ジョー・クーデア『ねこ的人生のススメ』
よりよく生きるための答えは、すべて猫達が教えてくれる。
気楽に読める猫エッセイではあるけれど、よくあるような「猫ちゃん、かわいいン」だけのエッセイではない。ところどころに人生訓があり、哲学的考察が混ざる。そしてそれぞれの人生訓は、著者の飼い猫たちの生き方とかさなる。
陽気で楽天的なビティ。
悲観的で猜疑心の固まりのようなポピー。
仕事熱心なまじめ猫、チェスター。
ひたすらに愛を求め続け、求めすぎるソクシー。
うぬぼれ屋で自己主張が強すぎるトロット。
ありのままの世界をおっとりと受け入れる禅僧のようなスィート・ウィリアム。
自分をしっかりと持った自立猫、ケイト。
著者は、ビティの明るさを愛し、ビティの考え方を模範とする。
人生は変えられるものだと著者は言う。
ポピーのように頑なに自分の殻に閉じこもったまま目を開こうとせず、世の中を自ら閉じてしまう人々には目を開けとささやく。
チェスターのまじめな仕事ぶりを賞賛しながら、人間も仕事をしなければならないと説く。
仕事は苦痛に対する偉大な麻酔薬であり、失望や絶望や落胆にもっとも効果のある解毒剤であり、悲劇を乗り越えるにはいちばんいい手段なのだ。
愛を強要するソクシーには辟易しながら、こう書く。
最悪なのは愛に飢えていることだ。これほど相手をひるませることはない。(中略)なぜなら愛への渇望は決して満たされることがないし、どんなにたっぷりと愛を注ぎ込んでも、その急遽差を埋めることはできないからだ。(中略)愛をねだられるのは、お金をせがまれる以上にありがたくないことなのだ。
トロットは「結局、すべてを手に入れようとして、すべてを失うことになった。」
トロットと対照的なスィート・ウィリアムは、著者に深く愛された。世の中すべてをありのままに受け入れる瞑想的な猫だったから。
そして、著者はおそらく、ケイトのようになりたいと願っているのだろう。ケイトは自分の考えを持ち、自分で行動し、愛情深いが相手に求めすぎることはなく、いかなる状況もやすやすと受け入れた。
ケイトはとことん自分に自信のある猫だった。
猫に学ぶ事は多い。
それは私自身も日々そう思っている。毎日のように思っている。
(2007.7.7.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『ねこ的人生のススメ』
しなやかに生きるための7つの法則
- 著:ジョー・クーデア Jo Coudert
- 訳:羽田詩津子訳(はた しづこ)
- 出版社:早川書房ハヤカワ文庫
- 発行:2007年
- NDC: 934(英文学) アメリカ エッセイ
- ISBN:9784150503185
- 277ページ
- 原書:” Seven Cats and The Art of Living ” c1996
- 登場ニャン物: ビティ、ピクルズ、チェスター、トロット、ボストン、バンピー、ケイト、ポピー、ソクシー、スィート・ウィリアム。
- 登場動物: -