曾野綾子『飼猫ボタ子の生活と意見』
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深い人生論ともいえる名著。
『ボクは猫よ』の続編ともいえる内容だが、別にストーリーがつながっているという程ではなく、どちらを先に読んでもかまわないだろう。
小説家夫婦の裏見成平・阿野文子と、その夫婦と同居している猫、という設定は同じ。
『ボクは猫よ』では雄猫だが、『ボタ子』では雌猫だという程度の違いしかない。
『ボクは猫よ』がかなり観念的な小説だったのに対し、『ボタ子』ではもっと具体的な話が多くでてくる。
キリスト教にからんだものが多いのだが、世の不条理や矛盾を鋭く突いていて、ドキっとさせられる。
個人的には『悲しみのポスト様』の話が一番印象深かった。
私も、身近な人に腹を立てたり大きく感情を害されたりすると、慈善事業や保護活動にありったけの寄付をする癖がある。
寄付というのは、寄付された側よりも、寄付した側の方がより多く救われる場合が多いのだ。
だから私にとって寄付行為とは、利他行為のようでいて実は恐ろしく利己的な行為なのである。
曾野さんの『悲しみのポスト様』は、私とは少し違うけれど、でもその心理がものすごく良く理解でき、とても哀しくて、すごくさわやかで、カッコイイ老婦人だと思う。
もし私がこの老婦人の立場だったら、きっと同じような事をしたにちがいない。
全体的には『ボクは猫よ』よりさらに洗練されていて、とても読みやく、滑稽で、知的ゲームのような面白さがあり、それでいて人生への深い洞察力が伺える。
名著だと思う。
(2002.8.24)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『飼猫ボタ子の生活と意見』
- 著:曾野綾子 (その あやこ)
- 出版社:河出書房新社・河出文庫
- 発行:1994年
- NDC:914.6(エッセイ・随筆)エッセイ
- ISBN:4309404995 9784309404998
- 265ページ
- 登場ニャン物:ボタ子、目脂
- 登場動物:‐