押川亮一『ペットフードの危ない話』

押川亮一『ペットフードの危ない話』

 

『新・ペットフードにご用心!』改定・改題。

1993年に前著「ペットフードにご用心!」が発行されて、12年が過ぎた。

この間にペット産業界は大きく変化した。
空前のペットブーム、獣医学の進歩、それにも増して、一般飼い主の知識向上。
犬猫達の寿命は延び、犬猫達にかける金額も人間の子供並みになってきた。
「プレミアムフード」や「ナチュラルフード」と呼ばれる高額フードを与えることが当たり前のように行われるようになった。

ではペットフードは安全になったかといえば、そんなことはないと、著者は言う。
今でもペットフードを規制する法律はないし、ペット達の疾患はいっこうに減る気配がない。
『今でもペットフードの製造工程その者が「闇の中」なのです。』

特に「ナチュラルフード」と呼ばれている一群に気をつけろと書いている。
どんな材料を使っているのか部外者には分からないし、表示する法律も規制する罰則も何もない。

また高額なフードは様々な効用を宣伝文句に歌っているものが多いけれど、誰のどのような研究の結果そのような効果があるとされているのか、どこの何を根拠としているのか、消費者はもちろん、メーカー側さえ分かっていないのではないかと書いている。

私も、確かにペットフード業界はまだまだ発展途上にあるのだろうとは思う。
金儲け第一の宣伝に踊らされてないように気をつけなければとは思う。

が、この著者自身も、今はペットフード製造に係わっているのである。
いまやメーカー側の人間なのだ。

そのためか、前著よりどうも歯切れが悪いというか、・・・攻撃の相手にされているのは海外のメーカーやあまり聞いたことのないメーカー。
一般消費者がもっと知りたいのは、誰でも知っているような大手メーカーの製品についてではないだろうか。

また全体的に調査が不十分なのか、仕事の合間に書かれたような印象があり、少し物足りなく感じられた。

たとえば、しばしば「自分がペットショップを開業した30年前にはこんな症状は無かった」とか「昔はこんな病気はなかった」と書いている。
このような書き方をすると、30歳以上の読者なら、つい「そういえば子供の頃は、犬猫は残飯で元気だった、やはり最近のペットフードが悪いのだ」と納得してしまうかもしれない。

が、30年前と今とでは人々の犬猫に対する態度や知識、獣医学の発展度が全然違う。

残念ながらこの著者の興味の中心は犬ばかりで、猫は眼中にないようだ。
私は犬についてはあまり知らないから論じることはできない。
しかし、少なくとも猫については、キャットフードのお陰で寿命が縮まった猫より延びた猫の方が多いのではないかと思っている。

私だって市販ペットフードを全面的に信用しているわけではない。
それどころか大いに疑問には思っている。
だからこそせっせとこういう本を買ったり、ペットフード工業会の資料を100ページ以上もダウンロード+プリントアウトしたりしているのだ。

しかしだからといって、昔のねこまんまの方が現在のキャットフードより優れていたとは思えない。
そしておそらく、30年前の猫は病気にならなかったのではなく、健康状態は今の猫達と大差なかったのではないかと思っている。

30年前なら、猫は外出自由猫の方が多かっただろう。
猫エイズという病気はまだ発見されず(古来から感染猫はいたらしいが、猫エイズ発見は1987年)、ワクチンを打つ人もなく、猫の寿命は今の半分以下だった。

(東京農工大学と日本愛玩動物協会の共同調査によれば、1990~91年に動物病院で死んだ猫の平均寿命はわずか5.1歳だったそうだ。この調査法では、有る程度以上大切にされていた飼い猫についてしかわからないから、野良猫や、飼い猫でも病院に連れて行ってもらえなかった猫達まで含めれば、平均寿命はこれよりさらに短くなるはずである。)

つまり昔は、慢性腎炎や猫エイズや口内炎その他に罹患する猫がいなかったのではなく、罹患する前に死んでしまったか、発症しても誰も気がつかなかったか、たとえ動物病院につれていかれても獣医さえ診断できなかった、などが多かったと思われるのである。
もし本当に30年前の猫がそんなに健康だったのなら、1990年頃の飼い猫たちの平均年齢が5.1歳なんてデータがでてくるはずがない。
それから、猫派の私としては、ひとつぜひ言わせていただきたい。

