リリアン・J・ブラウン『猫は殺しをかぎつける』
クィララン、グルメ欄担当になり、昔の恋人に出会うが。
上司から、グルメ記事の執筆を命じられてしまったクィララン。
とあるグルメの会合に出かける。
そこで・・・
偶然だった。
大昔、結婚まで考えていた彼女。
突然、予告も無く彼の前から消えてしまった彼女。
ジョイ・ホイートリー。
今は結婚してジョイ・グレアム。
彼女は昔のまんまに見えた。
滑るような歩き方、音楽的な話し方、気まぐれで、突拍子も無くて、行動してから考えるタイプ。
しかも彼女の夫婦生活はどうやら、うまくいっていないらしい?
彼女に再開したクィラランは、その翌日には早速、彼女の住むアパートの空き部屋に引っ越してしまう。
スリリングで楽しい日々が始まるハズだったのに。
別な意味でスリリングな日々になってしまった・・・!
クィラランが引っ越した直後、ジョイが姿をくらます。
さらに、ハウスボーイも行方不明になって?
* * * * *
クィラランの行くところ、犯罪あり。
クィラランの豊かな口ひげが、犯罪の予感に震え、シャム猫ココは、確かな洞察力で、犯罪を確信する。
クィラランという男、この作品では46歳になっていますが、なんか軽率?
昔の彼女に会ってたちまち舞い上がり、その場で引っ越しの決断をし、翌日には移ってしまうなんて。
私ならこんな男、いやだなあ。
だって元カノはすでに人妻。もちろん、夫婦そろって住んでいるわけで。
そんなところへ、独身の元カレが、ノコノコ、イソイソと乗り込んでいくなんて、平和で済むはずないじゃないですか。
私ならそんな男の行動を見た瞬間に幻滅、たとえ100万年の恋だって、きれいさっぱり冷めるわな。
そんなですから、ジョイが、クィラランが来た翌日にはいなくなってしまったのも、私は最初、逃げたのかと勘繰ったのです。
もともと夫婦仲は良くなかったようですし。
そこへ詮索好きな元カレが乗り込んで来たら、修羅場になるのは目に見えています。
誰だって、とっとと逃げ出したくなるような状況でしょ?
このように始まった作品なので、今回は、クィラランのいやらしさが目立ってしまいました。
あくまで私の個人的嗜好、個人的感想なのですが。
6フィート2インチ(約188cm)の長身は良いです。
が、お腹のお肉が気になるような体型で、医者から30ポンド(約13.6kg)の減量を命令されてしまいました。
豊かな口ひげは彼のトレードマークですが、私、無精ひげも豊かな髭もあんまり好きじゃない(汗)
自分はろくに料理をしないくせに(彼の朝食は買ってきたパンにインスタントコーヒーだったり)、他人の料理に口うるさい男なんてのも大嫌い。
うるさく言うなら自分で作れ。作らないなら黙って食べろ。と、思っちゃいますね。
喫煙も好きじゃないが、ましてパイプなんて。本人の健康被害は自業自得として、周囲が迷惑します。
でも、猫たちの扱い方はすばらしいです。
自分はひからびたパンをかじりながらでも、猫たちには上等な肉を小さく切り、温めたスープをかけてあげます。
ココを外出させるときは、必ずハーネスに紐をつけて。たとえそれが、目と鼻の先の、建物の別棟であってもです。すばらしい。
このあたりが、言いたくないけど『三毛猫ホームズ』とは全然違いますね。
ホームズは見知らぬ土地でも、紐ひとつ付けられず、晴美の後を追って、人込みに踏まれないよう気を付けながら、自分で歩かなければならなりません。
いくら小説の中とはいえ、猫の飼い主としてはあり得ません。
作品としては面白いんですけれどねえ(でなきゃ全部揃えて2回以上読んだりしない!)
で、クィラランに戻りますけれど、「なんかいやらしい」という読後感が残ったのは、他にも理由があります。
それは、ジョイの最期。
軽率な女ではありましたが、それにしても悲惨・・・
また、元カノが敷地内で殺されたと知った後も「こんなところはもういやだ、引っ越す!出ていきます」とは言いださないクィラランの神経もちょっと・・・ねえ?
少なくともこの作品の中では出ていく発言はどこにもないぞ?
ところで。
ココの年齢が判明します。
獣医師の話では、「たぶんココは三、四歳というところでしょう」(page16)でした。
猫の3~4歳といえば、体は大人だけど若々しく、元気で活発、自信にあふれ、それ以上に好奇心にあふれているお年頃。
本で描写されているココの行動もうなづけるというものですニャ。
*この作品は本来、シリーズ4冊目にあたりますが、日本ではなぜか最初に翻訳されました。そのため裏表紙の解説も「猫好きに捧げる新シリーズ第一弾」と書かれています。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫は殺しをかぎつける』
『猫は・・・』シャム猫ココシリーズ
- 著:リリアン・J・ブラウン Lilian Jackson Braun
- 訳:羽田詩津子(はた しづこ)
- 出版社:早川書房 ハヤカワ文庫
- 発行:1988年
- NDC:933(英文学)アメリカ長編小説
- ISBN:4150772010 9784150772017
- 175ページ
- 原書:”The Cat who saw Red” c1986
- 登場ニャン物:ココ(カウ・コウ=クン)、ヤムヤム、ラク
- 登場動物:-