高橋のら『猫にGPSをつけてみた』

高橋のら『猫にGPSをつけてみた』

 

副題:「夜の森半径二キロの大冒険」。

東京から、大分県は国東半島の元ミカン山に引っ越した著者。半径2キロ以内に人の住む家はたった2軒だけ。

なぜか、そんなところに野良猫の家族4匹が住み着いていました。なんでも十数年前に誰かが捨てた猫の末裔だとか。

さらに、捨て猫4匹をも拾ってしまい。さっそく里親募集サイトに掲載してはみたものの、

誰かもらってくれるかな?もらってくれるよな?
妻とそう話しながらも、写真は、可愛くない四匹がよりぶさいくに見えるものを選んだ。
page25

なんて募集のしかたでしたから、とうぜん?誰も欲しいなんて名乗り出てくれず。

とうわけで、国東へ引っ越してわずか半年で猫8匹に囲まれる暮らしとなってしまったのです。東京で飼っていた姉妹猫を亡くしたとき、あまりの悲しさに、もう二度と猫は飼わないと誓ったはずだったのに。

でも、これも何かの縁だと、なんだかうれしい著者たち。去勢避妊手術をよい機会に、野良の子猫2匹も家の中にいれることにして、こうして6匹の内猫+外猫という構図での生活がはじまりました。

高橋のら『猫にGPSをつけてみた』

高橋のら『猫にGPSをつけてみた』

人も車もこない山の中。猫たちは自由に外を歩いては、好きな時に家に戻ってきます。著者は猫たちの食事の時間を決めました。さらに、食事の合図も決めました。スマホに録音した「犬のおまわりさん」。

さらに、人と猫たちとのお散歩も日常化しました。これもラッパの音が合図。パフパフ吹き鳴らせば、猫たちが集まってきます。それからゾロゾロ山中をお散歩します。

なんとも羨ましい、猫と人の共存関係が成立しました。

高橋のら『猫にGPSをつけてみた』

高橋のら『猫にGPSをつけてみた』

*  *  *  *  *

この本には、猫の生態に関する貴重な発見が2つも書いてあります。あまりにさりげなく書いてありますけれど、学者先生の発見なら、大騒ぎして科学雑誌に論文を発表するレベルの発見だと思うのです。

そのひとつは、猫の音感について。

猫が音楽をある程度理解していることは、多くの人が気づいているでしょう。私の愛猫レオは、なぜかラフマニノフのピアノ曲が好きでした。モーツアルトのように軽くて明るい曲が好きな動物は多いようですが、ラフマニノフというのはちょっと変わっていると思います。もしかしたら私がラフマニノフが好きなので、レオも私に合わせたのかもしれません。ほかの曲は無反応なのに、ラフマニノフを聞き分けると私の膝に乗ってきてゴロゴロいいながらくつろぐ猫でした。

著者は、猫が曲を聞き分けるだけでなく、絶対音感をもっていることを発見します。

ある日の午後、妻がピアノを弾いていた。
猫たちはモーツアルトの流れる部屋のあちこちで昼寝中。
いたずら心を起こした彼女がピアノソナタの途中で、いきなり犬のおまわりさんを弾いてみた。
ご飯の時間でもないのに、全員が飛び起き、小さな地響きを立ててレンジ台の前へ駆けつけた。
彼らは奏でる音がオルゴールからピアノへ変わっても、モーツアルトの中にまぎれても、ちゃんと「犬のおまわりさん」を聴き分けたのだ。

ちなみに、寝ている耳元で僕が歌ってみたがそれでは起きなかった。音痴だから?と思ったが、どうやら違う。
ピアノで試してわかったのだが、なんと携帯アラームと同じキー(調)で弾かないと起きないのだ。
猫は絶対音感を持っている!
page74-75

ヒトで絶対音感を持っている人は少ない、私も持っていません。なのに、猫たちは持っている!音楽教育もうけていないのに。
これって、すごいことではありませんか?

高橋のら『猫にGPSをつけてみた』

高橋のら『猫にGPSをつけてみた』

もうひとつはもちろん、猫の行動範囲について。本のタイトルにもなっているGPSで、猫たちの行動を追ったもの。
猫の性格にもよりますが、なんとひと晩に4kmも歩きまわっていることが判明したのです。しかも、朝ご飯の時間にぴったり合わせて、何食わぬ顔で帰ってきているのです。

GPSの記録したその事実が指し示す答は一つしかない。

驚くべきことだけれど、彼らはそのとき自分のいる場所から家までの方向と距離、そして移動にかかる時間を、ほぼ正確に把握して折り返し地点を判断しているとしか思えない。
つまり猫たちは、自分が家からどっちの方向へ、どれだけ歩いたかを恐るべき正確さで理解しているのだと思う。
まさか、と言うなかれ。そんなことが、と笑うなかれ。
そうでなければ彼らが行きと帰りに別な道を歩いたり、朝食の時間に合わせて折り返し地点を選ぶ説明がつかないじゃないか。
page147

ネコって、本当にすごい動物ですね。
ものすごい能力を秘めている。

この本が、ふつうのフォトエッセイ集みたいに作られているのが、私には少し残念なくらいです。どこかの大学グループが、(1)猫の絶対音感について、(2)猫の方向感覚+時間感覚+距離計算方について、みっしりじっくり調べてくれないでしょうか。

高橋のら『猫にGPSをつけてみた』

高橋のら『猫にGPSをつけてみた』

高橋のら『猫にGPSをつけてみた』

高橋のら『猫にGPSをつけてみた』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『猫にGPSをつけてみた』
夜の森半径二キロの大冒険

  • 著:高橋のら(たかはし のら)
  • 訳:姓名(ひらがな)
  • 出版社:雷鳥社
  • 発行:2018年
  • NDC:645.6(家畜各論・犬、猫)
  • ISBN:9784844137412
  • 159ページ
  • カラー
  • 登場ニャン物:しま兄、ひでじ、ちー、ぷー、くつした、しましま、エリア、クロ
  • 登場動物:

 

目次(抜粋)

まえがき
この本の登場猫物
国東の里山で暮らす六匹の一日

第一章 六匹の猫と出会う
第二章 毎日、猫と散歩する
第三章 猫にGPSをつけてみた

あとがき

著者について

高橋のら(たかはし のら)

製本会社代表を経て編集プロダクションを営む。現在の6匹を含め夫婦で14匹の猫飼い歴あり。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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高橋のら『猫にGPSをつけてみた』

9.1

猫度

9.9/10

おもしろさ

8.5/10

猫好きさんへお勧め度

9.0/10

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