リリアン・J・ブラウン『猫はブラームスを演奏する』
クィララン、ピカックス市へバカンスに行く。
クィラランが下宿していたマウス・ハウスが売却されることもあり、クィラランは3か月の休暇をとって、北の湖畔でゆっくりすることに決めた。
「ファニーおばさん」がキャビンを無料で使って良いと言ってくれたからだ。
田舎で暮らすために、まず必要となるのが車。安い小型中古車なら、なんとか買えるだろう。
ってことで、クィラランはメジャーを持って中古車販売店を訪れる。
車種は関係ない、オートマかマニュアルかも関係ない、車を購入するにあたって、クィラランの唯一且つ最大の関心事は、後部座席のサイズ。
今使っている猫トイレを置ける広さがなきゃね。
ちょうどよい中古車を入手できたクィラランは、猫たちと北の湖畔に向かう。
そこで大事件に巻き込まれるとも知らずに・・・。
* * * * *
今回の舞台は、風光明媚な大自然の中。
自然好きな私はさっそく、ムース郡・ピカックス市・ムースヴィルなどの地名を検索してみたが、どうやらすべて架空らしい。
小説に描かれている、その大きな湖はカナダに接し、濃い霧が出る。
ピカックス市はのどかな田舎町で、玄関に鍵をかける必要もない。
地方新聞が一番大きく取り上げるのは、殺人事件ではなく、市の有名人の死亡報告。
おそらく、五大湖のどれか、アトランティック・シティーという実在の地名がちらりと出てくるところから、オンタリオ湖かエリー湖か、水が冷たいと何回も繰り返されているから、北の方のオンタリオ湖かなあ、なんて想像していたが、どうやらモデルはミシガン州バッド・アクス市(Bad Axe)だそうだ。五大湖はヒューロン湖のそば。
おっと、クィラランにもどって。
美しい自然に囲まれて、のんびりと休暇を楽しむには、まさにうってつけの環境と思えたのに。
こんな田舎にも犯罪者はいて、事件はおこる。殺人事件もおこる。
それも、クィラランが知り合った直後に殺されたり。
警察はのんびりやる気なさすぎ。
そして、町の人びとは、うすうす感づいていても、あるいは、はっきり犯罪を知っていてさえ、黙して話さない。
犯罪を暴けるのは、クィラランのような「よそ者」だけだった。
クィラランと、あと、もう一人、元警察官。殺されてしまったが・・・
すべてをお見通しのココがかっこいいねえ。
ココがいなければ、ただの、やや冗長なミステリーの一冊に過ぎなかっただろうけど、ココとヤムヤムは、料理の塩コショウ!
味をピリッとしめ、味に深みを与えている。
この著者は本当に猫の使い方がうまいと思う。
これほど猫(他の動物でも)を、うまくミステリーに絡ませてくる作家なんて、滅多にいない。
最後に、意外な展開も待っています。
いかにもアメリカらしいサプライズ、お楽しみに。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫はブラームスを演奏する』
『猫は・・・』シャム猫ココシリーズ
- 著:リリアン・J・ブラウン Lilian Jackson Braun
- 訳:羽田詩津子(はた しづこ)
- 出版社:早川書房 ハヤカワ文庫
- 発行:2001年
- NDC:933(英文学)アメリカ長編小説
- ISBN:4150772207 9784150772208
- 302ページ
- 原書:”The Cat Who Played Brahms” c1987
- 登場ニャン物:ココ(カウ・コウ=クン)、ヤムヤム
- 登場動物: