シム・シメール画集『OUR HOME 我が家』

地上のあらゆる生きものが、精緻に、鮮やかに、限りなく神秘的に。
シメールは、グリーンピースやWWFでも活躍している画家。
その経歴から察せられるに、当然ながら、環境問題や自然保護に強い関心を持っている。
彼の画は、ピリっと精緻で、シワのひとつひとつ、ヒゲの一本一本まで写実的に正確に描かれている反面、その構図はどこまでも幻想的だ。
広大な大地、どこまでも深い海、さらに壮大な宇宙までもが描き込まれ、その中に動物たちがいる。
海の生物たちも、陸や空の生物たちも、さらに古代の恐竜たちまでも。
著者は、冒頭に、こう書いている。
わたしたちの世界は、すでにご存じのように、急速に終わりへと向かいつつあります。いまだにそのことを信じられなかったり、知っていても認めたがらない人たちもいますが、賢明な人は、それが間違いなく真実であることを知っています。
(中略)
わたしたちは今、剃刀の刃の上に立たされているのです。ぎりぎりのエッジのうえに、危なっかしく。
さらに、こんなことも。
おそらく今後50年もしないうちに、かなりの数の人間が生きていけなくなるかもしれません。その可能性はかなり高いのです。
この本が出て、その「50年」の約半分がすぎた。
世界各地で異常気象が続いてる。
台風やハリケーンは大型化し、続く大雨で家も田畑も流され、かと思えば干ばつ、水不足。
アラル海はどんどん干上がり昔の面影無く、その一方で、大地震や火山の噴火も続いている。
自然環境に加え、さらに最近は、不安な動きを見せる軍事国も多く・・・
著者は、さらに、こう続ける。
この本は、祈りです。わたしは絵と言葉で、この祈りを、あなたの心に届けたいと思っています。地球のことを考えて、地球のことを愛し、生きもののことを考えて、生きもののことを愛し、人間のことを考えて、人間のことを愛し、自分のことを考えて、じぶんのことを愛する人。今こそ、そういう人たちが強く求められているのです。いつまでも自己満足の贅沢を追いかけているわけにはいきません。それに、もう「知らなかった」ではすまされないのです。
そう。
もはや誰だって地球がこんなことになっていたなんて「知らなかった」ではすまされないのだ、と。

シム・シメール画集『OUR HOME 我が家』
それでも、シメールは自分のことを「楽観主義者(オプティミスト)」だと言う。楽観主義者だからこそ、このような絵を描き続けているのだと言う。

シム・シメール画集『OUR HOME 我が家』ベンガルトラとマウンテンゴリラとアミメキリンとアフリカゾウが同時期同場所にいて草原火災から逃げているという不自然さがかえって緊迫感を生んでいると思います。
私は、地球を、美しいと思っている。
生きものたちを、美しいと思っている。
この美しい地球に、限りなく長く(地質学的な意味で長く)、存続し続けて欲しいと思う。
生命にあふれた地球でありつづけて欲しいと思う。
うつくしい生き物たちと、人類とが、なんとかうまく共存できることを祈っている。
心底祈っている。
そして、「もう手遅れ」なんてことでもないことを。

シム・シメール画集『OUR HOME 我が家』裏表紙は表紙とつながった一枚の絵
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
シム・シメール画集『OUR HOME 我が家』
- 画:シム・シメール Schim Schimmel
- 出版社:小学館
- 発行:1991年
- NDC:720(絵画)画集
- ISBN:4093810125
- 61作品
- カラー
- 登場ニャン物:ライオン、トラ、等
- 登場動物:多数