塩田眞『いぬ・ねこ愛育許可書』

塩田眞『いぬ・ねこ愛育許可書』

 

副題:『ポッポ先生の動物病院日記』。

先生がまだ大学で学生たちを指導する立場だったころ、ある野良猫が運び込まれた。交通事故に遭遇して下半身がつぶれてしまっている。あまりに悲惨な姿に、先生は安楽死を考えたが、女子学生たちはどうしても助けたいという。そこで学生たちに執刀させて両後肢切断手術をした。

数か月後。その猫ちゃんは、二本の前足だけで走り回って、他の猫達と元気に遊んでいた。

先生は驚き、安楽死を考えた自分を深く反省した。先生の人生観を大きく変えた出来事だった。

その後、家業の動物病院で働くようになったが、そこである問題に気づく。

そして動物病院へやってくる方たちは、病気の動物たちとの来院であるので、決まった時間のなかで飼い主さんにお話しできるのは、来院目的の疾患についての説明がやっと。そのほかに、本来知っておいてほしい話をする時間の余裕なんてないのだ。
そこで、二千字ほどのリーフレットを毎週作成し、待ち時間に読んでいただこうと、待合室に用意しておくことにした。その「動物病院日記」が時間を経て、今回の出版となった。
page3

といっても、ただの「過去に書いたものを集めたもの」ではない。原稿の大半については新しく書き直されている。

書かれているのは、動物病院でのエピソードとともに、「どのように動物病院とつきあうか、どのようなことを頭に入れて動物と生活するか」、それから、日頃獣医師が飼い主には話さないこと「獣医が何を考え、どのように動物や飼い主さんたちと接しているか」等。(page4-5)。

1997年発行の本である。このレビューを書いているのは2019年。22年の間に、ペット業界も動物病院もずいぶん変わってしまった。たとえば先生が本文中で嘆いている「小動物にも保険があれば・・・」(page32他)、という悩み。令和の今ではペット保険は何社も何種類もあって、むしろどれを選ぶべきか迷う時代だ。また動物病院の数も、本が書かれた時代の約7、000軒から、15,950軒(うち、犬猫などペットの診察を行う動物病院は11,981軒)と激増した。(*注)

けれども、根本的な部分というか「いちばん大切なこと」はほとんど変わっていないと思う。つまり、「生き物を飼うとはどういうことか」ということ。命の重さ。獣医師の思い。社会全体の啓蒙と理解。そしてなにより、飼い主の責任と覚悟。

一部古いところがあるのものの、今読んでも教わることの多い一冊だと思う。

*注
農林水産省飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)「平成30年飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)」、平成31年3月8日公表。

塩田眞『いぬ・ねこ愛育許可書』

塩田眞『いぬ・ねこ愛育許可書』

塩田眞『いぬ・ねこ愛育許可書』

塩田眞『いぬ・ねこ愛育許可書』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『いぬ・ねこ愛育許可書』
ポッポ先生の動物病院日記

  • 著:塩田眞(しおた まこと)
  • 出版社:株式会社リヨン社
  • 発行:1997年
  • NDC:645.6(家畜各論・犬、猫)
  • ISBN:9784576970721
  • 253ページ
  • 登場ニャン物:多数
  • 登場動物:犬

 

目次(抜粋)

はじめに

第一章 獣医さんは大変だ!――だけど楽しいこの仕事
人生観を変えた二本足の猫
ソロモンの指輪
ほか

第二章 動物を飼う――簡単なようで難しい
忘れてませんか?動物は生きてるって
捨て猫――ペットブームの陰で
ほか

第三章 不思議がいっぱい――動物のこと
ショック死したヨークシャー・テリア
集団か単独か?――犬と猫の話
ほか

第四章 目指せ!賢い飼い主――助けるのは飼い主さん
糖尿病になったコロちゃん
ペットフード選びは慎重に
ほか

第五章 動物病院日記――よくある光景
その一 よくある失敗
その二 薬の飲ませ方
ほか

あとがき
コラム

著者について

塩田眞(しおた まこと)

月刊誌『キャッツ』(ペットライフ社)にDr.ポッポの診察日記を好評連載。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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※冒頭のエピソードに追加。

私も、2018年7月、交通事故に会った子猫を保護した。ノミだらけだったことや人間への接し方からみて、おそらくは野良の子。保護したときの状態が、それはひどかった。右腕は捩じ切られ、左腕にも大けが、右わき腹には5針の切傷(750gの子猫にとって5針とは背中からお腹近くまで達する長さとなる)、反対側の左わき腹には大きな擦過傷、尾の先端もつぶれていた(その後脱落)。

3本足の子猫、虎太郎

3本足の子猫、虎太郎

しかし、奇跡的に復活!今は我が家の大切な末っ子として元気いっぱいに跳ね回っている。

だからつい、「交通事故にあった野良猫」には反応してしまう。

どうか、皆さまも、もし事故に会った猫に出会っても見捨てず、救ってあげてください。もしハンディが残ってしまっても、猫たちは驚くべき順応力で克服してくれる場合がほとんどです。

3本足の子猫、虎太郎と先住猫達

3本足の子猫、虎太郎と先住猫たち

塩田眞『いぬ・ねこ愛育許可書』

8.2

猫度

7.5/10

情報度

8.0/10

猫好きさんへお勧め度

9.0/10

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