坂本徹也『東洋医学がペットを救う』

東洋医学が動物たちにも効く。
『よい獣医さんはどこにいる』や『ペットの命を守る』などの著書がある坂本氏の本。
巻末をみると、33人の獣医さん、4人の人間のお医者さん、6人の専門家(ホメオパシーなどの)に取材していることがわかる。
坂本氏自身は獣医師ではないが、それだけにかえって幅広く、数多くの獣医師等に取材できるのかもしれない。
東洋医学といえば、まず針灸や漢方。
この本もまず針灸や漢方の話からはじまる。
動物たちにも針はよく効くという。
針はむしろアメリカなどでまず積極的に使われ出し、それが日本に逆輸入されている状況だそうだ。
と、その前に、そもそも「ホリスティック医療」とは何か。
「生体を全て調和の取れた状態にもどし、生体自身の治癒力で健康を取り戻させるよう導くというもの」がホリスティック医療だそうだ。
これに対して、西洋医学は「生体を徹底的に分析して診断・治療を行う」が、いわゆるマインドとかスピリットとかいうような精神的ななアプローチ、哲学が欠落しているという。
(ホリスティック医療は)表に出てきた症状をひとつひとつ当たるんじゃなくて、もっと深~いところを叩いちゃおうと。だから使う手段は何でもいいことになるわけですね。これに対して西洋医学は、表面に出てきたものを叩いていく。だから西洋医学の弱点って、自分では病気だと思っても血液検査とかをして何かデータに出てこなきゃ病気ということにはならないことなんです。そこまで悪くないと。ただ調子悪いとか言っても『疲れでしょう』ということになる。もっと悪くならなきゃわかんない。だけどそれじゃ遅い。そうなる前に正常にもどそうというのが東洋医学であり、ホリスティックなんですね。
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そう聞くと、なるほどもっともだと思う。
人間よりはるかに体の小さい猫に、化学薬品はできるだけ使いたくない。
なるべく早い時期に、できればまだ病気とはいえないくらに早い時期に、その子の持っている自然な治癒力で病気(や怪我)を治すことができれば、それが一番であることは言われるまでもない。
たとえば、針。
針を刺すと聞くと痛そうに思うけど、考えてみれば注射だって針だ。
同じ刺すなら、下手に強い薬品を体にいれるより、針を刺しただけで治る方がずっと良いに決まっている。
しかも、多くの動物は針治療の最中に「気持ちが良くて寝てしまう」のだそうだ。
これは意外だった。
(はい、私自身は針治療の経験がまったくありません。)
それから、アロマテラピー。
この本ではとくにティートリーというユーカリ科のオイルとそれを元にした「メディカルA」というオイルについて多く語られている。
ティートリーの効能は「抗菌作用。殺菌作用。免疫力を高める。水疱性の皮膚トラブルの改善」。
このティートリー、もしこの本に書かれている通りにすべての動物に効くなら、ものすごい魔法薬だ。
これさえあれば、他の薬なんか要らないくらいだ。
もちろん、人間にも効く。(注)
ただ、私がその後調べたところ、ティートリーは「犬や馬には良いが猫には劇薬となる場合がある」そうだ。死亡例もあるらしい。
この本を信じて愛猫にティートリーを素人療法しないように。
坂本氏の本はとてもよいのだけど、いつも犬だけしか関心がおありではないのに、常に「ペット」と表現されるので、犬にしか当てはまらないことがペット全般に当てはまるように誤解されかねず、その一点だけが、いつも不満な私である。
さて、次にホメオパシーとフラワーエッセンスの話。
そして、気功。その他。
ホメオパシーまではともかく、気功となると、もう私にはわからないというのが正直な感想だ。
だって遠隔治療で、気を送るだけで治療できるというのは・・・それが可能なら、たとえば世界的に人気のある人が死にそうなとき、世界中の何千何万という人が真剣に「治りますように」と祈る場合があるだろう。
たった1人の気功師が気を送るだけで病気が治るなら、そういう何千何万という力が集まれば、不死身な人が出てきても不思議ではない論理だと思うのだが、実際にはそうではない。
というか、・・・
気功師って、特殊な才能や訓練はされているのかもしれないけれど、それにしても、いくらですといってお金をもらって気を送るわけで、そんな「気」が、純粋にその子を治したいという飼い主の必死な「気」に勝るというのが、私としてはなんとなく「気に入らない」わけで・・・
ま、私は「気功」については知識ゼロですから、上の文章はそういう人間の書いたこととして読んでください。
私が坂本氏が偉いと思うところは、科学的な根拠がある針灸等のみならず、気功や「動物と会話する」というような治療法なども、まじめに取材し書いていることである。
この本が探し求めているのは、ひたすら、どうすれば動物たちの負担を最小限にして、かつ最大限の治療効果をだせるか、ということだと思う。
そのためには、西洋医学はもちろん、針や漢方やアロマセラピーやその他その他、どんな治療法に対しても偏見や思いこみを持たず、その時々に応じて最適な方法をとりたい。
その選択幅を示したかったのだと思う。
あとひとつ、忘れてはいけないと思うのは
「動物の病気の大元となっている意識が、飼い主のそれとイコールであるケースが多いということ」
「2人とも同じように考えて、同じようなパターンで行動して、同じように病気をするわけです。」
page 192
そうなんですよね。
大切な愛猫の健康を守りたければ、何よりも、まず自分が肉体的にも精神的にも健康であること。
う~~ 責任重い(汗)。
(2006.8.30)

坂本徹也『東洋医学がペットを救う』

坂本徹也『東洋医学がペットを救う』
(注)
「ペット専用オイル メディカルA」を、私自身の体で実際に試してみました。
【皮膚炎、蕁麻疹】
効いた実感は無し。
【裂傷(鋭い刃物や、猫の鋭い爪によるもの)】
・傷の治りがたしかに早まったと思う。たとえば自己判断全治10日くらいかと思ったのが、6-7日で傷がふさがった。
・ただし、急いで修復しました、みたいな治り方。傷跡が赤い線でくっきり。その後、ゆっくり線が消えていった。
・多分、ふつうに治したなら、10日くらいかけて、傷跡も治るとほぼ同時に消えたのではないか。メディカルAを使うと、早く傷口はふさがるが、傷跡がすっかり消えるのはむしろ時間がかかる。
・傷が治るときは、ほとんどの場合、ある種のむずがゆさを感じるが、メディカルAをつけると、そのむずがゆさが無いか、ごく少ない。
【ある程度の面積の浅い擦り傷】
効いた実感はとくに無し。
※メディカルAは、ペット専用オイルとして開発された商品です。私は実験の為に自分の体で試してみましたが、これをご覧の人間の皆様にも使用をお勧めしているわけではありません。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『東洋医学がペットを救う』
- 著:坂本徹也 (さかもと てつや)
- 出版社:WAVE出版
- 発行:2001年
- NDC:645.6(家畜各論・犬、猫)
- ISBN:4872900995
- 286ページ
目次(抜粋)
- はじめに―死の淵から生還したベル
- 1 東洋医学が獣医療を変える
- 針灸が獣医療の大きな武器になる
- 東洋医学を使いこなす
- 2 効くぞ!自然療法
- 自然療法アロマテラピーに注目
- アロマテラピーを超える特効薬
- 3 未知なる治療法でペットを救う人びと
- ホメオパシーとフラワーエッセンス
- 気功と波動とエネルギー
- おわりに―獣医療の進歩のために