赤川次郎『三毛猫ホームズの最後の審判』

赤川次郎『三毛猫ホームズの最後の審判』

 

2000年になった瞬間、この世は終末を迎える!?

晴美の昔のクラスメートが、久しぶりに会おうという。
喜んで出かけていった晴美は、しかし、後悔することになる。

友人はすっかり様変わりしていた。
1999年12月31日から2000年1月1日になる瞬間に、この世の終わりが来ると主張。
救われるには、晴美も彼女が信仰する宗教に入るしかないと、しつこく勧誘してきたのだ。

晴美は這う這うの体で逃げ出す。

しかしその元友人は、晴美のあとを付ける。
入信しないなら殺せと、教祖様に命じられていたからだ。

一方。

片山義太郎は、不可解な連続事件を追っていた。
高架や崖から車が落ち、死人が出た。
片山自身もあやういところで巻き込まれるところだった。

それらが、単なる事故とは思えない。
宗教がらみの連続殺人らしい。

そうこうしているうちに、大掛かりな犯罪が計画されていると知る。
もし万が一でも実行されれば、大勢の人が死ぬことになる。
晴美を含めて!

教祖様は、いったいどこの誰なのか?
その教祖様を最後に撃ち取ったのは・・・猫のホームズ?

(2003年5月15日)

三毛猫ホームズシリーズ

《2018.1.13追記》

以下、ネタバレを読みたくない人の目に入りにくいよう、文字色を【極薄】にして書きます。
読まれるときは、ハイライトして色を反転させてください。
お手数をおかけしますが、宜しくご理解お願いします。

!!! ネタバレ注意 !!! ネタバレ満載 !!!

この一冊は、他のホームズシリーズとはちょっと趣の違ったエンディングが興味深い。

ホームズシリーズといえば、青臭いまでの正義感でスパッと明るく終わってしまう話が多いのだけど、この一冊は、深い闇に包まれて終わり、赤川次郎さんに何かあったのかと心配になってまったほどだ。
もちろん、彼の作品は、一見明るい中にドロドロな醜や悪がスパイスのようにまざっていて、よく考えればヒドイ話も多いのは事実。
殺人の動機も、単純な憎しみや恨みではなく、怒りであるケースがとても多く、これも、赤川次郎氏の社会に対するやるせない気持ちの表れかとも邪推しているくらいだ。
それでも、多くの作品で、氏は読者を気持ちよく終わらせてくれる。
三毛猫ホームズシリーズで、あえてこんなに後味悪く終わらせるなんて珍しい。

教団の教祖が警察内部の人間とわかったが、その人物が死んだのが正式に逮捕等される直前で、しかも撃ったのは猫。(ホームズが叩き落とした拳銃がショックで発射して正確に犯人の胸を撃ちぬいた)
この犯人を、しかし警察上部も政府も「公には認めない」ことにしてしまう。
なぜなら、どの政党も、教団から献金を受けていたからだ。
それどころか、お偉方は以前から誰が教祖か知っていたらしい。

「何ですって?」片山は耳を疑った。「あのテロ事件が続いても、黙っていたっていうんですか?」
「ああいう危険な部ループがあるというのは、上の方にはある意味で都合がいいんだ。みんなの不安をかき立てて、それを取り締まるという名目で、自分達に都合のいい法律を次々に作れる。あの教団がなくなっても法律は残るんだ。その法律で、何の危険もない、普通の市民を取り締まることができる」
page 223

ぞっとする言葉だが、真実かもしれない。
世界が、日本が、恐ろしい方向に進まないことを切に願う。
平和な世界の構築を切に願う。
猫たちを見習って!

三毛猫ホームズシリーズ

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『三毛猫ホームズの最後の審判』

  • 著:赤川次郎(あかがわ じろう)
  • 出版社:光文社 光文社文庫
  • 発行:2003年
  • NDC:913.6(日本文学)推理小説
  • ISBN:4334734685 9784334734688
  • 280ページ
  • 登場ニャン物:ホームズ、ハツ
  • 登場動物:-

 

目次(抜粋)

  • 本編
  • インタビュー 赤川次郎を徹底解剖する
  • 解説 山前譲

 

著者について

赤川次郎(あかがわ じろう)

福岡県福岡市博多区出身。1996年度より金沢学院大学文学部客員教授。父親は元満洲映画協会、東映プロデューサーの赤川孝一。1976年「幽霊列車」で第15回オール讀物推理小説新人賞、1980年『悪妻に捧げるレクイエム』で第7回角川小説賞、2006年第9回日本ミステリー文学大賞、2016年『東京零年』で第50回吉川英治文学賞を受賞。多作で知られ、2015年には580冊を突破、累計発行部数は2015年時点で3億3000万部を超えている。三毛猫ホームズシリーズ、三姉妹探偵団シリーズ、幽霊シリーズ、吸血鬼シリーズ他、シリーズ物も多い。

三毛猫ホームズシリーズ

(著者プロフィールはWikipedia他からの抜粋です。)


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赤川次郎『三毛猫ホームズの最後の審判』

6.4

猫度

3.0/10

面白さ

7.5/10

読みやすさ

9.0/10

猫好きさんへお勧め度

6.0/10

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