さては魔性の猫が薄雲に魅入ったのかと気味悪く思った主人が猫の首を切り落とすと、首は飛んでいって隠れていた蛇を食い殺した。
猫が薄雲を守ろうとしていたと言うことが分かり、今更悔やんでも遅く、厚く弔ってやった、という話である。

作品では、まずその浮き雲の挿話を紹介して、それからその曰く付きの「薄雲の碁盤」や相撲取りなどの話に進む。本題にはいってからは猫は出てこない。

(2005.10.31.)

岡本綺堂『半七捕物帳』

岡本綺堂『半七捕物帳』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『半七捕物帳』シリーズ
全6巻68話

  • 著:岡本綺堂 (おかもと きどう)
  • 出版社:光文社文庫 
  • 発行:2001年
  • NDC:913.6(日本文学)小説
  • 登場ニャン物:-
  • 登場動物:-

 

著者について

岡本綺堂(おかもと きどう)

1872-1939年。推理、怪談小説のほか、新歌舞伎運動の代表的な劇作家としても有名。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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岡本綺堂『半七捕物帳』

3.7

猫度

1.5/10

面白さ

8.0/10

猫好きさんへお勧め度

1.5/10

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