赤川次郎『三毛猫ホームズの追跡』

赤川次郎『三毛猫ホームズの追跡』

 

シリーズの主要人物が出そろう。

『三毛猫ホームズシリーズ』第一弾では、主役は片山義太郎と三毛猫のホームズって感じだった。
片山の妹・晴美は脇役扱いで、失恋して暗く沈んでいた。

が、この2作目から、晴美が本領発揮する。
明るく、いつも元気いっぱい、積極的で、頭の回転も速い。
時には兄の義太郎より大活躍する(刑事でも婦警でもないけど)。

最後の主役も登場。
石津刑事だ。
大柄で、肩幅も広く、胸板も見るからに厚そうで、ワイシャツが、盛り上がった筋肉にピンと張っている。
・・・と聞くと、いかにも怖そうな刑事だが、性格は一本気で純情。
恋にも一本気で純情。
この石津刑事が、晴美を見た瞬間、一目惚れ。あまりにわかりやすくのぼせ上っていて、まるで晴美の忠犬のよう。
なのに、その巨漢に似合わず、大の猫恐怖症!
晴美には近づきたい、ホームズは怖いのジレンマに、延々と悩まされることになる。

さて。

晴美は前回のデパートの店員から転職して、「新都心教養センター」の受付嬢として働きだした。
新宿西口の超高層ビルの48階。料理、生け花、お茶、英会話、ギター、絵画・・・種々雑多な講座がひしめいている。生徒は主婦層が多い。

そんな教養センターで、殺人事件が立て続けに起こった。
講師が、つぎつぎと殺されたのだ。それも、人目の多い中、一瞬のスキをついて。

どうやら、2年前の未解決殺人事件と関連があるらしいこともわかった。
容疑者は女子高校生?

ところが、その女子高校生まで刺されて・・・

ホームズの登場場面は意外と少ないのだが、事件解決の糸口は、ほとんど全部、ホームズが指摘。
ちょっと活躍しすぎじゃないの、と思うほど。
ホームズに猫の友達もできる。ジョンというクロネコである。
シャーロック・ホームズの相棒の名もジョン・ワトソンだった。まさに適役。
このジョンも大活躍する。

ホームズが名探偵だけでなく名医でもあることが証明された作品でもある。

(1987年9月30日)

三毛猫ホームズシリーズ

赤川次郎『三毛猫ホームズの追跡』

赤川次郎『三毛猫ホームズの追跡』裏表紙

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『三毛猫ホームズの追跡』

  • 著:赤川次郎(あかがわ じろう)
  • 出版社:角川文庫
  • 発行:昭和60年(1985年)
  • NDC: 913.6(日本文学)長編推理小説
  • ISBN:4041497825
  • 348ページ
  • 登場ニャン物:ホームズ、ジョン
  • 登場動物: -

 

著者について

赤川次郎(あかがわ じろう)

福岡県福岡市博多区出身。1996年度より金沢学院大学文学部客員教授。父親は元満洲映画協会、東映プロデューサーの赤川孝一。1976年「幽霊列車」で第15回オール讀物推理小説新人賞、1980年『悪妻に捧げるレクイエム』で第7回角川小説賞、2006年第9回日本ミステリー文学大賞、2016年『東京零年』で第50回吉川英治文学賞を受賞。多作で知られ、2015年には580冊を突破、累計発行部数は2015年時点で3億3000万部を超えている。三毛猫ホームズシリーズ、三姉妹探偵団シリーズ、幽霊シリーズ、吸血鬼シリーズ他、シリーズ物も多い。

三毛猫ホームズシリーズ

(著者プロフィールはWikipedia他からの抜粋です。)


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