坂本徹也『よい獣医さんはどこにいる』

坂本徹也『よい獣医さんはどこにいる』

獣医師の世界には問題が山積み。

私が獣医学科が農学部の中にあると知ったのは大学受験の時だった。私は文系だったから獣医学科は受けなかったのだが、受験要項を取り寄せているうちに、ふと農学部の中に獣医学科があることに気づいたのである。
大変驚いた。
それまで私はてっきり獣医学科は医学部の中にあると思いこんでいたからだ。
畜産動物を診ることを第一に獣医学が発達したのだという歴史を知った今でもなお、獣医学科が農学部というのは、心情的に納得できない。

この本は、日本の獣医療の現状を追求した本である。問題が山積みといった感じだ。

その問題の一番根底にあるのが、大学における獣医学教育の不備不足にある。
日本の獣医学科ではいまだに講義が主で、臨床はごくごく少ないと言うこと。そもそも小動物の臨床を教えられる教授があまりに不足しているということ。犬一匹飼ったことがない学生が、偏差値だけで獣医学科を選び、卒業していくという実態。

それから、獣医師の免許さえ持っていれば、臨床経験が全くない人でも、堂々と動物病院を開けるということ。

獣医療はどんどん進化し続けており、それについて行くには獣医師は絶え間ない勉強と努力が必要だが、獣医師の全員が勉強熱心とは限らないこと。

人々の動物に対する意識がここ数十年で大きく変わり、動物にも人間並みの医療行為を求める人が増えてきたこと。

日本の法律や体制が獣医療に対しいかに無理解であるかという実状。

その他その他。

猫と暮らすだけの一般人が、獣医療の裏側まで知る必要はないと思うかも知れない。
が、私はこういう本は是非読んで欲しいと思う。
愛する猫のホームドクターは、良い獣医さんであって欲しい。
しかし我々素人が一体どうすれば、良い獣医と悪い獣医を見分けられよう?
見分けるためには一般人も知識を貯めるしかない。

この本には、難しい記述や、医学的な論述はどこにもないから、誰でもごく簡単に読める。
良い獣医を見分けるコツなども色々書いてある。

また、獣医師という職業がいかに大変であるかとか、高額に思える料金はいかにもっともな金額であるかとか、動物達の為に本当に頑張っている獣医さんがいかに多いか、などということも、この本を読めばよく分かると思う。獣医師仲間で高い評価を得ている“専門医”が実名で列挙されていたりもする。

獣医師といってもピンからキリまで。
悪い獣医師に当たって泣きを見る前に、ちょっと読んでおいて下さい。

(2004.7.18)

坂本徹也『よい獣医さんはどこにいる』

坂本徹也『よい獣医さんはどこにいる』

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

『よい獣医さんはどこにいる』

  • 著:坂本徹也(さかもと てつや)
  • 出版社:WAVE出版
  • 発行:2000年
  • NDC:649(獣医学)
  • ISBN:4872901665
  • 257ページ
  • 登場ニャン物:-
  • 登場動物:-

目次(抜粋)

1 あなたの獣医さんは大丈夫?(悲劇的な獣医さんとの出会い…ガープの記録;獣医療の現場にあるのは未熟、慢心、私利私欲?)

2 問題獣医はどうして生まれる?(突然高まった獣医さんへのニーズ;料金の不思議;獣医さん、大学で何を学んだの?)

3 獣医さんは変われるか?(専門医はどこにいるの?)

4 よい獣医さんにめぐりあうために(ホームドクターを探して;打てば響く関係 ほか)

付 よい獣医さんをみつけるための70のチェックポイント

著者について

坂本徹也(さかもと てつや)

兵庫県出身。ライター、ペットジャーナリスト。
早稲田大学卒業、雑誌の編集部を皮切りに、企業PR誌の編集、広告物の企画制作会社に勤務。88年に独立して企業集団(株)パイクを設立。その後ビジネス誌、転職、起業情報誌の立ち上げおよび執筆にかかわる。
2頭のミニチュア・シュナウザーと妻の4人家族。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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