赤川次郎『三毛猫ホームズの駈落ち』

赤川次郎『三毛猫ホームズの駈落ち』

 

もう一組の義太郎と晴美!?

先祖代々の地主で富豪の片岡家と山波家は、先祖代々(?)犬猿の中。
その長男・片岡義太郎と、長女・山波晴美が恋に落ちて駈落ち!
二人の行方は杳として知れず、12年という年月が過ぎて。

なぜか、今頃になって、村から二人の男が、片岡義太郎と山波晴美を探しに東京にやってきた。
で、当然?片山義太郎・晴美兄妹を、ふたりと勘違いし、そして、
村では、片岡家の三男と山波家の長男(晴美の弟)が、こともあろうに、一人の女を争って刺し違えて死んだ?
否、誰か第三者にふたりとも殺された?
さらに、片岡家の次男も不自然な死を・・・
さらに、利害関係はないと思われた人々も、殺されたり襲われたり自殺したり。

誰が殺人の犠牲者で、誰が自殺で、誰が自然死なのか。
それとも、全員をひとりの人間が殺したり襲ったりして回っているのか。

三毛猫ホームズ名探偵、頼んだぞ!

と、まあ、現代版ロミオとジュリエットみたいな話から始まる。

で、・・・

シェークスピア『ロミオとジュリエット』といえば、世界でもっとも有名な恋愛悲劇、と、言えるのかもしれないけれど。

初めて原作(もちろん和訳で)読んだときの衝撃は、今でも覚えている。
たしか中学2年の終わりか3年になってすぐ位だったと思う。
一気に読んで涙ボロボロ大感動、ではなく、「なんじゃこの男!最っ低~~!」だったのである。
そう、ロミオが最低すぎて、ジュリエットに同情はすれど、全然同感できなかったのだ。
悲劇じゃない、こりゃ喜劇じゃないか、と。

そして、今でも、なぜあの作品が「ロマンチックな悲劇」扱いされるのか、まったくもって理解できない。

だって、最低でしょ、ロミオ。
あんなバカ男が主人公では、感情移入しろったって私には無理だ。

ロミオは最初は失恋直後。
あまりにへこたれているので、悪友たちがなんとか慰めようと、例の舞踏会に引っ張り出すのだ。
とたんに、ジュリエットに一目惚れ、その晩のうちにバルコニーによじ登って不法侵入、ジュリエットを犯す。
同意のもととはいえ、ジュリエットはまだ13歳!今なら中学2年生。
その中二女子と一晩やりまくって、ロミオがまだ夢うつつに浮かれまわっている間に、ジュリエットの采配で、即結婚。
頭に血が上りっぱなしのロミオ、親友マキューシオが殺されるとそのまま沸騰、後先も考えずにティボルトを殺してしまう。
そしてロレンス神父のもとに逃げてひたすら泣きじゃくる。
仮死による駈落ち作戦をたてたのはまたもや、中二女子のジュリエットのほうだ。
なのに、瞬間沸騰男ロミオ、またまた早とちり、毒を飲んであっけなく死んでしまう。
この全行程がわずか4~5日という短期間。
ロミオのキレやすさ、あまりな短絡思考、盲目的思慮の無さ。
「どアホ」
としか形容のしようがない。
犬だって、もうちっとは頭を使うぞ?

もし、仮死作戦が成功していたとして、ロミオとジュリエットが無事駈落ちできたとしても、
あんな男が相手では、ジュリエットはその後、延々と苦労し続けることになるだろう。
死んでしまったのは、悲劇ではなく、ジュリエットにとってはまさにハッピーエンド。
また、ロミオみたいな愚か者が生き伸びたとしても世のためにならず、ふたりの死により宿敵両家が仲直りでき、町が平和になったのなら、ますますハッピーエンド。

でももし、あの二人が生きていて、後日談があったとしたら・・・

三毛猫ホームズ、出番です。

(1987年11月20日)

三毛猫ホームズシリーズ

赤川次郎『三毛猫ホームズの駈落ち』

赤川次郎『三毛猫ホームズの駈落ち』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『三毛猫ホームズの駈落ち』

  • 著:赤川次郎(あかがわ じろう)
  • 出版社:角川文庫
  • 発行:昭和59年(1984年)
  • NDC:913.6(日本文学)推理小説
  • ISBN:404149785x
  • 383ページ
  • 登場ニャン物:ホームズ
  • 登場動物: -

 

 

著者について

赤川次郎(あかがわ じろう)

福岡県福岡市博多区出身。1996年度より金沢学院大学文学部客員教授。父親は元満洲映画協会、東映プロデューサーの赤川孝一。1976年「幽霊列車」で第15回オール讀物推理小説新人賞、1980年『悪妻に捧げるレクイエム』で第7回角川小説賞、2006年第9回日本ミステリー文学大賞、2016年『東京零年』で第50回吉川英治文学賞を受賞。多作で知られ、2015年には580冊を突破、累計発行部数は2015年時点で3億3000万部を超えている。三毛猫ホームズシリーズ、三姉妹探偵団シリーズ、幽霊シリーズ、吸血鬼シリーズ他、シリーズ物も多い。

三毛猫ホームズシリーズ

(著者プロフィールはWikipedia他からの抜粋です。)


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