赤川次郎『三毛猫ホームズの推理』
三毛猫が殺された主人の犯人捜しを手伝う。
片山刑事のあだ名は「お嬢さん」。といっても、れっきとした男だ。28歳、まだ独身。ノッポで、童顔。苦手なのは、アルコールと、女性と、高いところと、血を見ること。
早くに両親を亡くし、今は妹の晴美と暮らしている。
さて。
大変な事件が起きた。
羽衣女子大学の関係者が、次々と殺され、あるいは襲われ、あるいは死に損なったのである。
最初の犠牲者は、売春をしようとした女子大生。鋭利な刃物で滅多刺し、残酷極まりない殺され方だ。
次は、ダンディな文学部長教授。完全密室内殺人。ホームズの元飼い主でもあった。
その二人だけでない。また女子大生が、大学を警護・監視していた刑事が、そしてまた女子大生が・・・。
殺人だけでなく、襲われたり、踏み外したり、飛び下りたりと、物騒な事件がつぎつぎと。
そして、背後には、売春組織、収賄疑惑、莫大な遺産相続、それから個人的な趣味も?
と、それだけでも忙しいのに、片山に見合いの話はくるは、妹・晴美は不倫しているかもしれないは、ホームズは賢そうだは、と、ドタバタ猛烈に忙しい!
おっと、ホームズが賢いのはむしろ、問題解決=時間短縮に役立っているのだが。
三毛猫ホームズシリーズの第一話。この後の作品群とくらべると、この第一話は、全体的に暗く、重い。流れる血も多い。
そんな中、ホームズだけが、さわやかに晴れている。姿も、態度も、頭の中も、すっきり秋晴れ、冴えわたっている。
そして、ひとり、何もかも理解している。犯人も、殺しの手口も、それから、飼い主を失った自分の状況も良くわきまえている。
小さな猫が、愚かな人間どもをリードして、難事件を解決に導く。
ホームズ、最高です。
(1987.9.30.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『三毛猫ホームズの推理』
- 著:赤川次郎(あかがわ じろう)
- 出版社:角川文庫
- 発行:昭和59年(1984年)
- NDC: 913.6(日本文学)長編推理小説
- ISBN:4041497817
- 358ページ
- 登場ニャン物: ホームズ
- 登場動物: -
目次(抜粋)
- プロローグ
- 第一章 羽衣と殺人
- 第二章 猫と刑事
- 第三章 刑事と恋人
- 第四章 終わりと始まり
- エピローグ
- *解説―辻真先