山川とおる『エリザベス』
副題:『現代版「吾輩は猫である」』。
特に筋のない小説・・・猫の目を通してバブル経済に毒された現代日本の世相を風刺的に観察したもので、ヘアー・ヌードやストリップのような猥褻な話題を主に扱ってみた
作者まえがき
という本である。
2章からなっている。
第1章は、「チャタレイ夫人」やヘアー・ヌードの話題等が出てくるが、全体的には知的な遊びの部分が大きく、猥褻ではない。
第2章は、後半でストリップの詳細な経過説明の会話がはいるので、ちょっとあららの部分もあるけれど、セックス・シーンなどはまったく無いし、下品でもない。露骨でいやらしいだけのベッドシーンが溢れている三流小説とは一線を画していると言ってよいだろう。
もともと山川とおる氏は、東大法学部から三井信託銀行へ進んだという、優秀な頭とお堅い職場の人物だから、本人が「猥褻」と言っているわりには堕ちていない。
それどころか、ある程度本を読んで社会情勢にもそれなりに通じていないと、この本は理解できないだろう。
インテリの戯れのようなところがある。
ただ、この薄さ(108p)で1200円は少々高く感じるので、お勧め度はひくめ。
(2002.8.31)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『エリザベス-現代版「吾輩は猫である」』
- 著:山川とおる(やまかわ とおる)
- 出版社:東京図書出版会
- 発行:2000年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:4795292833
- 108ページ
- 登場ニャン物:エリザベス・テーラー
- 登場動物:-
目次(抜粋)
- 第一章 夏目漱石 チャタレイ布陣 ヘア・ヌードは熟女に限る
- 第二章 冬の日 株価暴落 女流作家は猥藝の花盛り