マーティン『食べさせてはいけない!』
副題『ペットフードの恐ろしい話』。
1990年1月。場所はカナダ。
著者は愛犬のルーイーとチャーリーに市販のドッグフードを与えた。
2日前に購入したばかりのフードだ。
すると、犬たちは激しく吐き、水をガブガブ飲んだ。
フードに疑問を感じた著者はまずフード会社に問い合わせる。
フード会社は、調べるから残ったフード‘全部を’送るように、と言ってきた。
用心深い著者は、残ったフードの全部ではなく、半分だけを送った。
1ヶ月後、フード会社から調査結果を知らせてきた。
「給餌実験の結果問題なし」。
著者は全然納得できない。
残してあったフードの一部を、オンタリオ州農務食品局の家畜衛生研究所に送り分析を頼む。
しかし州食品局は、やれ「装置が壊れている」だの「職員が休暇中」だのというばかりで何ヶ月待っても動いてくれない。
しびれをきらして、最後に残ったスプーン1杯分のフードを、ある民間の研究所に送付した。
2週間後には含有成分の詳細な検査結果が届いた。
中でも亜鉛の量は驚くべきものだった。
1120ppmもはいっていたのである。
犬に必要な亜鉛量は30~50ppmだというのに。
この事件で、ペットフード業界にも、それを監督すべき(と著者が考えていた)州政府にも疑問を覚えた著者は、独力で調査を開始する。
知れば知るほど、ペットフード業界はひどいところだった。
ペットフードの材料に混入されているのは、「スーパーの棚から回収された腐った肉や、レストランから出る油や生ゴミ、いわゆる『4D』(死んだdead、病気のdiseased、死にかけたdying、障害のあるdisabled)といわれる動物たち、路上轢死動物、動物園の動物たち」、それから、著者が特に嫌悪感を示したのは、安楽死させられたペットたち・・・仲間の犬や猫たち・・・だった!!
しかも、「カナダでは、たとえペットフードによってたくさんのペットが死んだとしても、政府は商品棚からペットフードを撤去するよう命じることはできません。つまり規制がないのです。」
規制もモラルも何もないペットフード業界の実態は、それこそ、とても信じられないほどえげつなく、何でもありの世界だったのである。
そんなのはカナダの話、と、笑わないでほしい。
我が日本にも規制はない。
日本では、「ペットフード工業会」が「ペットフード公正取引協議会」をつくり「ペットフードの表示に関する公正競争規約・施行規則」というガイドラインを決めている。
が、これは、国の定めた法律ではない。
協議会に加入しているペットフード事業者間の自主規制に過ぎないのである。
まして 加入していない業者なら、何をどう使おうとそれこそ自由なのである。
その上、少々なさけないことに、協議会が採用している栄養基準とはアメリカのAAFCO(The Association of American Feed Control Officials)の基準をそっくり借用したものなのだ。
そしてご丁寧にも総合栄養食の表示に際して『「AAFCO認定」「AAFCO承認」「AAFCO合格」等の表示は、不当表示となり表示できません。』という決まりまであったりする。
日本のペットフードの方がもっと悲惨かもしれない?
この本の著者は幾分センセーショナルに書きすぎていると思う人がいるかもしれない。
が、まるっきりのデタラメとも思えない。
愛する愛猫のフードの中に、実際には何が混ざっているのかしれたものじゃない、というのが本当のところだ。
愛猫を守りたいなら、我々猫同居人の一人一人が、もっとしっかりとした知識を持ち、もっと手間暇をかける覚悟をしないと無理らしい。
私ももっと頑張らなくては。
(2006.8.15)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『食べさせてはいけない!』
ペットフードの恐ろしい話
- 著:アン・N.マーティン Ann N. Martin
- 訳:北垣憲仁訳 (きたがき けんじ)
- 出版社:白揚社
- 発行:2003年
- NDC:645.6(家畜各論・犬、猫)
- ISBN:4826990375 9784826990370
- 252ページ
- 原書:”Food Pets Die For:Shocking Facts about Pet Food” c1997
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:-
目次(抜粋)
推薦の言葉――マイケル・W・フォックス
はじめに
1 ペットフード裁判
2 ペットフードには死んだペットも入っている
3 狂牛病とペットの恐ろしい関係
4 「肉」「炭水化物」「繊維」の正体―ラベルを読み解く
5 ペットフードの隠れた危険―薬物、重金属、農薬、病原体
6 ペットフード規制のお寒い現状
7 ペットの健康を保つ簡単レシピと役立つヒント
8 消費者として何ができるか
訳者あとがき
註