D・B・オルセン『黒猫は殺人を見ていた』

D・B・オルセン『黒猫は殺人を見ていた』

 

〈おばあさん探偵レイチェル〉シリーズ。

ミス・レイチェル・マードックは、70歳の老嬢。姉のジェニファーと、二人の父が建てた古い家に住んでいる。姉妹には、もうひとりの姉と兄もいたが、すでに亡くなっている。

長姉アガサだけは、ほかのきょうだいたちと違って投資術に長け、父のささやかな遺産を大きく増やしたが、同時に懐疑心も大きく増やしてしまったらしい。彼女が死んだとき、遺言書に指定された唯一の相続人は、愛猫のサマンサだった。

とはいえ、猫の寿命は人より短い。長姉もそれを忘れるほどボケてはいなかった。

「・・・そこで姉の遺言書には付記があり、猫が正常な理由で死んだ場合には、遺産は姉のジェニファーとわたしとわたしたちの兄の幼女で、亡兄のただひとりの遺産相続人であるリリー・スティックルマンの三人で分けることとあったんです。猫が死ぬ前にわたしたち三人のうちの誰かが死ぬようなことがあれば、その人間の分け前は誰にしろわれわれの相続人にいくというというわけ。けれど猫が完全に正常とは言えない状態で死ねば―――その上、三人の公式登録した獣医による検屍が必要なんですが―――全財産は野良猫の家を建てるためにとっておかれることになるのよ」
page108

このような遺産相続は、えてして事件の火種となりやすい。はたして、ミス・レイチェルはある日、姪っ子のリリーから電話を受けた。かなり切羽詰まった様子。ミス・レイチェルは猫を連れて(彼女に一番なついているので)、遠路はるばるブレーカーズ・ビーチまで、姪に会いに行く。

ところが、リリーの悩みを聞き出す前にリリーは殺されてしまい、ミス・レイチェルまでも毒殺されそうになる。

ミス・レイチェルは小柄で、「古風で魅力的な絵のようにきれいな老婦人」ではあったが、実は大のミステリーファン。サスペンス映画は欠かさず鑑賞し、頭の回転も早い。見かけによらず大胆でもある。

彼女は、おびえて逃げ出すどころか、この怪奇な殺人事件を解決しようと活躍しはじめるのだった。最初は馬鹿にしていたメイヒュー警部補も、次第に彼女を信頼するようになる。

D・B・オルセン『黒猫は殺人を見ていた』

D・B・オルセン『黒猫は殺人を見ていた』

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いわゆる「猫ミステリーもの」の元祖みたいな小説です。1939年発表。

80年も前の作品とあって、捜査方法には古さを感じますが、ストーリーとしては今でも十分に通じる本格的ミステリーだと思います。テンポよく進んでいきますし、ユーモアもあります。ただ「著者は女性だし、探偵役は70歳の老婦人だし、鍵となるのは猫だし」なんて先入観で読んでしまうと、「意外と血みどろ?」でもあります。殺害方法にしても、拷問方法にしても、もう少し穏やかにやってくれていれば、全体のイメージももっと明るくなっただろうに、明るければシリーズの他の作品も和訳されたかも、と、日本人女性の私としては、少し残念ではあります。

まあでもどうもアメリカ人って、スプラッタがお好き?ハリウッド映画なんか、必要以上におどろおどろしい画像で満ち溢れていますよねえ(汗)。仕方ないか・・・

黒猫のサマンサが、事件解明の重要なキーの一つとなるミステリーです。とはいえ、サマンサは、猫としてごくふつうにそこにいるだけです。シャム猫ココ(ブラウン著)三毛猫ホームズ(赤川次郎著)のように、積極的に事件解明に活躍するような天才猫ではありません。登場場面もそれほど多くはありません。あえていえば仁木悦子『猫は知っていた』のような、猫の扱い方ではあります。

しかし、サマンサという猫がいたからこそ、関係者の悪しき欲望が動いたのですし、サマンサのある行動が、事件解明の大きなヒントのひとつとなったのでした。主役ではないが、重要な脇役です。

この作品は、猫目的ではなく、ミステリー目的で読んでください。心が敏感すぎる猫好き女子さんには、強くお勧めはできません(切り刻まれるのは人間です、猫は終始大切に扱われていますので、その点は大丈夫なんですけど)。

なお、D.V.Olsenは、ミステリー作家Dolores Hitchens(ドローレス・ヒッチェンズ)の別名。
老嬢探偵レイチェル・マードックのシリーズは全部で12作あるようですが、和訳されたのはこの作品だけのようです。全部のタイトルに「猫」がはいっているのに、和訳されていないとは残念です。
以下、Wikipedia(英語)よりタイトルのみ抜粋。

The Cat Saw Murder (Doubleday, 1939)
Alarm of Black Cat (Doubleday, 1942)
Catspaw for Murder (Doubleday, 1943); aka Cat’s Claw
The Cat Wears a Noose (Doubleday, 1944)
Cats Don’t Smile (Doubleday, 1945)
Cats Don’t Need Coffins (Doubleday, 1946)
Cats Have Tall Shadows (Ziff-Davis Publishing Company, 1948)
The Cat Wears a Mask (Doubleday, 1949)
Death Wears Cat’s Eyes (Doubleday, 1950)
Cat and Capricorn (Doubleday, 1951)
The Cat Walk (Doubleday, 1953)
Death Walks on Cat Feet (Doubleday, 1956)

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『黒猫は殺人を見ていた』
おばあさん探偵レイチェル・シリーズ

  • 著:D・B・オルセン D.B.Olsen
  • 訳:澄木柚(すみき ゆず)
  • 出版社:株式会社 早川書房
  • 発行:2003年
  • NDC:933(英文学)小説 アメリカ
  • ISBN:9784150017316 415001731x
  • 233ページ
  • 原書:”The Cat saw Murder”, c1939
  • 登場ニャン物:サマンサ
  • 登場動物:-

 

著者について

:D・B・オルセン  D.B.Olsen

1907-1973。アメリカのミステリー作家。Dolores Hitchensのペンネームが最も知られている。他に、Dolan Birkley や Noel Burkeと、いろいろペンネームを使い分けていた。本名のフルネームは、Julia Clara Catherine Maria Dolores Robins Norton Birk Olsen Hitchensと、長かったらしい。

(著者プロフィールはウィキペディア(英語)からの抜粋意訳です。)


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D・B・オルセン『黒猫は殺人を見ていた』

5.5

猫度

4.0/10

面白さ

6.5/10

猫好きさんへお勧め度

6.0/10

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