著者は不妊手術を強く否定しているが(「そもそもどんな考え方で健康なからだにメスを入れさせるのでしょうか?私にはまったく理解できません。」)、その次のページからはじまる次の章で、インブリード(近親交配)の害を述べている。
たとえば犬の股関節疾患が増えたのはインブリードのせいだと書いている。

私もつい最近、日本のラブラドル・リトリーバーの股関節疾患の発症率が47%という数字を見て仰天したばかりである(6月20日または21日放送のNHK「クローズアップ現代」正確な日付は忘れました、ごめんなさい)。

一般飼い主が不妊手術を行う理由の一つに、インブリード等の不適切交配を避けるという目的もある。
素人飼い主が誰も不妊手術せず、股関節疾患のラブ同士やダップルのダックスフント同士を気軽にどんどん交配させてしまったらどうなる?
苦しむのは動物たちではないか。
そうでなくとも日本では犬猫が過剰気味で年間44万頭も殺処分されているのだ(初版執筆当時)。
野良猫・捨て猫問題も非常に深刻だ。
地域猫運動なんかでは追いつけないくらいに深刻なのだ。
それなのに、これ以上生ませてどうしようというのか。
それこそ私にはまったく理解できない。

本全体の感想としては。
前著が良かっただけに、再び警鐘を鳴らすなら、もうすこしじっくりと調べてから書いて欲しかったというのが正直な感想である。
たとえば『「犬にタマネギは禁物!」の誤解』とわざわざ章をもうけてタマネギ無害論を書いているけれど、現に私の掲示板には、プランターのネギをかじって亡くなってしまった猫さんの書き込みがあった。
個体により、また体調により年齢により、ネギ類は確かに毒にもなるのである。
本を信じて愛猫にタマネギを食べさせ、もし死んでしまったらどう責任をとるのか。

無知な民衆をあおるだけの記事は週刊誌にまかせておけばよい。
次回はもっとガツンと調査して、もっと確固たる科学的裏付けの上で書いてください。
なんだかんだ言っても私は押川さんファン、すっごく期待しているんですから。

(2006.7.1)

押川亮一『ペットフードの危ない話』

押川亮一『ペットフードの危ない話』裏表紙

 

押川亮一『ペットフードの危ない話』

『新・ペットフードにご用心!』が文庫化で改題。知らずに両方買ってしまった(汗)

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『ペットフードの危ない話』
『新・ペットフードにご用心!』改定・改題

  • 著:押川亮一(おしかわ りょういち)
  • 出版社:宝島社
  • 発行:2008年
  • NDC: 645.6(畜産業・家畜各論・犬、猫)
  • ISBN:9784796667388
  • 187ページ
  • 白黒

 

目次(抜粋)

  • まえがき
  • 第1章 ナチュラルフードの危険な話
    • “プレミアムフード”が登場した本当の理由
    • ナチュラルブームの真実
    • その他
  • 第2章「疾患対応フード」の真実
    • 「アレルギー疾患対応フード」のイタチごっこ
    • 「泌尿器系疾患対応フード」に振り回される愛好家
    • その他
  • 第3章 ペットフードの選択眼をみがく
    • 良質なフードほど”便”の量が少ない!
    • フードの形状だけでも製品の”質”がわかる
    • その他
  • 第4章 ペットと幸せに暮らすための「食知識」
    • 「栄養素にこだわりすぎない」という知恵
    • これだけは知っておきたい「犬の栄養素」「猫の栄養素」
    • その他
  • 第5章 現代ペットの疾患事情
    • 危険な”下痢”の見極め方とは?
    • 耳のジクジクが全然治らない
    • その他
  • あとがき
  • 参考文献

 

著者について

押川亮一(おしかわ りょういち)

1947年生まれ。宮崎県出身。大学卒業後、金融機関に勤務。1974年に独立し、ペットショップ「ファミリーペット」を開業。母親の難病指定が引き金となり免疫療法を学ぶ。また、ペットの異常に疑問を感じ、生化学、自然療法、栄養学を学ぶ。1996年「マイティ・ウェーブ」を立ち上げ、現在にいたる。著書に『ペットフードにご用心!』『獣医さんにご用心!』『新・ペットフードにご用心!』(以上宝島社)、『愛犬がよろこぶワンワンごはん』(技術評論社)がある。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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押川亮一『ペットフードの危ない話』

6.1

猫度

2.0/10

情報度

8.0/10

お役立ち度

8.0/10

おすすめ度

6.5/10

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