『しっぽの声』第10巻 作画:ちくやまきよし、原作:夏緑、協力:杉本彩
だが相手が人間ではなく悪魔ならその言葉も通じない。
動物保護シェルター所長の天草士狼と、獣医師の獅子神太一は、今日もレスキューに向かっていた。
悪臭漂う一軒家。「可哀想な野良猫たちを保護している」と主張する男。が、実態は、多頭飼育崩壊どころか死骸の山!
「(エサと水をやって)生きるチャンスは与えたんです。 その上で、生きる力の足りないものが淘汰されても自然の節理じゃないですか?」
「半分死なせといて、生きるチャンスだ?」
「半分も生きてるじゃないですか。 私が助けてやらなければ、保健所で全部殺されてたんですから。」page10
(中略) 「動機が正義でも、結果が地獄なら、それは悪なんだよ。」
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「保護」と「多頭飼育崩壊」は、常に背中合わせの状態だ。とくに個人で活動している場合、ひとつ間違えれば、たちまち多頭飼育崩壊に陥る。陥らないためには、保護する子を選択しなければならない。命の選択ができない者はもう「愛護家」ではなく、「アニマル・ホーダー」にすぎない(ホーダーとは、ゴミ屋敷住民みたいに、何かを病的にため込んでしまう癖のこと)。
その一方で、珍獣・猛獣を販売していた密輸入業者から引き取ったライオン。間違った飼育法でひどい歯周病持ち。獅子神は故郷のライオン保護区に連れていけたら、と夢見るが、アフリカの現状を知り、愕然とすることになる。
話は変わって。
待望の「数値規制」。2019年、動物愛護管理法にやっと、「環境省令で定める遵守基準を具体的に明示する」と省令に盛り込まれたのだ。それまでの「適切に飼養」のような、あまりに曖昧な表現に革って、具体的な数字で規定されたのである。
(1)飼育数の規制
従業員など因数ひとりあたりの飼養頭数は、
繁殖用途(繁殖業者など)=犬15頭まで、猫25頭まで
販売用途など(ペットショップ等)=犬20頭まで、猫30頭まで
(2)飼育施設
【犬】
ケージ(寝床):
(床面積)体長の2倍x1.5倍、(高さ)体高の2倍
平飼い:
(床面積)ケージの6倍、(高さ)ケージと同じ
【猫】
ケージ(寝床):
(床面積)体長の2倍x1.5倍、(高さ)体高の3倍
平飼い:
(床面積)ケージの2倍、(高さ)体高の4倍
いずれも、床材として金網は禁止。運動スペース(平飼いスペース)に1日3時間以上出す。
(3)繁殖
【犬】
生涯出産回数は6回まで
メスの交配は6歳まで(特例で7歳まで)
【猫】
メスの交配は6歳まで(特例で7歳まで)
繁殖可能かどうか、年一度の獣医師健康診断を義務付ける。
動物愛護に関しては一歩前進であることは間違いないけれど、愛好家たちにとってはまだまだゆるい、ゆるすぎる規制。一方、業者たちにとっては、これでも大反発の厳しすぎる規制。
そして、
この「数値規制」がまた、動物達を苦しめることになる。いえ、悪いのは全面的に人間の方ですけれどね。金儲けしか眼中にない、大馬鹿野郎共が悪いんですけれどね。悲しいことに、悔しいことに、世の中にはそんな「大馬鹿野郎」があまりに多すぎて・・・!!!
* * * *
どうか、手に取って読んでください。
つらいこと、苦しいこと、嫌なこと、悲しいこと、沢山書いてあります。でもそれが現実なんです。動物達・ペット達をとりまく現状なんです。
目をつぶらないでください。
ちゃんと知ってください。
そして、あなたの愛犬愛猫を、大事に可愛がって育ててください。最後の最後までやさしく看取ってあげてください。
⇒まとめ:ちくやまきよし画『しっぽの声』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
目次(抜粋)
- 第72話 養殖ライオン(上)
- 第73話 養殖ライオン(下)
- 第74話 数値規制(上)
- 第75話 数値規制(下)
- 第76話 希望のシェルター(上)
- 第77話 希望のシェルター(下)
- 第78話 砂漠の天使
- 第79話 優しいペットショップ
『しっぽの声』第10巻
- 作画:ちくやまきよし
- 原作:夏緑(なつ みどり)
- 協力:杉本彩(すぎもと あや)
- 出版社:株式会社 小学館
- 発行:2021年
- 初出:「ビッグコミックオリジナル」2020年第17号、第18号、第20号~2021年第1号
- NDC:726(マンガ、絵本)
- ISBN:9784098611393
- 196ページ
- モノクロ
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:犬、ライオン、スナネコ、他