矢崎在美『NNN(ねこねこネットワーク)からの使者 猫だけが知っている』
シリーズ一冊目。「NNN」=猫好きの間で密やかに囁かれている謎の組織[ねこねこネットワーク]。
たとえば、ペット禁のマンションに住んでいた男。見かけた猫に何気なく持っていたパンをあげ、翌日も待っていたのでまたパンをあげ、そのうちにキャットフードを持ち歩くようになり、そのうちに・・・
たとえば、まだ幼い野良の子猫。年配の猫にアドバイスされて、人間を注意し観察するようになっている。そんな子猫が注目したのは、まだ小学生の男の子。寂しい者同士、ひかれるものがあり・・・
たとえば、夫を失って一人になった高齢の女性。自分の年齢を考えれば今から子猫を飼うのは無理だと諦めているが、たまたま近くに猫カフェができたことをしり、おそるおそる訪問してみる。たちまち常連になった。そして・・・
感想
どの話にもある猫が共通して登場します。色わけのはっきりした三毛猫で、名前もミケさん。実は希少な雄三毛。細いつり目が笑っているようにみえるのが印象的。このミケさんこそ、NNNの敏腕メンバーなのです。
「NNN」とは、
「ねこねこネットワーク」(一部では「ぬこぬこネットワーク」)と読みます。ネットの猫系掲示板等でよく話題にのぼる、一種の都市伝説といってもいいでしょう。猫好きや猫を飼いたいと思っている人、あるいはNNNが優良飼主と認めた人のところへ猫(一匹、ないしは複数)を派遣し、一生世話をさせ猫の下僕として生きるよう画策する、と言われている秘密組織―――らしいです。
あとがきより
私にはこのNNN、架空の組織とは思えません。だってだって私自身、組織に目をつけられちゃった感がいつもあるんですもの。
きっかけはレオを拾ったが当時はペット禁の賃貸マンションだったため、かねて念願の田舎移住を決行したこと。
とたんに、でした。猫が集まること集まること、「どうしてこんなに??」って疑問に思う余裕さえなく、あっという間に多頭飼育の猫屋敷に。以来、誰かが逝けばたちまち新しい猫が現れ、不思議と猫数があまり減りません。
何を隠そう私の最初の猫レオも、きっとNNNの組員というか使者というか、そういう活動家の一員だったのでした(!)。
ですから、NNNは実在します(=^・^=)。この本に書かれている内容はおそらく実話?にゃはは~~
猫好きなら誰でも思わず頷いてしまうような、「猫ポイント」が小説中にちりばめられています。たとえば;
猫好きだが家で猫が飼えない人間は、近所の野良猫を探し始める。そして関心がなければほぼ気づかない野良猫ポイントを頻繁に訪れるようになる。結果、毎日の散歩コースができあがる。
page23
すっごいわかるって人、多いのではないでしょうか。はい、昔も私はもっていましたとも、そういう散歩コース。暇さえあれば歩き回っていました。
猫好きさん、猫飼いさんには、ものすごくお勧めのシリーズです。心が温まります。
ところで・・・
ミケさんという猫、細いつり目が笑っているように見えるって、・・・チベットスナギツネさんみたいなお顔?って空想しちゃいました。チベットスナギツネをまだ御存知ではない方は是非画像検索してみてくださいね。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
目次(抜粋)
- 第一話 猫だけが知っている
- 第二話 かぎしっぽの幸せ
- 第三話 カフェ・キャットニップ
- 第四話 猫は行方不明
- 第五話 猫運のない女 あとがき
著者について
矢崎在美(やざき ありみ)
1985年、星新一ショートショートコンテスト最優秀賞を受賞。著書に「ぶたぶた」シリーズ、「神様が容易してくれた場所」シリーズ、「食堂つばめ」シリーズ、『キルリアン・ブルー』、『縫屋 月のチーズとお菓子の家』ほか多数。
(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)
『NNN(ねこねこネットワーク)からの使者』
猫だけが知っている
- 著:矢崎在美(やざき ありみ)
- 出版社:株式会社 角川春樹事務所
- 発行:2017年
- 初出:(書き下ろし)
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:9784758441254
- 221ページ
- 登場ニャン物:ミケさん、クロ、コロン、チーズ、食パン(ナン)、他
- 登場動物: